音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年7月号

知り隊おしえ隊

2008北京パラリンピック競技大会
概要と見どころ

中森邦男

はじめに

2008年9月に中国・北京市で、第13回パラリンピック夏季大会がオリンピックに引き続き開催されます。この大会は2001年にIPC(国際パラリンピック委員会)とIOC(国際オリンピック委員会)による合意が正式に実施される大会となります。

2000年シドニーパラリンピック大会時に、当時のIPCステッドワード会長とIOCサマランチ会長との話し合いにより、IOCがパラリンピックへの支援を打ち出し、2001年にIPCとIOCがパラリンピックの実施について合意しました。主な内容は次のとおりです。

1.オリンピック招致にパラリンピック開催が義務付けられ、オリンピック組織委員会がパラリンピックを開催する。

2.IOC及び組織委員会による財政援助。

具体的には参加国のエントリー費が無料(選手と一定割合のコーチ・役員)になり、また、参加補助などの大きなメリットが発生しますが、パラリンピック参加上の規則がオリンピック同様に適用されます。これにはマーケティング、メディア、ドーピングなどが含まれ、より多くの義務が発生することになります。

1 北京パラリンピックの概要

(1)大会名称:2008年北京パラリンピック競技大会(通称:北京パラリンピック)
(2)開催期間:2008年9月6日(土)開会式~17日(水)閉会式(12日間)
(3)開催国・都市:中国 北京・香港(馬術)・青島(セーリング)
(4)運営主体:国際パラリンピック委員会(IPC)、北京オリンピック組織委員会(BOCOG)
(5)参加国・地域数:約145か国
(6)参加選手・役員数:約6,000人
選手 約4,000人
役員 約2,000人
(7)実施競技・種目:20競技 472種目
(8)特記事項:
1.新競技として、ボート競技が実施されます。
2.知的障害者の競技の実施はなくなりました。
3.選手団アクレディテーション(参加登録証)以外に、ガイドランナー、練習パートナー及びパーソナルコーチに対し、練習会場及び競技中限定のアクレディテーションが認められました。

2 日本選手団の編成(予定)

(1)人数:292人(選手163人、役員129人)
(2)団長:大久保春美(日本障害者スポーツ協会理事・技術委員長、JPC副委員長)
(3)主将:京谷和幸(車椅子バスケットボール出場、脊髄損傷)
(4)旗手:鈴木徹(陸上競技・走高跳出場、片下腿切断(義足使用))
(5)特記事項:
1.日本選手団としてボッチャ、シッティングバレーボール女子と新競技のボートに初参加
2.初の女性の選手団長
3.アテネ大会同様の過去最多の選手の参加
(6)協会ホームページにより、関連ホームページのリンクを含め情報を提供します。
http://www.jsad.or.jp/

3 アテネ大会の評価

日本選手団は過去最多の163人の選手と108人の役員が参加し、17個の金メダル、15個の銀メダルと20個の銅メダルを獲得しました。金メダル17個、総メダル獲得数52個とメダリスト53人は過去最高の成績となりました(表参照)。

表 過去2大会の成績比較と北京大会の参加選手数

No. 競技名 シドニー大会 アテネ大会 北京大会
選手数 選手数 選手数
水泳 17 24 18
陸上競技 38 10 34 32
柔道
車椅子テニス 4位
アーチェリー 10
自転車
ゴールボール女子  
卓球 12 10 4位
車椅子バスケットボール女子 12 12 5位 12
10 車椅子フェンシング 9位 13位
11 パワーリフティング 15位 8位
12 射撃 18位 7位
13 馬術 6位 12位
14 セーリング 15位 14位
15 車椅子バスケットボール男子 12 9位 12 8位 12
16 シッティングバレーボール男子 12 9位 12 7位 12
17 ウィルチェアーラグビー   12 8位 11
18 ボッチャ    
19 シッティングバレーボール女子     12
20 ボート        
21 ゴールボール男子    
22 ボッチャ    
23 シッティングバレーボール女子      
24 5人制サッカー(視覚)      
25 7人制サッカー(CP)    
139 13 17 11 163 17 15 20 163
(1)成田真由美選手、アテネ大会参加選手の中で金メダル獲得1位
(2)尾崎峰穂選手、6大会連続メダル獲得
(3)その他の特記事項
1.日本は障害クラスの軽く競技レベルの高い競技でのメダル獲得が目立った。
2.初出場のゴールボール女子が銅メダル獲得
3.陸上競技車椅子の投てき種目で銀メダル2つ獲得
4.初の入賞、射撃(7位、8位)、パワーリフティング(8位)

4 日本選手団の見どころ

北京大会は、前回と同数の選手数の参加となり、過去最多の選手の派遣となります。今回の実施競技の中で、日本選手団がパラリンピックでメダルを獲得した競技は、前記の9競技と車いすフェンシングとパワーリフティングの2競技で全11競技となっています。

さて、日本選手団としての現在の目標は前回大会を上回るメダル獲得となりますが、年々競技レベルが向上する中、前回アテネ大会で2位の国を大幅に上回る金メダルを獲得した地元中国選手の活躍が予想され、日本選手団の苦戦が予想されるところです。その中で、メダル獲得が予想される競技を整理すると次のようになります。

(1)陸上競技及び水泳

前回大会、日本選手団のメダルの8割近くを獲得した陸上競技及び水泳では、前回の金メダリストを含み、有望選手が今回も多数参加し、前回同様多くのメダルを獲得すると予想しています。水泳の成田真由美選手は50mと100m自由形に、同じく河合純一選手に50m自由形に4連覇がかかっております。陸上競技の尾崎峰穂選手は、1984年のアメリカ、ニューヨーク大会から継続してメダルを獲得しており、7回連続に挑むことになります。

(2)その他の個人競技

車いすテニス競技では、2007年度に年間グランドスラムを達成し、現在世界ランキング1位の国枝慎吾選手のシングルス及びダブルスのメダル獲得が有望です。アーチェリー、柔道及び自転車では、前回同様に複数のメダルを獲得すると期待しています。その他の競技においては、心身ともにコンディションを整えて競技に挑むことで、前回を上回る成績を挙げ、メダル獲得につながればと思っております。

(3)団体競技

日本選手団は団体競技において、過去のパラリンピックでメダルを獲得したチームは、シドニー大会の女子車椅子バスケットボールチームとアテネ大会の女子ゴールボールの2競技しかありません。今回はこの2つの女子チームに加え、女子シッティングバレーボールにメダル獲得がかかっています。男子車椅子バスケットチーム、男子シッティングバレーボール、ウィルチェアラグビーチームにも上位の成績が期待されております。

団体競技は選手団への影響が大きく、少なくとも決勝トーナメントに勝ち進んでほしいものです。

(なかもりくにお 日本パラリンピック委員会事務局長、日本障害者スポーツ協会指導部長)