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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年5月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●シューズバッグの利用、他●

提案者:永山昌彦 イラスト:はんだみちこ

永山昌彦(ながやままさひこ)さん

1954年6月26日生まれ。脳性マヒ。15年前に一人暮らしをはじめ、13年前に結婚。少子化に歯止めをかけようとがんばったせいで、中学生を筆頭に4人の子どもを授かる。末っ子が成人するとき、私は70歳。まだまだへこたれるわけにはいきません。障害者自立応援センターYAH!DOみやざき代表。


シューズバッグの利用

私は電動車いすで一人徘徊するのが好きだ。知らない街の知らない路地に入ってどんな店があるか、どんな人との出会いがあるか、この先行けるのかなど、考えるだけでワクワクドキドキしてしまう。

しかし問題はトイレ。そう簡単に障害者用トイレを見つけられるわけでもない。運よく見つけたにしても、小便は手すりをつかんで立って用を足そうとすると、以前は案外安定して立ってできたのだが、最近は不安定になり、ズボンにかけることが多くなってきた。たまにはズボンがビチョビチョになってしまう。

そこで2年前から尿器を持ち歩くようにした。これを何に入れるかが問題で、最初は生徒たちが学校に持っていく上履き用のシューズバッグを100円ショップで買ってきた。

それを電動車いすの後ろのレバーに掛けていたが取りにくい。今度は肘掛に掛けたがぶつけてしまい変形してしまった。そこでゴム付きのフックを電動車いすのパイプに巻きつけ、フックを内側にし、バッグを内側にたらした。これでバッグからの尿器の取り出しもスムーズになり、変形することもなくなった。


おすすめ携帯電話ホルダー

移動中に携帯電話が鳴るとオタオタしてしまう。

バッグの中に入れていると、電動車いすを道脇に止め、バッグを取り出し、慌てながらバッグの中を探し回る。慌てているので携帯電話を引き出した瞬間、落としてしまい、路面からむなしく呼び出し音が鳴り続ける。

長いストラップをつけて首に掛けてもみた。肩こり症の私には不向きであり、トイレのときはいちいち首から外し、別の場所に置かなければならない。そんなとき、また床面からのむなしい呼び出し音が鳴ることもある。

あるとき、知り合いの作業所(宮崎県都城市・アートスペース夢)で開発した「携帯電話ホルダー」の試作品を手にした。手作りの皮製で、少々リッチな気分にさせてくれる。

私は電動車いすの操作レバーの下のパイプに付けている。利き手である右手の方に付けているので、慌てることなく電動車いすを道脇に止め、電話に出ることができる。

この手作り「携帯電話ホルダー」は私たちの周りではブームである。


玄関ドアを電動シャッターに

私の友人の家の玄関は電動シャッターである。彼の家は2階建てアパートの1階の一番端。一人暮らしを始めるとき、住宅改造の際に入り口を電動シャッターに換えた。

彼は両手とも不自由なので、普通の鍵かけやドアの開閉が一人ではできない。そうなると、だれかがいないと自宅の鍵の開け閉めができなくなる。このままでは彼は好きなときに外出したくても、ヘルパーさんの派遣時間に自分の外出時間を合わせなければならなくなる。

私以上の放浪癖を持つ彼にとっては由々しき事態である。何のために一人暮らしを始めたのか分からなくなってしまう。

そこで改造業者さんと考え出したのが、電動シャッターの設置である。シャッターの内外にコントロールボックスがある。大きめのスイッチで、押しやすくなっている。外のボックスは蓋付で彼が操作しやすい鍵が付いている。

これで彼は昼夜を問わず街を闊歩する自由を獲得した。しかし、風の強い日はシャッターを打ち付ける音が凄まじいらしい。