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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年11月号

自治体

新座市における取り組み

加藤保

はじめに

本市は、平成17年4月に障がい者の支援に関する基本的理念を定め、市・市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、市が実施する施策の基本的事項を定め、障がい者の自立及び社会参加を促進するための「共に暮らすための新座市障がい者基本条例」を制定しました。この条例で公文書から障害の「害」の字を「がい」に改めました。

また、平成18年3月には障害者自立支援法を踏まえ、「新座市基本構想総合振興計画」及び「新座市地域福祉計画」等の関連計画と整合性を持たせた「新座市障がい者基本計画」を策定し、三障がい共通の制度下で支援していくこととしました。

就労ニーズに応える取り組み

本市では、障害者自立支援法施行以前から障がいのある方の社会参加について就労支援を重要な施策として取り組んできました。平成12年12月、公設公営の障がい者就労支援センター(以下、支援センター)を市役所1階に設置しました。

(1)支援センターの基本的考え方

支援センターは訓練施設で、職業訓練の指導を行っています。市は相談業務を中心とした支援を行っていますが、相談だけで就労に結びつけることは困難です。そこで、職業訓練の場を市役所の業務に求め、職場実習を実施することとしました。

(2)市が牽(けん)引する運営

支援センターを市役所内に設置したメリットは、役所内はバリアフリー化されて移動しやすいこと、保育業務をはじめ、印刷、給食、一般事務など職種が多岐にわたり、さまざまな仕事を経験できる点です。そして、支援センターのスタッフが各職場に依頼して職場実習を調整しています。

市が運営する特徴としては、1.庁舎内に支援センターがあるので相談しやすい、2.福祉関係の職員と一体となった支援体制ができている、3.開発指導要綱により、市内で事業開始する時に障がい者雇用に努めるよう事業者に意見を述べている、4.2年に一度実施する「指名参加願い申請書」提出時に、事業者に対して障がい者雇用の状況をはじめ、今後の採用予定、職場実習受け入れの有無などに関するアンケートを行っている、ことがあげられます。

市では障がい者雇用をしている事業所の優遇措置は取っていませんが、アンケートの回答内容を参考にして就労支援員が職場開拓を行ってきました。

障害者自立支援法が施行され、就労移行支援事業は、6か月を過ぎると施設が継続して支援できませんが、本市では支援センターが支援を引き継ぎ、障がい当事者の方や親御さん、事業所の支援にあたり、一定の職場定着を図っています。また、職場定着がうまくいかない場合も施設につなげるという連携も固まっています。

(3)支援センター運営にあたっての課題

就労支援を進めていくなかで、生活支援と深く結びついていることが分かってきました。生活全般にわたる支援の必要性を感じています。具体的には休憩・休息時の過ごし方、生活上の規範の確立、余暇利用等への支援です。ほかには、職場の評価や変化、家庭状況の把握、離職時や事業者からの相談に即応できる体制が求められます。

本市の独自施策

自立支援法に関わる本市の負担軽減策は、支援費制度で受けていたサービス水準の確保を基本として、次のような負担軽減策を実施しました。

1.訪問系サービスの利用単位の上限緩和→居宅介護等の訪問系サービスは本市は区分認定審査会の意見を求め、国が定める基準の2倍までを給付対象とする。

2.自立支援医療にかかる自己負担助成→自立支援医療のうち精神障がい者の通院医療費負担分10%の助成を行う。

3.障がい者支援施設の食費負担軽減→通所施設利用者の昼食費負担を1食300円とする。

4.移動支援における利用上限の考え方→地域生活支援事業の移動支援事業は移動介護(旧支援費制度)の利用状況を踏まえ1割負担で利用できる上限を月100時間とし、旧制度の水準維持を図る。

5.地域生活支援事業自己負担軽減助成制度→コミュニケーション事業は無料とし、移動支援事業、日常生活用具給付等事業及び地域活動支援センターのサービスは1割負担するが合算で上限管理を行う。

地域自立支援協議会の設置

地域自立支援協議会は、相談支援事業をはじめとする地域の障がい者福祉に関するシステムづくりの中核的役割を果たします。同協議会の役割として、個別サービス及び事業利用の実施状況を評価し効果的な推進を図ることが重要と考えています。

本市では、「共に暮らすための新座市障がい者基本条例」に基づき、平成14年に「新座市障がい者施策推進協議会」を設置しました。当事者・事業者や学識経験者等22人で構成し、障がい福祉計画等の達成状況の点検、評価及び見直しを行ってきました。すでに障がい者施策推進協議会が地域自立支援協議会と同様の事業を実施していましたので、地域自立支援協議会の進行管理は、障がい者施策推進協議会が行うこととしました。

1回目の会議は、去る8月21日に行われ、施設の新体系移行に伴い課題が多くなること、自立支援法の見直しなど状況が流動的であるために、新しい施策の実施は、今後の展開を見てから行うなどが話し合われました。

相談支援事業の確立

相談支援事業は、権利擁護や虐待の防止をはじめ総合的な相談、サービスの利用援助、プログラムに基づく支援を必要とする場合の計画書作成等があります。現在、支援が必要な方は30人程度見込まれています。

本市は、ほかの自治体に比べケースワーカーの配置が多く、これまでケースワーカーが区分認定調査を行い、多問題ケースや処遇困難ケースは関係機関と会議を開き迅速な対応に努めてきました。しかし、相談支援事業の範囲があまりにも広く、相談支援のあり方が見い出せない状況にあります。当分の間は、担当課に社会福祉士・精神保健福祉士・保健師等を配置し運営していく予定です。

図 地域自立支援協議会のイメージ
図 地域自立支援協議会のイメージ拡大図・テキスト

自立支援法推進のために

長い間、障がい者支援の考え方は措置制度でした。その後、支援費制度になり障害者自立支援法になりました。支援費制度は、当事者の思いが生かされる制度であると大きな期待を持っていましたが崩壊し、自立支援法も同じ道を歩んでいるのではないかと感じています。

障害者自立支援法を利用者とサービスの関係で見ると、サービス内容は従前と同じですが、利用者の負担は増えました。サービス内容が充実すれば問題はありませんが、現状はそうなっていません。事業者は収入が減り、職員の確保が困難となり雇用も不安定となりました。「人が福祉を支える」という理念が貫けなくなっています。

本市で運営している施設も、支援の一つが日々通所することでしたが、負担が伴うことから利用の躊躇が見られます。市の地域活動支援センターでは、今までと同様の支援内容にもかかわらず、事業費の1割負担と食費負担が生じ、今までには無かった苦言も聞かれます。

障がい程度区分認定にも不都合があります。それは、厳密に適応すれば施設利用等に関して、障がい当事者の方が路頭に迷う事態も生じるものです。障がい程度区分によりサービス内容を決定していくことに対する困難さを感じています。さらに自立支援法は、障がい者に対する支援を地域生活支援事業に委ねる点が多いために自治体間に格差が生じています。今後、自治体が障害者自立支援法にどう向き合うかが問われています。

(かとうたもつ 埼玉県新座市福祉健康部参事兼障がい者福祉課長)