音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年11月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

アイバンク「愛の献眼50周年献眼推進特別活動」について

日本アイバンク協会

1 アイバンクとは?

法律の定める手続きに従い、亡くなった方の生前の同意またはご遺族の同意により、ご遺体から眼球の提供を受けて、角膜疾患による視力障害の方にその角膜を移植し視力を取り戻すことができます。

献眼を受けて、角膜移植手術を受けたい人に「あっせん」することを行うため厚生労働大臣から許可を受けた非営利組織を「アイバンク」(「眼球銀行」とも言う)と呼んでいます。

なお、眼球の提供を売買として行うことは、禁止されています。このためもあって、提供者と受療者がお互いに知れないよう注意が必要で、アイバンクが間に立つことになります。

2 アイバンクの始まりは50年前、角膜移植は犯罪だった?

わが国で、献眼を用いて角膜疾患患者に角膜移植手術が行われたのは、昭和32年が最初です。

当時は移植を認める法律がなく、遺体から眼球を摘出することは、刑法上の死体損壊罪にあたる恐れがありました。その頃、諸外国の角膜移植の状況などに刺激されて、その研究を行っていた岩手医大教授の今泉亀撤(いまいずみきてつ)氏は、角膜移植手術の開始が急務と考え、独自に盛岡において「目の銀行」を作り、献眼を募集していましたが、一人の登録者が亡くなったのでその眼球の提供を受け、当時14歳の女子盲学校生に角膜移植手術を行い、手術は成功しました。

内々で行った開眼手術でしたが、報道機関に知れ、一部の新聞が、死体損壊罪に抵触の恐れとして、大きく報道したため、社会的な大事件になってしまいました。しかし、開眼手術は人道的な医療行為であり、法曹界や世論は教授を支持し、検察当局も不起訴の結論を出しました。

このことから、わが国における角膜移植法制の不備が指摘され、翌昭和33年、議員立法により、「角膜移植に関する法律」が制定されました。

その後、各地に角膜移植医療が普及し、眼球あっせんを行うアイバンクも次第に増加し、今や全都道府県に設立され、総数54か所になっています。

図 献眼するための登録方法は?拡大図・テキスト

3 アイバンク活動の現状―献眼が足りない!

50年間にわたり活動を続けて来たアイバンク活動ですが、創設以来、熱心に協力してくださっている各地のライオンズクラブをはじめ多くの関係者の努力もあって、着実な歩みを進めております。しかし、毎年の啓発キャンペーンはあるものの、一般国民に献眼協力意識が広く浸透するにはいまひとつというところです。

平成18年度末現在、年度間の角膜移植を要する患者の発生数は約5000人と推計されているのに対し、同年度間の献眼者967人、移植眼数1507件であり、このほか、外国(アメリカ、オーストラリア、スリランカ)からの輸入角膜が約1000件で、必要の半分を満たすくらいです(表1参照)。

表1 献眼などの現状

年度 新規登録者数 人 献眼者数 人 移植眼数 件 待機患者数 人
平成10年度 38,136 1,070 1,717 5,582
11年度 29,782 977 1,589 5,540
12年度 28,202 875 1,525 5,216
13年度 28,218 872 1,494 5,498
14年度 20,561 942 1,509 5,028
15年度 21,374 882 1,490 4,661
16年度 19,772 882 1,442 4,449
17年度 17,782 917 1,404 3,924
18年度 15,659 967 1,507 3,448

18年度末の手術待機者は、3448人にのぼり、角膜移植手術を申し込んでからの待機時間は、3~4年もかかります。このほかに、把握されていない待機患者もある程度あり得ます。

社会の各方面に呼びかけて、献眼者を増やすことが何をおいても必要です。

4 愛の献眼50周年で、献眼推進の特別キャンペーン

右に述べたような状態を改善するため、角膜移植開始50周年(2007年)、及び「角膜移植に関する法律」制定50周年(2008年)を機会に、日本アイバンク協会と全国54のアイバンクは、全国の関係者の力を集めて社会の各方面に呼びかけて、献眼及びアイバンク事業への理解をさらに深めるとともに、献眼数の大幅な増加を求めることと致しました。

期間は2007年度(平成19年度)から2009年度(平成21年度)までの3年間とし、この期間に、

(1)国民一般へのアイバンク活動の知識の普及強化、献眼協力意識の養成をはかる。

(2)保健医療、社会福祉、教育、宗教など、関係の公益団体に協力していただき、組織への献眼協力意識の浸透を進める。などをねらいに、各般の活動を行うこととしています。

特に、中央(東京)及び各アイバンクで、アイバンク活動や献眼協力について、一般市民や関係団体などを対象とした説明会を開くこととしていますので、ぜひご参加ください。

また、愛の献眼推進のための標語を募集中ですので、当協会あて、封書でのご応募を歓迎いたします。

図 愛の献眼50周年拡大図・テキスト

5 3年後の目標

日本アイバンク協会としては、2007年度の推定待機患者(潜在待機者を含む)を5000人と推定して、これから3年間の特別活動を行った結果として、2009年度末には、約2500人に半減させることを期待しています。また、3年後に、特別活動の評価を行い、これに基づいて、さらに、2年間のフォローアップ活動を行うこととしています。

アイバンク活動への、皆様の温かいご協力をお願いいたします。

(財)日本アイバンク協会
〒101―0054 千代田区神田錦町2―2 武内ビル4F
TEL:03―3293―6616
FAX:03―3293―5140
HP:http://www.j-eyebank.or.jp

(注・角膜移植とは)

角膜は、眼球の最前部にある黒目と呼ばれる透明な組織です(その下の組織が黒いので黒く見えます)。角膜の病気としては、円錐角膜、水泡性角膜症、細菌感染、外傷などさまざまですが、このような病気や外傷などで白く濁ってしまって視力を損なった角膜を透明な角膜と取り替える手術を角膜移植といいます。

角膜が透明であれば、近視、遠視、乱視、老眼、そこひ、にかかわらず、また、年齢に関係なく、献眼ができます。ただし、感染の恐れのある病気で死亡された場合は献眼できない場合があります。