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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年3月号

平成20年度障害保健福祉関係予算案

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

障害保健福祉関係予算については、今回の障害者自立支援法の抜本的見直しに向けた緊急措置を含めて平成20年度において、対前年度6.7%増の9,700億円を計上しており、障害者の自立した地域生活を支援するための施策を推進するとともに、精神障害者の地域生活への移行支援なども実施します。

対前年度6.7%の伸びは、政府全体の予算(一般歳出)の伸びが0.7%、厚生労働省全体の予算の伸びが3.0%であることと比較しても、大幅な伸びとなっています。

平成20年度障害保健福祉関係予算案の主な内容は以下のとおりです。

1 障害者の自立生活を支援するための施策の推進

障害者の自立した地域生活を支援するため、良質な障害福祉サービスを確保するとともに、障害者に対する良質かつ適切な医療を提供します。

さらに、障害者自立支援法を着実に施行するために、必要な事業を実施します。

(1)良質な障害福祉サービスの確保

ホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援事業等の障害福祉サービスについて、障害福祉計画に基づき、各市町村において着実な推進を図ります。

(2)障害児施設に係る給付費等の確保

知的障害児施設等の障害児施設において、障害のある児童に対する保護・訓練を行うために必要な経費を確保します。

(3)地域生活支援事業の着実な実施

障害者のニーズを踏まえ、移動支援や地域活動支援センターなど障害者の地域生活を支援する事業(地域生活支援事業)の着実な実施及び定着を図ります。

(4)障害者に対する良質かつ適切な医療の提供

障害者の心身の障害の状態の軽減を図るための自立支援医療(精神通院医療、更生医療、育成医療)を提供します。

(5)障害者自立支援法の着実な施行の推進

障害者の自立支援の推進のための先駆的・革新的なモデル事業に対する助成を行うことにより、障害保健福祉サービスの一層の充実を図る障害者保健福祉推進事業や、既存の障害者施設等が就労移行支援等の新たな障害福祉サービスを実施するために必要な設備等の整備に助成する障害者就労訓練設備等整備事業など、障害者自立支援法の着実な施行を推進するための事業を推進します。

(6)障害者の社会参加の促進

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、ITを活用した情報バリアフリーの促進、障害者スポーツや芸術文化活動の振興等を支援し、障害者の社会参加の促進を図ります。

また、2008年9月開催の北京パラリンピック競技大会に日本代表選手団を派遣する事業も実施します。

2 精神障害者の地域移行を支援するための施策の推進

精神障害者の地域生活への移行を推進するために、平成20年度では、新たに精神障害者地域移行支援特別対策事業を実施するとともに、精神科救急医療体制も強化します。

(1)精神障害者地域移行支援特別対策事業の創設(新規)

(下図の参考資料参照)

図 精神障害者地域移行支援特別対策事業拡大図・テキスト

受入条件が整えば退院可能な精神障害者の退院支援や地域生活支援を行う地域移行推進員を配置するとともに、地域生活に必要な体制整備を促進する地域体制整備コーディネーターを配置することにより、精神障害者の地域生活への移行を着実に推進します。

(2)精神科救急医療体制の強化

精神障害者の地域生活を支える医療提供体制を充実させるため、24時間対応可能な情報センターの機能強化、身体合併症対応施設の確保、診療所に勤務する精神保健指定医の救急医療機関での診療協力体制の構築など、地域の実情に応じた精神科救急医療体制を整備します。

(3)精神障害に対する国民の正しい理解の促進

精神疾患や精神障害者に対する国民の正しい理解を促進するための普及啓発を推進します。

(4)認知症疾患医療センター運営事業の創設(新規)

認知症の専門的医療の提供体制を強化するため、認知症疾患医療センターを創設し、鑑別診断、専門医療相談、合併症対応、医療情報提供等を行うとともに、かかりつけ医や介護サービスとの調整を行います。

3 障害者の就労を支援するための施策の推進

障害者の就労支援については、「工賃倍増5か年計画」の推進や障害者の「働く場」に対する発注促進税制の創設に取り組みます。

(1)福祉施設で働く障害者の工賃倍増5か年計画の取り組みの推進

福祉施設等で働く障害者の工賃水準を引き上げ、障害者が地域で自立して生活することを支援するため、都道府県が策定した「工賃倍増5か年計画」に基づき実施する事業を推進するとともに、工賃水準の向上に資するための設備投資等の借入に係る債務保証への助成を行います。

