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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年7月号

ほんの森

本人による 本人のための自立支援法ガイドブック

釧路市未来~トゥモロー~編集委員会 編集

評者 山田泰久

価格:1,000円
問い合わせ先:釧路市未来~トゥモロー~編集委員会
E-mail:tomorrow@n-salon.org

障害者自立支援法に関する書籍はこれまでに数多く出版されているが、“本人”によって出版されたものとしては初めてのものではないだろうか。タイトルで使われている“本人”という言葉には二つの意味がある。一つは自立支援法による福祉サービスを受ける当事者ということ、もう一つは知的障害のある人の当事者活動を「本人活動」といい、知的障害当事者のことを意味する。つまり、知的障害のある人が、自分たちに関係する自立支援法について自分たちの言葉で自分たちのために自分たちがわかりやすいようにまとめたものが今回紹介する本である。

北海道の本人活動団体である「釧路市未来~トゥモロー~編集委員会」のメンバー・支援者12人が編集委員兼事務局となり、全国の本人活動リーダーなど17人が編集協力委員として参加し、作成されたものである。2007年4月から約1年かけて、全国の本人活動団体を対象としたアンケートやヒアリング調査を行いつつ、地元釧路での40回近い編集会議や東京での全国の本人活動リーダーによる2回の合同編集会議を開催し、まとめ上げたものである。自分たちにとってわかりずらい言葉をわかりやすい言葉に置き換え、さまざまな種類があり複雑な福祉サービスの内容を文章の他にイラストや、時には漫画を活用して、わかりやすく、かつイメージしやすいように説明している。

これまでの本や資料は自立支援法の制度の説明を中心としたものであったが、この本は障害のある人の立場に立って、その人がしたいことやほしいと思っている支援を実現するために、自立支援法の制度の中でどのサービスを選べばよいのか、どうすればそのサービスが受けられるのかが、具体的にわかりやすくまとめられている。今までの本は「行政がこんな福祉サービスを提供している」というものであったが、「私(本人)はこんな生活がしたい、そのためにどんな福祉サービスが利用できるのか」というものになっている。ぜひ、行政・福祉関係者、保護者にも読んでほしい一冊である。

また、この本の出版は日本財団の助成事業として実施されたが、その作成を通じて全国の本人活動のネットワークが形成されるなど、全国の本人活動のエンパワメントにもつながり、今年度も新たな取り組みが始まっている。そして、この本の収益は全国の本人活動団体のネットワークづくりに役立てられるそうだ。

(やまだやすひさ 日本財団公益・ボランティア支援グループ福祉チーム)