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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年11月号

利用者

リウマチ患者と障害者自立支援法

長谷川三枝子

はじめに

関節リウマチ(以下リウマチ)患者は、全国で70万人と言われ20代から50代の働き盛りに発病している。いまだ原因不明で治療法も確立していない難病である。

患者の多くは慢性的に進行・悪化を繰り返し、痛みと機能障害の低下の中で20年、30年と長期間の療養生活を余儀なくされている(図1)。

図1 リウマチと診断された年齢(2005年リウマチ白書より)
図1 リウマチと診断された年齢(2005年リウマチ白書より)拡大図・テキスト

病気と障害を併せもつリウマチ患者

近年、リウマチ医療は骨破壊を抑える効果が期待される生物学的製剤など薬の選択肢が増えたことや手術療法の進歩などにより「リウマチ医療の新たな時代」と言われている。特に、骨破壊の進行による機能障害は、リウマチ患者のADL(日常生活動作)の低下や社会参加を不可能としてきた。

当会が5年ごとに実施している実態調査をまとめた「リウマチ白書」の中では、機能障害の進行により身体障害者手帳(以下身障手帳)を所持しているものは62%である(図2)。

図2 身体障害者手帳保持者(2005年リウマチ白書より)
図2 身体障害者手帳保持者(2005年リウマチ白書より)拡大図・テキスト

リウマチ患者と社会保障

●障害者福祉法

リウマチは難病でありながら、国の難病対策では、悪性関節リウマチ以外は、患者数が多いということで外されている。20年、30年の療養生活の中で、病気の進行・悪化とともに機能障害の進行により身体障害者となる者が少なくない。そこで、福祉制度を活用することを長期療養生活を支える手だての一つとしてきた。

この制度では、特に重度障害者医療費助成は医療費を支える大きな役割を果たしているが、地域での格差や所得制限など患者への負担が多くなってきている。

●介護保険制度

2000年にスタートしたこの制度で、リウマチは特定疾病に指定され、40歳以上から利用できる。しかし、65歳以上の高齢者の介護を主な対象としているため、サービスの種類・内容ともリウマチ患者にそぐわない点が多い。

2005年の見直しでは、50歳の会員から「要介護3が半年後の更新で要介護2になった。体はどんどん不自由になっているのに、通院介助の利用ができなくなり家族に仕事を休んで送ってもらう。市の福祉課に相談したら、経費削減でサービスをなくしたので、民間会社を使用してと言われた。1時間2000円以上かかり、月数回の通院で障害年金が消えてしまう。どんなにつらくても1人でトイレへ行こう、人の何倍も時間をかけてもやってみようとやっていることが認定で逆の結果で出てしまう。とにかく、だれか車いすを押してください!病院へ連れて行ってください!と叫びたい」と切実な声が寄せられた。

また別の会員は「調査票では、自助具を使い長い時間をかけて何とかやっている動作でも自立とされ、リウマチには不利である。医師の意見書もリウマチ患者の特性を書き込んでないため認定は低い」という不備の声が多い。

障害者自立支援法とリウマチ患者

2006年から施行の障害者自立支援法は、当会が病疾の団体ということや、年齢構成が40歳以上の介護保険対象者が多いこと等の背景からか会員からの声が届いてこない。

リウマチ患者は、主に医療との関係の中でとらえられてきた。そのため就労に関して言えば、継続した勤務ができにくい者に対する就労支援の配慮がない中で、仕事は「休職、退職、廃業」が多く、「障害者雇用促進法」はリウマチ患者にとっては有名無実であった。今後、難病患者の就労支援に期待するところである。

まとめ

今回の「障害者自立支援法の抜本見直し」に当たり、すべての出発点である当事者・現場の実態把握をし、基礎的データを基にした施策を進めてほしいということである。

リウマチ患者は、長い間、医療と福祉の狭間で何をよりどころとして生きていくか模索を続けてきた。ただ、言えることは、必要とする者が必要とする医療がどこにいても受けられるよう医療施策への働きかけを積み重ねたことは確かである。

30数年の働きの成果である「リウマチ科」は、早期診断・早期治療により従来のリウマチ患者像が変わる時代を迎えている。その中で「障害者自立支援法」はすべての人の問題であり、10.30全国大フォーラム(於日比谷公園及び野外音楽堂)に参加し、障害者権利条約にふさわしい施策の実現を働きかけたい。

(はせがわみえこ 日本リウマチ友の会会長)