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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年7月号

わがまちの障害福祉計画

米子市における障がい福祉計画の策定と見直しにあたって

中島哲朗

私が、重度障害のある方の地域支援に取り組む団体の運営に携わるようになって、まもなく14年が経とうとしている。だれもがそうであるように、障害のある方、とりわけ重度障害のある方たちにも、地域で暮らしたい希望(ニーズ)があるということに対する理解が十分でなかった当時は、ホームヘルプを毎日利用することや早朝、夜間の利用、さらには長時間利用についてなど、全く行政の理解が得られず、申請さえ拒まれるような時代であった。

当時、米子市のガイドヘルプ制度は、要綱に「その他、社会生活にとって必要と認められる外出」という文言がうたわれていたにもかかわらず、公的機関への付き添い等、限られた外出支援しか認められていないのが実態であった。もっとも、全身性障害者の介助ができるヘルパーが一人も確保できていない状況であったのだから、今からは想像もつかない時代であった。

その後の時の流れは速く、制度も、人の意識も、今は当時と比較できないほどの変わりようである。全国を見渡せば、地域や市町村によっては、いまだに格差は存在するのであろうが。

さて、本題に入る。私が自立生活や、地域生活の継続を希望する重度障害のある方たちの声を施策に反映させたいと策定委員会に加わり、委員各位の協力を得て、平成18年度から20年度までの第1期計画をようやくまとめ終えたのは、平成20年3月。つい先般のことであった。

米子市の場合、数値目標に関しては、18年8月に県が実施した障害福祉サービスに関する利用希望調査の結果に基づく数値を、そのまま目標として掲げることとした。従って、策定委員会においては、数値の裏づけや妥当性について、あらためて議論することはしなかった。それは、決して数値をおろそかにした訳ではなく、法律、制度が安定せず、度重なる利用者負担の軽減等、制度の根幹に関わる部分さえ見直しに揺らいでいる状況の中で、将来どれだけのサービスが利用されるのか、あるいは、どれだけの体制整備が必要なのかを議論することが難しかったということにほかならず、当事者、家族の皆さんに寄せていただいた調査結果の数値以上に、将来に確かな見通しを立てる材料など何もなかったと、あえて言わせていただきたいと思う。

このようにして一足遅れで策定を終えた「米子市障がい福祉計画」であるが、策定にあたって配慮した点や今後の見直しで配慮しなければならない点について、以下まとめてみたいと思う。

(1)当事者の声を計画に反映させる

計画策定にあたっては、どこの市町村においても、障害者団体や家族団体の代表に委員として加わっていただいていることであろう。しかし、あえて誤解を恐れず言わせていただくとすれば、大切なことは「障害者(家族)が加わっている」という事実ではなく、本当に障害者の声を届けることのできる「当事者が参画している」か、ということである。特に数値目標を掲げて、実効性のある計画作りに努めなければならないのであるから、そのためには、地域で支援を受けながら(サービスを利用しながら)暮らしている当事者が加わるか、あるいはそれを代弁できる立場の者が加わらなければ、実りのある議論はできないし、米子市においても、できなかったであろうと考えている。

(2)自立支援協議会とともに

平成19年度末、私たちの地域でも自立支援協議会が立ち上がった。鳥取県西部圏域の9市町村がひとつになって、地域にとって解決すべき課題の洗い出しや、具体的な解決の方策について議論する場ができたことを評価したい。

あらためて言うまでもないが、協議会は、障害福祉計画の進捗状況を管理する役割も担っている。具体的には、第1期計画に掲げた数値目標の達成状況について評価し、取り組みが十分でなければ促進するための議論の場となるであろうし、場合によっては、目標値そのものが適切であったのかどうか、議論、検証する場ともなるであろう。今後の計画は、自立支援協議会の取り組みを踏まえながら見直し、策定していかなければならないと考えている。

(3)法の枠組みにとらわれない

障害福祉計画の策定過程においては、さまざまな問題、課題について話し合った。地域の社会資源の現状や、市の財政的な問題はもとより、発達障害のある方に対する支援上の課題についてや、高齢者支援との連携についてなど、自立支援法の枠組みを超えた議論も、数多く行った。

障害のある方にとって解決すべき課題は、福祉サービスに関するものばかりではない。むしろ、それ以外の分野における課題が多いようにも思われる。保健や医療、教育や療育、雇用・就業、バリアフリー等生活環境整備、スポーツ・文化活動等々の、さまざまな分野におけるさまざまな課題については、今年度、第2期計画と並行して策定しなければならない「障害者計画」の見直し作業の中で取り扱うこととなっている。また、自立支援法が対象とする三障害以外の障害の方の問題についても、今後施策に盛り込んでいかなければならず、それはおそらく「障害者計画」の議論に委ねなければならないと考えているところである。

最後に、これから策定しなければならない第2期計画こそが、市町村の力量が試されるものであると考えている。先にあげた3点を踏まえて、今度こそは、国が示した「基本指針」に振り回されることなく、私たちが暮らす地域にとってふさわしい目標、目標値を掲げて、計画を策定しなければならないと考えている。

私たちの地域のために、お仕着せではない計画策定のための議論を、今、再開したいと思っている。

(なかしまてつろう 米子市障がい福祉計画策定委員長、NPOすてっぷ理事)