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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年12月号

1000字提言

更なる課題へ~ミャンマーの現場から

横飛裕子

認定NPO法人難民を助ける会ミャンマー(ビルマ)事務所は、障害者のための職業訓練校の運営や障害者自助組織の支援、また、パートナー団体と協力してCBRや障害児支援などを行っている。ヤンゴンで実施している職業訓練事業では、ミャンマー全土から障害者が集まり、3か月半、職業技術のみに限定しない幅広い内容を習得し経験を積む。たとえば、故郷の村で現状を甘受していた訓練生が障害の社会モデルなどを含む障害知識や自助組織などについて学んだり、社会の一員として小さなことでもいいから自分のできることをしようと社会貢献活動を行ったりしている。

つまり、職業訓練を切り口とした障害者リーダーシップ研修を実施しているようなものである。ロールモデルとして活躍している常勤のインストラクター全員が障害当事者である。卒業前調査では訓練生全員が訓練校に来る前より自信がついたと回答し、24期600人を超える卒業生からは、「貧しい実家の生計を助けられるようになったら家族の態度が変わり家庭内差別を感じなくなった」、「仕事と収入を得たので結婚を認めて貰えた」、「小遣いだけだが自分で稼げるようになったので自分の行動を自分で決めることができるようになった」、「弟の学費を出してあげることができた」、「地域の障害者をアシスタントとして雇用して技術を教えてあげている」、「地域の障害者を集めて情報交換をしたり励ましあったりしている」などといった知らせが届く。

一方、自信をつけ、希望に胸をふくらませて訓練校を巣立っても、帰省先にある相変わらずのさまざまなバリアに戸惑う卒業生がいることも事実であり、別のアプローチも必要だと痛感している。卒業後に限らず、訓練生から聞く生い立ちなどからもミャンマーで必要とされていることが浮かび上がってくる。政情などもあり、何でも思うように実行できる訳ではないが、我々ができる範囲での働きかけを行っていこうと、小さな一歩として、ミャンマーで活動する開発団体などへの働きかけを開始した。

「障害者もマイクロファイナンスの対象者に含めることができるの?」といぶかしげなミャンマー人担当者、障害者に配慮のない建物支援などを目の当たりにするにつけ、コミュニティで活動する開発ワーカーの意識変革と技術サポートの必要性を感じる。当事者を中心とした働きかけで、どう変わっていくか楽しみである。

個人のエンパワメントとメインストリーミング、両方を重視していきたい。

(よことびゆうこ 難民を助ける会ミャンマー(ビルマ)事務所駐在員)