(2)障害者の「働く場」に対する発注促進税制の創設(平成20年度税制改正)

企業が障害者の「働く場」に対する発注を前年度より増加させた場合に、一定の期間内に取得等を行った固定資産について、一定の上限の範囲内で前年度からの発注増加額と同額の割増償却を認めます(平成20年度から24年度までの時限措置)。

4 発達障害者支援施策の推進

発達障害者支援施策については、平成17年4月に施行された発達障害者支援法を踏まえ、発達障害者の支援手法の開発や地域支援体制の確立を推進します。

また、発達障害支援に携わる人材の育成や普及啓発を着実に実施します。

(1)発達障害者への支援手法の開発や普及啓発の着実な実施

○発達障害者支援開発事業の推進

発達障害のある子どもの成長に沿った一貫した支援ができるよう先駆的な取組を通じて、発達障害者への有効な支援手法を開発・確立します。

○発達障害者就労支援モデル事業の創設(新規)

国立身体障害者リハビリテーションセンターにおいて、青年期発達障害者の職業的自立を図るため、関係機関等と連携して就労支援モデル事業を実施します。

○発達障害研修事業の充実

各支援現場における支援内容の充実を図るため、発達障害者支援に携わる職員等に対する研修を実施します。

○発達障害情報センター機能の充実

発達障害情報センターにおいて、発達障害に関する国内外の文献、研究成果等を集積し、全国の発達障害者支援機関等への情報提供を行うとともに、発達障害に関する幅広い普及啓発活動を実施します。

(2)発達障害者の地域支援体制の確立

○発達障害者支援センター運営事業の推進

各都道府県・指定都市に設置する発達障害者支援センターにおいて、発達障害者やその家族などに対して、相談支援、発達支援、就労支援及び情報提供などを行います。

○発達障害者支援体制整備事業の推進

ライフステージに応じた一貫した支援を行うため、都道府県・指定都市の各圏域において、支援関係機関のネットワークを構築します。

5 自殺対策の推進

自殺対策については、平成19年6月に制定された「自殺総合対策大綱」を踏まえ、自殺予防に向けた人材養成や地域における先進的な取組などを推進します。

(1)うつ病等の精神疾患に関する国民の正しい理解の促進

自殺との関係が強いとされるうつ病等の精神疾患に関する正しい理解のためのメディアを活用した広告活動、街頭キャンペーン等による普及啓発を実施します。

(2)自殺予防に向けた人材養成の推進(新規)

○かかりつけ医うつ病対応力向上研修事業の実施(新規)

うつ病の早期発見・早期治療につなげるため、かかりつけ医に対するうつ病の診断・治療技術の向上や医療連携等に関する研修を実施します。

○心理職等カウンセリング技術向上研修事業の実施(新規)

精神科医をサポートする人材を養成し、精神科医療体制を充実させるため、医療現場に従事する心理職等を対象とした専門的な研修を自殺予防総合対策センターにおいて実施します。

(3)自殺未遂者・自殺者遺族対策事業の実施(新規)

自殺未遂者や自殺者遺族へのケア対策のガイドラインの普及を推進するため、医療従事者に対する研修や自殺者遺族等を対象としたシンポジウムを開催します。

(4)自殺予防総合対策センターによる情報提供等

自殺予防総合対策センターにおいて、国内外の情報収集、Webサイトを通じた情報提供、関係団体等との連絡調整を行うとともに、関係機関の相談員に専門的な研修を実施します。

(5)地域での効果的な自殺対策の推進

地域における先進的な自殺対策の取組を検証・推進するとともに、地域精神保健従事者に対して実践的な研修を実施します。

(6)自殺問題に関する総合的な調査研究等の推進

自殺に至った経緯を克明に解明する研究、自殺予防に係る地域介入研究、救急部門における再発防止研究等を実施します。

6 障害福祉サービス提供体制の整備

生活介護、自立訓練、就労移行支援等の障害者の日中活動等に係る事業所の整備を計画的に促進します。

さらに、障害者の居住の場を確保するため、グループホーム等の整備に対する助成事業を創設します。

7 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備

心神喪失者等医療観察法を適切に施行するため、引き続き、指定入院医療機関の確保を図るとともに、医療従事者等の研修を行うなど、医療の提供体制の整備を推進します。

8 障害者に係る手当の給付

特別児童扶養手当、特別障害者手当等について、直近の受給者数を勘案し、必要な経費を確保します。