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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年12月号

長野県の地域生活移行の取組
―入所施設及び精神科病院からの地域生活移行―

大池ひろ子

はじめに

長野県では、県立の知的障害者総合援護施設「西駒郷」利用者(定員500人)の地域生活移行を、障害者自立支援法施行前の平成15年度から取り組んでいることを、本誌の2006年1月号で紹介しました。

18年度に施行された自立支援法では、地域生活移行が大きな柱の一つとなり、平成23年度末までに、入所施設の定員を7%削減し、退院可能な精神障害者7万人の退院を促進するとされました。西駒郷の地域生活移行を進めている長野県としては、入所施設の定員を14%以上削減し、退院可能な精神障害者については、独自調査を基に230人の退院を図ることを目標として取り組んでいます。

入所施設からの地域生活移行の状況

15年度から19年3月末までに西駒郷からグループホーム等へ地域生活移行した方は188人となり、15年4月1日に441人だった利用者は、19年4月1日現在では222人と半減しました。また、西駒郷の取組を契機に、グループホーム等の住居、日中活動の場、相談支援体制等総合的な支援施策を県単独で整備したことにより、その効果が民間入所施設へと波及し、15年度から18年度末までの4年間に民間入所施設からも212人の方が地域生活に移行しています(図1)。

図1 4年間の地域生活移行者拡大図・テキスト

18年度は、民間入所施設からの地域生活移行をさらに促進するために、1年間に5人の定員を削減することを要件とし、グループホームや日中活動の場の開拓等を行い、地域生活移行を推進するための人件費を補助する事業を新たに立ち上げ、18年度は4施設で25人の定員削減が実現しました。

自立支援法の施行により、グループホーム事業者の先行き不安等から18年度は地域生活移行が足踏みしましたが、民間入所施設の中には、入所定員ゼロに向けて意欲的に取り組んでいるところも出てきており、当県の入所施設からの地域生活移行は、おおむね順調に進んできていると言えます。

社会的入院者の退院促進の取組

当県では、精神科病院からの地域生活移行についても、15年度からモデル事業として取り組んできました。自立支援法により社会的入院者の退院促進は現在、都道府県の地域生活支援事業に位置づけられています。当県においても、保健所を中心に退院支援員等の支援により18年度までの4年間で29人が退院する等一定の成果は見られました。しかし、このままでは全国で約7万人、長野県では800人と推計される社会的入院者の退院は何十年もかかることになります。それで本当にいいのかという強い思いから、当県では、今年度、国の特例交付金の活用等によって事業を再構築し、事業費を前年の4倍にして取り組んでいます。

4年間の取組の中から、退院を促進するには専任のスタッフが必要と考え、県下4地区の障害者総合支援センターに退院支援専任のコーディネーターを配置しました。このコーディネーターが中心となり、県下33の精神科病院と協同しながら社会的入院者の退院支援に取り組んでおり、今年度は9月末までに18人が退院し、成果が上がってきています。国には、24年度までに7万2千人の退院を実現するために、現在の事業を見直し、積極的かつ効果的な事業の創設を望みたいと思います。

おわりに

長野県では、これまでに入所施設や精神科病院から地域生活移行した方は500人ほどにのぼります。19年12月1日現在、グループホーム等に入居している方の総数は1300人近くになります。このように多くの方が、地域で安心して生活するには相談支援体制の整備が不可欠です。自立支援法で相談支援事業が制度化され、市町村と県の役割が明確化されたことに伴い、当県では、16年度に設置した10圏域の障害者総合支援センター事業を市町村と相談し、今年度再構築しました。18年度末に障害者総合支援センターに配置された各種コーディネーターは68人でしたが、現在では128人となり、障害のある方の地域生活支援を県内各地で展開しています。

障害のある方が地域で当たり前に自分らしい暮らしを続けていくためには、権利擁護や居住サポート等さらなる充実が必要ですので、今後も市町村や社会福祉法人等と連携しながら一歩一歩着実に進めていきたいと考えています。

(おおいけひろこ 長野県社会部障害者自立支援課長)

※長野県では来年1月11、12日「長野発地域で暮らしていこうフォーラム」を開催します。現在、入所施設や精神科病院から地域生活に移行した492人の聴き取り調査を障害者総合支援センターのコーディネーター等が行っておりますが、これを基に「地域へ出よう」から「地域を創ろう」をテーマに、支援者として何ができるかを考えます。