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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年8月号

弱視難聴(盲ろう)者のコミュニケーション機器の活用

庵悟

障害の状態

私は、少し見える、少し聞こえる、弱視難聴の盲ろう者で、現在46歳です。

聴力レベルは100dbで、両耳に耳掛け補聴器を付けている。「網膜色素変性症」により、視野がとても狭く、今は、ちょうど5円玉の穴から覗くような感じである。他に近視・乱視・遠視に白内障が少し入っている。

残された視覚や聴覚の機能を生かす方法

デスクワークでは、拡大読書器とパソコンを使う。拡大読書器は、通常の紙の書類を読む時に使う。パソコンは、ウインドウズXPのノートパソコンを使っている。ユーザー補助機能等で、白黒反転、文字の拡大を設定する。インターネットでホームページを見る場合、文字サイズを最大にし、リンクを見やすい色に設定する。マウスポインターは最大の大きさに設定してあるが、視野が狭いため動かしていくうちに見失うことが多いので、ショートカットキーの機能を使うこともある。

補聴器は、自分の聞きたい声や音だけでなく、周りの雑音もひろってしまうので、聞こえにくいことが多い。この問題を軽減するため、FM補聴システムを使っている。送信機(マイク)と受信機(補聴器と接続)がセットになっていて、話し手が遠く離れていても(30mの距離でも)マイクを持って話すと、FM電波が補聴器に届き、まるでラジオをイヤホンで聞いているように聞き取ることができる。これだと周りの雑音にじゃまされずに聞こえる。

視覚と聴覚の機能を互いに補い合う方法

一般の会議等では、私が自力で目と耳から入る情報は極めて限られている。周りの様子や人の動き・表情等の視覚情報や音や音源の方向等は、通訳を受けないと分からない。

自宅でテレビを見る時は、字幕を見ながら、イヤホンジャックとFMマイクをつないで聞いているので、目と耳の両方で補い合いながら、何とかテレビを楽しむことができる。

この方法を応用できないかと思い、現在、会議の際には、パソコンを数台ランケーブルでつないで、「IPトーク」ソフトを使ったパソコンによる文字通訳を受けている。パソコン画面は白黒反転で、文字拡大で設定する。同時にFM補聴システムで音声通訳を受けている。3人ぐらいの通訳・介助者が交替しながら、通訳を受けている。

弱視難聴者に合った機器開発を

しかしながら、先に耳に音声通訳の情報が入り、少し時間をおいてからパソコン通訳による文字情報を見るので、聞き漏らしを文字で確認するにはとても有効だが、その時は次の話題に入っていることが多い。

視覚と聴覚の両方にリアルタイムに同じ情報が入るように、通訳・介助者が音声入力ソフトを使って、パソコンに文字入力できる機器があるとうれしい。現在、いくつかの音声入力ソフトが出ているが、弱視難聴者向けの通訳に適した音声入力ソフトの開発を望む。

(いおりさとる 社会福祉法人全国盲ろう者協会職員)