音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年9月号

日本障害者センターにおける権利擁護活動の取り組み

白沢仁

NPO法人日本障害者センター(以下、「センター」)は2002年7月の設立以降、6年が経過した。この間、介護保険・支援費制度、そして障害者自立支援法と、障害者の施策が大きく転換し、何よりも「契約制度」「応益負担」といった制度変更が、障害者の生きる権利・社会参加の権利等をかつてなく侵害してきている状況にあると言わざるをえない。

センターでは、こうした事態を予想し、障害者運動の関係者とも連携しながら、障害者・家族の生活と権利を守るための諸事業を展開しようと努力してきた。2004年10月に特定非営利活動法人(NPO法人)取得して以降は、「障害児者・家族および高齢者のくらしと福祉、教育、医療、保健の増進を図り、もって広く社会福祉に寄与する(定款:第3条目的)」ために、「障害をもつ子どもの発達連続講座」「障害者施策セミナー」「重度心身障害者(児)医療費助成制度全国実態調査」など、関係者の期待と関心に応えた企画・事業を提供するとともに、国の法・制度の動向に対応し、運動に寄与する諸活動を展開してきた。

権利侵害の実態把握と政策提言

センターが設立以降、特に重視してきた取り組みは、制度変更によって障害者・家族の生活がどう変化したのか、その実態を関係団体との協力で把握し、改善すべき課題を明らかにしながら政策提言してきたことである。

具体的には、「重度知的障害(児)者の家庭での介護支援についての実態調査」(2002年:全国39都道府県・3091世帯)、「支援費制度実施状況調査」(2003年:2900ケース)、「障害児者の社会的支援ニーズ実態調査」(2005年:全国30都道府県、4352世帯)、「障害者自立支援法のサービス利用に関する全国影響調査」(2006年:全国29都道府県、2500ケース)などの調査をすすめてきた。とりわけ、「社会的支援ニーズ実態調査」では、「障害者の所得状況」「障害ゆえにかかる特別な経費」などの調査結果を全面に押し出し、いかに「応益負担」が障害者・家族の実態にそぐわないかを訴える基礎データとしたことは重要であった。

また、「障害者自立支援法のサービス利用に関する全国影響調査」では、「応益負担」の導入に伴う負担増がサービス利用の抑制・断念という、あってはならない実態を引き起こしていることを明らかにし、何よりも障害が重くサービス利用を必要とする人・低所得者ほど負担が重くなるという自立支援法の制度の逆進性を改めて浮き彫りにし、このことはまさに生存権の侵害であり、早急な改善なくして障害者の真の自立はないことを提言した。

その他、センター設立以来追及してきた調査として、「重度心身障害者(児)医療費助成制度全国実態調査」がある。この調査は、2003年、2005年、2008年と3回連続して調査し、各自治体ともに所得制限、年齢制限、自己負担などの制度見直しを年々すすめてきている実態を明らかにした。しかも制度見直しが自治体単独事業でありながら、この間の後期高齢者医療制度など、国の制度「改革」と連動してすすめられてきていることが、従来にない、新たな医療権の侵害という問題をつくり出してきている実態も明らかにした。

相談支援事業の展開

もう一つ重視してきた取り組みが相談支援事業である。次々と制度変更される中、多くの障害者・家族が「制度が分からない」「サービスをカットされた」など、周知徹底されないことからくる問題や手続き上の問題などが深刻化したといえる。その影響もあって相談が殺到したことから、組織的で総合的な相談支援の体制を整える必要が生まれた。

センターでは、弁護士・社会保険労務士等、各分野の専門家を組織し、日常的な協力体制を確立して対応した。自立支援法上の行政手続きの代行など、相談を具体的な支援にして、制度利用する権利の保障に全力をあげている。この間、特に相談件数が増加しているのが年金相談で、精神障害の「初診日」問題と絡んだ困難なケースに対しても社会保険労務士との協力で年金取得を実現させてきている。

国連・障害者権利条約と権利保障の確立に向けて

国連における障害者権利条約の採択に伴い、国内法の抜本的な見直し・批准の課題はセンターとしても注目しており、この機に権利保障・差別禁止の課題が大きく前進することを切実に求めている。これらの課題は、自助努力ではなんともならないものであり、国の社会政策の一環として明確に位置づけ、具体化されるべきものである。

センターとしては、引き続き調査・提言、そして相談支援等の取り組みをさらに重視していくが、法・制度あっての制度利用という点からいえば、本体の法・制度の有り様が問われており、それだけに抜本的な見直しを関係団体とも連携して追及していきたい。

(しらさわひとし NPO法人日本障害者センター事務局長)

○日本障害者センター正会員(6団体)

  • 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会
  • 障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会
  • 全国肢体障害者団体連絡協議会
  • 東京肢体障害者団体連絡協議会
  • 全日本視覚障害者協議会
  • 東京視覚障害者協会