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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年3月号

列島縦断ネットワーキング【香川】

「街かど交流ひろばPON―POKO」商店街にオープン!
~新しい情報発信基地としての挑戦~

香川県知的障害者福祉協会

大いなる第一歩

その日はあいにく、秋雨がパラパラと降り出す少し肌寒い天候でしたが、「街かど交流ひろばPON―POKO」(以下ポンポコ)のグランドオープン式典には、香川県ならびに高松市障害福祉課長をはじめ、近隣の4町パティオ協議会会長や南新町、常磐町、田町商店街振興組合の各理事長、そして隣接する自治会長、香川県社会就労センター協議会会長と多くの来賓を迎え、盛大に開催することができました。

ただ残念なことに、式典が始まるにつれさらに雨が激しくなり、当日お祝いに駆けつけた香川県ふじみ園の総勢30人の鼓笛隊や、ミルキーウェイのさぬき雑楽団のメンバーの皆さんには出演の機会が無くなるというアクシデントとなってしまいました。

しかし、会場周辺には県知的障害者福祉協会の各施設長や地元新聞社をはじめ各報道関係者で溢れ、賑やかさを呈していました。式典が終了するやいなや、各所で慌ただしいインタビューが始まり、「ポンポコ」は多くの方々の注目と期待を背に、大いなる第一歩を踏み出しました。

希望に溢れる「ポンポコ」は、平成19年の夏に憩いの場として新しく整備された4町パティオと呼ばれる広場に面し、イタリア製の素敵なパラソルと地元の庵治石を使ったベンチなど5基が設置されており、周辺環境としては申し分なく、広く地域の方々との交流が図れる期待がより一層大きく膨らみます。

オープンまでの経緯

「ポンポコ」は、平成19年度障害者保健福祉推進事業(障害者自立支援調査研究プロジェクト)の国庫補助事業の指定を受け、香川県知的障害者福祉協会が主体となり、平成19年10月より運営しています。

本県福祉協会では、協会内部の研修会の一つに授産部会がありますが、平成18年頃より、研修会のたびに参加する職員から「新しい自主製品はどうすれば開発できるのか」「今作っている自主製品は本当に売れるのか」「このままの製品作りでいいのか」「せっかく作った自主製品の販売方法が分からない」など大きな課題が次から次へと出ていました。そして平成19年の春、県福祉協会理事会の討議で、「自主製品が販売できるアンテナショップなどはできないものか」と前述内容と同じ提言があり、その日を境にある種の機運が高まりました。

折しもその1週間後に県の障害福祉課より1本の電話が入り、「障害者自立支援調査研究プロジェクト事業でアンテナショップが見込める可能性がある」との情報をいただき、早速その情報に対応すべく緊急会議を開催し、協議検討し慌ただしく申請することになりました。お蔭をもちまして審査の結果、7月下旬には指定を受けることができ、「街かど交流ひろばポンポコ」が誕生することになりました。

ポンポコの目的

「ポンポコ」は、障害者自立支援調査研究プロジェクトの一環として誕生しましたが、そこには大きな三つの柱があります。

第一は、障害者自立支援法における就労移行支援事業所の就労実習訓練先を確保する。第二は、地域交流の場として、喫茶・自主製品販売を実施する。第三に、接客サービス訓練を実施し、実習生の安定的職業トレーニングの場となる。以上を踏まえ、障害のある人が一般就労へと「働く力」を実現するためのステップアップに貢献することを目的としています。そして、従来から授産施設を中心に蔓延している「自主製品の販売拡大」という課題解決のために、先駆的モデル事業となることも目指しています。

しかし、単に店舗を構え、自主製品を販売するだけの形式は全国あらゆる所で見受けられ、何ら代わり映えするものでもありません。そこで「ポンポコ」では、単一施設の運営形態ではなく、県福祉協会という集合体の運営であることの他に類を見ない形態に着目し、全く新しいスタイルを構築することにチャレンジしています。まだ企画の段階ですが、店舗外での販路拡大のための営業活動も積極的に展開しようと考えています。また、店舗運営方法においても従来のボランティアや職員を主力とした運営ではなく、あくまで就労訓練を兼ねた実習生(施設利用者)を中心とした運営を基本としています。

この一連の取り組みは、平成19年9月の障害健康福祉関係主管課長会議において示された「工賃倍増5か年計画の実現をめざして」における就労支援の推進に則したもので、今後強力に推し進めていきたいと考えます。

これからの「ポンポコ」は、一般就労移行への実習訓練を中心に強化推進すると同時に、自主製品の販路拡大に努力し、工賃倍増を推進しながら地域社会への情報発信基地として取り組むこととしています。

ポンポコでの日常

「ポンポコ」は、事業開始とともに、県福祉協会内に新しくプロジェクト委員会を発足させ、その委員会を中心とした体制で運営しています。

開始当初は試行錯誤の段階で、各施設利用者が入れ替わり立ち代わりの状態でしたが、現在は、自立支援法施行による新体系の就労移行支援事業を開始した一施設の利用者を中心に、毎日1人か2人の利用者が実習訓練を職員と共に実施しています。実習は午前10時から午後3時半まで、接客訓練やレジの操作など販売実践を体験しています。店舗内には喫茶コーナーもあり、壁面には施設利用者のすばらしい絵画を展示しており、最近では心癒される隠れた人気スポットとなりつつあります。

また、ポンポコ店舗前には4町パティオと呼ばれる市民憩いの広場があり、この事業を開始する際、少しでも地域との交流が図れないかと各商店街振興組合理事長との面談の中で、大変貴重な情報を得ることができました。それは、店舗前の広場清掃業務の委託でした。現在、この業務は4町パティオ協議会の支援により受託が実現し、毎日利用者がスタッフとともに朝夕2回の清掃を行い、周りの方々からも温かく見守られています。こうした地域との連携の中に、今後の「ポンポコ」のあるべき姿が垣間見えるような気がします。

今後の展望

実習訓練に参加された利用者に感想を尋ねると「このようなお店で働きたい」「ここは楽しい」「将来はどこかで働きたい」など一定の評価を得ることができました。しかし、「ポンポコ」は始まったばかりで、まだまだ未知数です。現時点で具体的に展望を提示することはできませんが、今後大きく飛躍する可能性があることには間違いありません。

また、「ポンポコ」が市の中心部商店街の中に位置する意義は大きく、好立地条件を最大限に生かしながら実習訓練を推進し、一般就労へとつながる契機となる役割を果たすことも大切です。しかしそれだけにとどまらず、県福祉協会の集合体運営という特長を生かした独自の先駆的運営基盤を構築することに大きな意味があると考えます。

「街かど交流ひろばポンポコ」は、現在、障害者自立支援調査研究プロジェクト事業により今年度末まで運営されますが、近い将来ある種の決断をしなくてはなりません。しかし、このように貴重な場所は得がたく、さらなる社会的重要な役割を果たすため、行政の支援のもと、運営方法等についての協議検討を重ね、新しい「ポンポコ」の明日を見出さなくてはならないと考えます。そして地域との協調をさらに深めながら、積極的展開を図ることも推し進めなければなりません。きっとそこに新たな光が見えることでしょう。