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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年8月号

マルチメディアDAISY図書の活用

濱田滋子

NPO法人奈良DAISYの会は、ディスレクシア(読字障害)を中心に、印刷物を読むことに困難のある児童・生徒に、教科書をマルチメディアDAISY化し提供をしている。

どんなことで困っているか-ディスレクシアは、知的に遅れはなく、外見上困難を抱えていることが分かり難い。子どもの多くが普通学級に在籍しているが、教科書や黒板の字が読みにくく、勉強についていくことが困難であり、「やる気」がないと誤解されやすい。

ディスレクシアの読みにくさ-ディスレクシアの読みにくさは、人によりさまざまである。漢字・ひらがな・特殊音節が読みにくい。似た文字やことばを間違えやすい。どこを読んでいるのか分からなくなる。文末を勝手読みする。ことばの区切りが分かりにくい。文字は読めても内容理解が伴わない。文字に焦点をあてることができない、などである。

DAISY図書の機能-では、このような読みにくさを、どのように補えるのだろうか。マルチメディアDAISY図書はテキスト・音声・画像が同時に再生され、視覚と聴覚から情報を得ることができ、視覚的な弱さを聴覚で補うことができる。また、読み上げる箇所のテキストの色が反転することにより、どこを読んでいるのかが分かりやすい。フレーズを何度も繰り返し聞き直すこともできる。個人のニーズに合うように、文字サイズや読む速さやルビなどを自由に作り変えることもできる。

活用事例-普通学級に在籍している小学5年生の男の子は漢字が苦手で、読みは拾い読みで内容理解が伴わず、読んでいる場所が分からなくなるといった読みの困難を抱えている。4年生の3学期より国語のマルチメディアDAISY教科書を使い始めた。主に家庭で予習・復習に使っている。DAISYを使い始めてから7か月経った様子を母親が報告してくれた。「目線が外れても読んでいる箇所を探しだせるようになり、授業が分かりやすくなった。音読もDAISYで学習したところはすらすら読めるようになり、文章の理解も進み、主人公の心情が読み取れた。クラスでの発表回数が増えた。読める漢字が増え、漢字に興味がでて、ドライブ中に看板を読むようになった。嫌いだった国語が嫌いでなくなった。」

小学4年 国語 光村図書「ごんぎつね」より
図 小学4年 国語 光村図書「ごんぎつね」より

DAISY図書の効果-マルチメディアDAISY教科書を使うことで、明らかに子どもの様子は変わってくる。自信がつき、意欲がわき、持っている能力を発揮することができる。マルチメディアDAISY図書はディスレクシックが自立した生活を送る上で、重要な役割を担うと考える。

(はまだしげこ NPO法人奈良DAISYの会)