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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年5月号

STOP THE “応益負担”

岩田達也

平成18年10月の障害者自立支援法の施行に伴い、私の通所していた授産施設なでしこの里が19年4月より就労移行支援事業、就労継続支援事業A型(以下A型)、就労継続支援事業B型を併せもつ多機能型なでしこの里に事業移行した。私はA型を選択したが、なでしこの里におけるA型事業とは、主に配食サービス(1日平均80~90食の弁当を作り地域の公的機関や医療・福祉事業所等に配達)と焼き菓子事業である。

先ほどA型を選択したと簡単に述べたが、実際はハローワークに求職票を提出し、履歴書を書いて施設側と面接試験を行い、それに合格してはじめて雇用契約を結ぶことができた。

もともと私は授産施設の時から配食サービスに従事していたが、その時は午前9時から午後3時半までの間で1日何時間以上、週何日以上働かなければならないという決まりもなく、仕事の内容もそれほど厳しいものではなかった。しかしながら事業移行後は、勤務時間が午前8時半から午後4時まで実働1日6時間を週4日以上と決められ、その内容も以前と違って多くの仕事を任されたり、新規の顧客獲得のためスーツを着て営業に出かけたりとかなりハードになった。反面、給与の方は私の場合最低賃金を保証され、雇用・労災保険にも加入できたということで、一労働者としての自覚と自信と喜びで充実した日々を過ごせている。

ところが!である。全くところが!である。私自身は朝8時過ぎに出勤し、1日汗水流して働き、夕方4時過ぎにやっと仕事を終える一労働者だと思っているのに、その働いている場所が福祉施設の中というだけの理由で応益負担の名のもとに利用料を徴収されるのだ。しかも、それは授産施設の時には毎月2500円と一定額だったものが、A型に移ってからは私の場合、1日出勤するたびに450円強を徴収されるのだ。これでは、せっかく最低賃金を保証されていても利用料を差し引かれて、実質的には最低賃金を下回ることになり、単に経済的な理由だけでなく賃金保証されていない労働者であるという悲しい気分になるのを否めない。

以前あるセミナーで、他の施設の職員さんからA型で働く上でのインセンティブを聞かれた際、「賃金です」と即答すると、少しがっかりされた様子だったが、実際働く意欲のある障害者が一般の人と同様に賃金にこだわるのは当然のことだと思うし、周りをみてもそう思う。そういう点を各関係機関に、所属する方々にも深く理解していただき、利用者の生活を経済的にも精神的にも苦しめている「応益負担」について、ぜひ再考してほしいと思う。

(いわたたつや なでしこの里)