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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年4月号

教育・育成分野における
新たな「重点施策実施5か年計画」推進に向けて

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課

1 はじめに

障害のある子どもの教育をめぐっては、近年の障害のある子どもの障害の重度・重複化や多様化といった状況に適切に対応するため、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育的支援を行うことが求められているところです。

教育分野の障害者施策に関しては、平成14年に前期「重点施策実施5か年計画」が策定されて以降、従来の盲・聾・養護学校の制度から複数の障害に対応した教育を行うことのできる特別支援学校の制度への転換等を主な内容とする、学校教育法等の一部を改正する法律が平成19年4月から施行されるなどの施策の進展が見られました。これらの状況等を踏まえ、平成20年度から5年間で重点的に取り組むべき施策に関する具体的な計画を策定しました。以下、その具体的内容について紹介します。

2 新たな「重点施策実施5か年計画」における教育・育成分野施策

発達障害を含む障害のある子ども一人一人のニーズに応じた一貫した支援を行うために、各関係機関等の連携によりすべての学校における特別支援教育の体制整備を進めるとともに、特別支援教育に携わる教員の専門性の向上等により、特別支援教育のさらなる充実を推進し、また、障害のある社会人等に対しても、ニーズに応じた学習の機会を提供していくことにより、着実な支援の推進を図ることを基本方針とし、今回新たに具体的な数値目標・達成期間も盛り込んだ計画を策定しました。

1.一貫した相談支援体制の整備

教育、福祉、医療、保健、労働関係機関等の連携の下、一人一人のニーズに応じた適切な支援を一貫して行うため、学校において、個別の教育支援計画を策定し、その活用の推進を図ります。また、発達障害を含む障害のある子どもの支援のため、校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名などの支援体制の整備を、特に幼稚園及び高等学校を重点的に進めます。

【数値目標・達成期間】(図参照)

図 特別支援教育体制の整備状況
図 特別支援教育体制の整備状況拡大図・テキスト
調査対象:全ての国公私立の幼稚園・小学校・中学校・高等学校及び中等教育学校
調査基準日:平成19年9月1日
(出典:文部科学省 平成19年度特別支援教育体制整備状況調査)

○個別の教育支援計画策定率

  • 小・中学校 20%(平成18年)→50%(平成24年)

○校内委員会の設置

  • 幼稚園(公立)32.7%(平成18年)→70%(平成24年)
  • 高等学校(公立)25.2%(平成18年)→70%(平成24年)

○特別支援教育コーディネーターの指名

  • 幼稚園(公立)29.4%(平成18年)→70%(平成24年)
  • 高等学校(公立)18.5%(平成18年)→70%(平成24年)

2.専門機関の機能の充実と多様化

特別支援学校の幼稚園、小学校、中学校及び高等学校等の教員への支援、障害のある幼児児童生徒への指導・支援等、センター的機能の充実を図ります。

3.指導力の向上と研究の推進

教員の専門性向上のため講習や研修の促進、特別支援学校教諭免許状の保有率向上を図ること等により、教員の指導力の向上を図ります(参照)。さらに、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において、国の喫緊の課題や教育現場のニーズを踏まえた研究等を実施し、特に新たな課題となっている発達障害を含めた教育情報の提供を行います。

【数値目標・達成期間】

○特別支援学校教諭免許保有率向上を中期計画(5年以内)等に位置付ける都道府県の割合

  • 32都道府県(平成18年)→全都道府県(平成24年)

4.社会的及び職業的自立の促進

特別支援学校卒業後の職業的自立を推進するため、各種関係機関や企業等の緊密な連携の下、現場実習先の開拓や新たな職域の開拓を図るほか、大学等へ進学する障害学生の支援のため、障害学生就学支援制度の整備や大学入試に関して障害の種類に応じた配慮を行うことを各大学に要請します。また、放送大学では、視聴者のニーズに応じた多様な字幕番組の制作を行います。

5.施設のバリアフリー化の促進

特別支援教育に係る施設の計画的な整備のため、具体的な整備計画の事例を取りまとめ、教育施設のバリアフリー化を促進します。

3 おわりに

幼稚園、小学校、中学校、高等学校を含めた特別支援教育の体制整備等については、依然として課題が残されておりますが、国、都道府県及び市町村の教育委員会、教員等の学校関係者においては、障害のある子どもの能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うため、福祉・雇用をはじめとする各関係機関と十分に連携しながら、この計画の推進のため積極的な取り組みを行うことが求められます。