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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年4月号

「障害者基本計画」と「重点施策実施5か年計画」

須田康幸

障害者施策を総合的・計画的に推進するため、障害者基本法に基づき、平成14年12月に「障害者基本計画」が策定されています。基本計画は、15年度から24年度までの10年間を計画期間としており、同計画は、わが国が目指すべき社会を、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会とすることを基本的方針としています。

基本計画では、啓発・広報、生活支援、生活環境、教育・育成、雇用・就業、保健・医療、情報・コミュニケーション及び国際協力の8つの施策分野における基本的方向を定めるとともに、重点的に取り組むべき課題について、具体的な目標などを定めた重点施策実施計画を策定することとなっています。

平成14年12月には、15年度から19年度までの基本計画の前半5年間を計画期間とする「重点施策実施5か年計画」が、内閣総理大臣を本部長とする障害者施策推進本部において決定されています。この前期計画が平成19年度で計画期間を終了することから、昨年12月に、20年度を初年度とし24年度までを計画期間とする新たな計画が推進本部において決定されました。

新たな「重点施策実施5か年計画」

新計画は、前文、「重点的に実施する施策及びその達成目標」及び「計画の推進方策」の3部から構成されています。

前文では、基本計画の前半期における各分野での国内法制度の改正等のほか、国連の動向等について触れ、今後においては、これら法制度の改正の施行状況等を踏まえ、自立と共生の理念の下に、共生社会の実現に真に寄与するようにするため、次の4つに重点を置き、施策の展開を図ることとしています。

1.地域での自立生活を基本に、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害等の障害特性に応じ、障害者のライフサイクルの全段階を通じた切れ目のない総合的な利用者本位の支援を行うこと。

2.障害者の地域における自立や社会参加に係る障壁を除くため、誰もが快適で利用しやすいユニバーサルデザインに配慮した生活環境の整備等を推進するとともに、IT(情報通信技術)の活用等により障害者への情報提供の充実等を図ること。

3.障害者自立支援法の抜本的な見直しの検討を進め、その結果を踏まえ必要に応じ計画を見直すこと。

4.障害者権利条約の可能な限り早期の締結を目指して必要な国内法令の整備を図ること。

次に、「重点的に実施する施策及びその達成目標」では、基本計画における8つの施策分野ごとに各施策や数値目標を示しています。全体では120項目の施策項目となっており、これは前期計画の倍に相当します。また、数値目標についても57項目を盛り込んでおり、新規項目は42項目となっています。ちなみに前期計画の数値目標は34項目でした。

啓発・広報の分野では、世論調査において、20代の若者が共生社会の考え方を承知していないことから、将来を担う若者に対する啓発広報の一層の推進等により障害者に関する国民理解の一層の促進を図ることとしています。

生活支援の分野では、障害者自立支援法の抜本的な見直しの検討、利用者負担の見直し、事業者の経営基盤の強化等のほか、障害福祉サービス等の計画的な整備等を盛り込んでおり、新たに新サービス体系に基づく9項目の数値目標を設定しています。

生活環境の分野では、住宅、建築物、公共交通機関等のハード面やバリアフリー教室等のソフト面のバリアフリー化の推進を図ることとし、新たに都市公園等に係る7項目の数値目標を設定しています。

教育・育成の分野では、福祉、労働等の関係機関との連携による幼稚園から高校までを含めすべての学校における特別支援教育の体制整備等を図ることとし、新たに、個別の教育支援計画の策定等の4項目の数値目標を設定しています。

雇用・就業の分野では、障害者雇用率制度を柱とした障害者雇用の一層の促進を図るとともに、授産施設等の工賃水準の引き上げによる福祉的就労の底上げ等を推進することとしています。また、国等による福祉施設等の受注機会の増大への取組についても盛り込んでいます。さらに、一般就労への年間移行者数等新たに19項目の数値目標を設定しています。

保健・医療の分野では、脳の損傷による記憶障害等の高次脳機能障害の支援拠点機関の整備等を図ることとし、新たに支援拠点機関に係る数値目標を設定しています。

情報・コミュニケーションの分野では、字幕番組、解説番組等の制作の促進等を図ることとしており、新たに字幕放送時間や解説放送時間に係る数値目標を設定しています。

国際協力の分野では、障害者権利条約の可能な限り早期の締結を目指しての必要な国内法令の整備等について盛り込んでいます。

「計画の推進方策」においては、1.新計画は障害に係るニーズや制度改正の際の見直し規定等を踏まえ、必要に応じ見直しを行うこと、2.毎年度、進捗状況を中央障害者施策推進協議会に報告すること、3.障害を理由とした不当な差別的取扱い等に対する救済措置を整備すること、4.毎年、都道府県との会議を開催するとともに、市町村に対し障害者計画に係る技術的協力を実施することを盛り込んでいます。

新計画は、本年4月からスタートします。内閣府では、共生社会の実現に向けて、新計画を実効あるものとするべく、各省と連携しながら着実に取り組んでまいります。関係各位のご理解とご協力をお願いいたします。

(すだやすゆき 内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付障害者施策担当参事官)