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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年5月号

真の自立支援のために親として望むこと
―児童は自立支援か?―

石野えり子

なぜ児童まで自立支援法に組み込まれてしまったのか、それについての分かりやすい議論は今回の見直しでも余り議論されていない。

横浜で親の会活動を続けて28年、障害児を育てる家庭の状況も、当然大きく変化している。育児ノイローゼや育児放棄など潜在的な育児力低下の傾向の中で、本来必要なサービスを受け保護されるべき子どもたちが放置されかねない状況がある。

障害児のいる家庭にとって居宅介護や移動支援は利用するためのハードルが高すぎる。現代の複合的な問題を抱えた障害児の家庭には利用しにくいサービスである。児童の家庭における居宅介護や移動支援は成人の障害者へのサービス受給とは違った視点が必要である。なぜなら、この年代には家族が孤立しないための支援こそが必要とされている。単なるサービスの提供だけでは逆に子育て力を奪う結果を生む場合もあり、丁寧に家族に寄り添い、本人の育ちを見守りながら子育て力を高める支援を自立支援ではなく、子育て支援として検討してほしい。

―日常生活に必要な移動支援とは―

昨年、入所施設待機者調査というアンケートを横浜市の日中活動を利用する本人の家族に約5800通配布し、約2500通の回答を得た。その報告書をまとめる中で、「送迎」がいかに親たちの負担になっているかが浮き彫りになった。現在の自立支援法では、通所や通学に移動支援は原則として利用できない。親たちはいつまでたっても送迎の負担から解消されない。送迎ができなくなる不安から、入所施設への移行を希望する親が多いことがアンケートの回答からも見受けられた。地域で暮らし続けるためには通所や通学にも移動支援の利用拡大を望みたい。

―権利擁護の視点での見直しを―

権利擁護の視点から区分認定調査項目を見たとき、人権侵害の記述がとても多い。障害者と高齢者の暮らしはそもそも異なる点が多いのに、介護保険の調査項目を横滑りさせた結果である。本人も同席して尋ねる調査で辛い気持ちで調査に応じた親たちも多い。生活力を判断するための調査項目として適切であるかどうかもう一度見直しを望みたい。また、障害者向けにもっと利用しやすい成年後見制度を自立支援法の地域生活支援事業に組み込んでほしい。親亡き後ばかりではなく、障害があっても安心した暮らしを地域で続けるために費用負担の軽減や、法制度との連携など地域の状況に応じて柔軟に運用できる仕組みが自立支援法に位置づけられればと願っている。

(いしのえりこ 横浜障害児を守る連絡協議会)