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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年10月号

1000字提言

ライフステージに合わせたその人らしい生活を支える支援を!

南石勲

私は、かつての措置の時代に15年間巨大入所施設の、重度の障がいをもつ人から、就職を目指す軽度の障がいをもつ人までが、芋の子を洗うような状況で、憩いもくつろぎもない状況で生活しているその生活実態に直面した。またそこでの、彼らの障がいに起因する問題よりも、狭い空間の中での多様な人々との「集団生活」のストレスから来る二次的な問題の大きさにも悩んだ。

当時、「障害基礎年金」以外に収入の道のない彼らを「入所施設」から「地域社会」に送り出すためには、「就職」させるしかないと考え、「就職を目指そう!」と、人生の中でも落ち着いた暮らしを迎えようとする40歳、50歳になった人にも叱咤激励し続けていた自分の姿を今は反省している。

現在私は、「ワークスユニオン」で知的な障がいをもつ人々の「地域生活」と「就労生活」を支えている。

「障害者自立支援法」は、「障害者の地域移行と、就労の促進」を声高々に謳っている。その趣旨自体にまったく異論はないが、「安価な福祉」を目指すための制度でなく、一人ひとりの障がいをもつ人の「安心」と「充実した生活」を保障するための制度となることを切に願う。

同法は事業者に、年齢も障がい種別も問わず受け入れることを求めているが、「万人に通用し、万人に有効な支援」など、私には、あり得ないとしか考えられない。

人は、そのライフステージによってその生活スタイルも変わるもので、障がいをもつ人の支援においてもライフステージに合わせた生活スタイルの創造を目指すべきと考える。

特に、知的な障がいをもつ人の場合、支援者の考え方に影響を受けやすい面があるので、「支援者も含めた環境整備」は重要だと考える。

ワークスユニオンは、「壮年期の知的障がいをもつ人」の支援に特化して事業を展開している。

彼らの現状を「変えるべき今」と捉えるのではなく、「今まで無理をして頑張り続けてきた成果」と捉え、本人にこれ以上の努力を求めない暮らしを創っていきたい。

これは、ワークスユニオンが、社会資源の豊富な大都市大阪にあるからこそ選択できた方向性なのかもしれないが、特色のある事業所が増え、それぞれの障がいをもつ人が、自分に適した事業所を選べるようになることこそが望ましいし、法の趣旨にも適っていると考える。

(なんせきいさお ワークスユニオン所長)