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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年4月号

列島縦断ネットワーキング【大阪】

2008国際親善女子車椅子バスケットボール大阪大会
“OSAKA CUP”

三上真二

「来て、観て、感動 夢追いかけて!」をスローガンに、今大会も今年で6回目を迎えました。昨年に引き続き女子代表チームの大会として、太平洋を取り巻く国々からアメリカ合衆国、オーストラリア、カナダの、2004年アテネパラリンピック競技大会の金、銀、銅メダルチームに加えて5位の日本という、世界のトップチームを招待し開催いたしました。この4か国は、今年9月に開催される、北京パラリンピック競技大会への出場権を獲得しており、その前哨戦として、内外からも注目が集まった大会でした。

この大会の目的の一つは、世界最強チームのプレーを通して、障害への理解とスポーツ振興をめざし、併せて国際親善に寄与する大会を開催するということ。そして、単なる競技会ではなく、広く市民や学校などに応援の参加を呼びかけるとともに、児童・生徒と各国選手団との交流、車椅子バスケットボールの体験を通じた、国際交流と障害のある人への理解をはかるという面があります。特に多くの児童・生徒たちに世界最高峰のプレーを観てもらうために、学校単位で観戦しやすい木~土曜日という平日を中心とした開催日程にしており、今年も3日間で市民を含む約11,500人が観戦しました。

大会結果は、アメリカが優勝、2位オーストラリア、3位日本、4位カナダという順位になり、特に日本チームの活躍は、大会を大いに盛り上げてくれました。

予選リーグ初戦のアメリカ戦は、パラリンピックチャンピオンに対して、日本の持ち味である激しいディフェンスが機能し、序盤からリードを奪う展開でしたが、第3ピリオドにペースダウンしたところをアメリカにつけ込まれ、結局この差を挽回することができず、48対53の5点差での惜敗に終わりました。しかし「史上初のアメリカ戦勝利」まであと一歩というところまで追い詰めたことは、この大会のへ興味が一層湧いた試合でした。

2戦目のオーストラリア戦は、昨日の敗戦を引きずってか、もしくはアジア・オセアニアゾーンの宿敵として、他の国以上に気負い過ぎてしまったのか、終始オーストラリアの高さと速さに翻弄され、ディフェンスのチェックが改善できないまま、一度もペースを奪えず37対59の敗戦となりました。

しかし、気持ちを切り替えたカナダ戦は、2年前の世界選手権優勝チームであるカナダに対して、序盤から網本選手や田久保選手のバランスの良い攻撃で得点を奪い、日本の武器である激しいディフェンスで、高さで上回るカナダオフェンスを封じ込み、59対40で快勝しました。

この結果、最終日は、3位決定戦が日本対カナダ、決勝がオーストラリアとアメリカの対戦となりました。

日本チームの岩佐ヘッドコーチは、「今までカナダやドイツの強豪チームに対して、予選リーグでは勝つことができるが、順位決定戦では敗れてきたので、同一大会で2つ勝つということをテーマに、今夜もう一度、自分たちのバスケットをチェックする」というコメントを残していました。

3位決定戦では、日本チームは昨日以上のプレーを展開。カナダのディフェンスが小さくなればアウトサイドシュート、外に出ればカットインと自在にプレー。ディフェンスでもプレッシャーディフェンスから速攻のリズムが終始崩れず、終わってみれば64対30のダブルスコアの勝利に終わりました。車椅子バスケットボール関係者の方が、「この日のプレーが常に展開できれば、北京での金メダルも夢ではない」とコメントされた試合内容で、会場は大きな拍手と歓声に包まれました。

決勝戦は、下馬評では圧倒的にオーストラリアが有利でしたが、第3ピリオドから疲れの見えたオーストラリアに対し、アメリカの若手選手が走り勝ち、52対40でアメリカが勝利しました。

今大会は、前述したように世界のトップチームが競う競技スポーツの側面と、もう一方では多くの児童・生徒たちが、車椅子バスケットボールを通じて障害のある人への理解を深めるために、多くの併催事業を開催してきました。

一つは、大会前日に、各国チームが市内の小・中・高校を訪問する学校交流会で、今年は、オーストラリアが梅南小学校、日本が瑞光中学校、カナダが茨田小学校、アメリカが南高校をそれぞれ訪問しました。児童・生徒たちによる「歓迎のあいさつ」や「歓迎のうた」をはじめ、「おにごっこ」「車椅子リレー」「写真撮影」など、車椅子バスケットボール体験以外のプログラムも展開し、総合的な学習の一助として、障害への理解と国際交流に資するという所期の目的を達成したと思っています。特に南高校には英語科のコースがあり、平素の勉強と直結した取り組みとなりました。そして、各国が訪問した学校が、翌日以降の試合に応援に訪れることで、より一層盛り上がりのある応援となりました。

二つ目は、大会会場で実施される車椅子バスケットボール体験教室です。これは観戦に訪れる児童・生徒を対象に、近畿車椅子バスケットボール連盟の選手が講師となり、車椅子バスケットボールの体験を通じて、その楽しさ、難しさを実感しながら、車椅子に座ることでバスケットボールを楽しむことができる、ということを理解していました。終わった後の感想も「ミニバスケットボールをやってるし、車椅子に座っても簡単やろって思ってたら、いつもより低いし、足に力が入らへんからめちゃ難しかった」や「車椅子が簡単にターンして、スポーツカーみたいでかっこいい」など、多くの子どもたちが興味深く取り組んでいる様子を伺うことができました。ただ、試合の合間に実施していることから、各校10人程度の子どもたちの参加となり、すべての子どもたちに体験してもらえないことが、この取り組みの難しいところでもあります。

また、大会2日目の夜には、今大会の練習会場や宿泊施設でもある、大阪市舞洲障害者スポーツセンターで、フレンドシップジュニアレッスンを実施しました。この取り組みは、肢体不自由のある子どもたちが、各国の選手に車椅子バスケットボールのレッスンを通して、ちょっとした工夫でスポーツを楽しめるということを感じてもらうこと、また、皆の憧れであるパラリンピック選手としての姿を見てもらうことを目的に開催しました。26人の子どもたちが4グループに分かれ、ローテーションをしながらすべての国の選手に、パス、ドリブル、シュートなどを習うことができました。多くの子どもたちから、「僕も大きくなったらパラリンピックに出たい」「シュートが届くように練習する」という、とても前向きな感想が出てきました。

このように、この大会は単なる競技会の開催にとどまらず、多くの子どもたちや市民の方々が、大会を通じて障害のある人への理解を深め、障害のある人もない人も同じように支えあって生きる、「人にやさしいまちづくり」実現の一助になればと考えています。

最後に、この大会は1日あたり、約150人のボランティアの方々の力によって開催されています。これら関係の方々に感謝を申しあげ、私の報告とさせていただきます。

(みかみしんじ (社福)大阪市障害者福祉・スポーツ協会スポーツ振興部)