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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年12月号

トピックス

APDF新会長アラム氏に聞く

聞き手:松井亮輔
(法政大学教授、APDF事務局長)

去る10月16日、アジア太平洋障害フォーラム(APDF)新会長のアラム氏(Mr. Khandaker Jahurul Alam)が来日されました。APDF新会長としての抱負などについてお話をうかがいました。

▼最初に、APDFについて説明していただけますか。

APDFは、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)に協力して、「アジア太平洋障害者の十年」における「びわこミレニアム・フレームワーク」(BMF)を支援するために設立されました。最初は、UNESCAPに対して主に働きかけをしてきましたが、その後、国際障害同盟(IDA)とも国際的な障害者運動における協力関係も持つようになりました。また、世界銀行とも良好な関係を維持しています。

主な目的は、アジア太平洋地域の障害者の権利を向上させることで、そのために、各国政府や各国の障害者団体を支援しています。今年2月に、バングラデシュのダッカで、第3回大会を開催しました。アジア太平洋地域から、また、地域を超えて多くの障害者が集まりました。政府からの参加もあり、障害者問題を議論するよい機会になりました。

▼この大会でどのようなことが達成できたと考えますか。

第一にAPDFについて世界中に広く紹介することができたと思います。BBCなど多くのメディアが来ていて、APDFの性格や存在を紹介してくれました。第二には、バングラデシュ政府も多くのことを学んだと思います。会議には、40省庁から40人の政府関係者が参加しました。また、多くの国際協力機関が参加し、障害者問題について学びました。彼らは、将来、障害者に対して資金援助や活動支援をしてくれると思います。

第4回大会と総会は、2010年の2月頃にベトナムで開催される予定です。

▼会期中に開催された総会でアラムさんは会長に選出されました。APDFの会員団体についてお話いただけますか。

現在、会員団体は19か国41団体ですが、今後もっと数を増やしたいと思います。また、ICT、ジェンダー、障害児、障害者雇用などの作業委員会により活動しており、このメンバーも増やしたいと考えています。

▼現在の活動の主なテーマは何ですか。

それは「アジア太平洋障害者の十年」の推進です。また、国連障害者権利条約の推進も重要なテーマです。アジア太平洋地域では、まだ、条約に署名や批准をしていない国が多くあります。それらの国が批准するように政府を支援することもテーマにしています。さらに、批准された後は、それを施行するように政府やNGOを支援したいと考えています。

▼アジア太平洋地域では、UNESCAPとどのような協力をしていますか。

私たちは、UNESCAPと各国政府が「BMF+5」を履行するように支援しています。そのためにUNESCAPのすべての会議に出席し、積極的に発言して、各国の情報を提供しています。また、各国政府に直接BMF+5の履行を求める活動をしています。

▼先ほどIDAについてお話しされましたが、IDAとAPDFの関係はどのようになっていますか。

IDAは、障害者の権利を発展させるための世界的な組織で、特に障害者権利条約(CRPD)の発展を目的にしています。IDAは、国連や他の国際機関に多くの働きかけをしています。APDFは、IDAのCRPDフォーラムに参加しており、私は、APDFの会長として、会議に出席しています。今年11月にニューヨークで会議が開催されますが、その会議では、世界各国が権利条約を履行するよう求める決議の議論に参加し、それが決定されるように支援したいと考えています。

▼APDFの会長としての将来の抱負をお聞かせください。

まず、APDFの存在と使命について障害者に知らせたいと思います。APDFが多くの人に認知され、周知され、この地域のNGOや障害者団体の窓口になり、政府や国際機関に働きかけ、障害者問題を解決していきたいと考えています。

私の夢は、BMF+5とともに障害者権利条約を推進していくことです。まだ署名・批准が行われていない国々が、障害者に関する適切な政策を実施し、それを法制化するよう支援していくことで、障害者権利条約を促進したいと考えています。最終的には、障害者差別のないインクルーシブな社会を実現したいと考えています。

▼アラムさんは毎年、日本に来られているとうかがいましたが、ここ10年間の日本の障害者運動をどう思われますか。

日本の障害者運動について、興味深いことの一つは、障害のない多くの人々が障害者の自立のために働いていることです。私も、障害者運動を支援してくれる障害のない友人がたくさんできました。日本は、インクルーシブな活動が行われていると思います。また、障害者が非常に組織化されていることも知りました。

▼最後に本誌読者にメッセージをお願いします。

障害者は、特別ではありません。何らかの障害はありますが、よい生活をするためには、教育や仕事が必要です。また、お金がなくては、何もできませんし、何も変わりません。政府は資金を提供する必要があります。アジア太平洋地域では、日本はもっとも裕福な国です。その意味で日本は、この地域の障害者を支援することができると思います。

▼11月に開催されるニューヨークのIDAの権利条約の会議がうまくいくように期待しております。また、APDFの会長としてリーダーシップを発揮していただき、APDFの活動がさらに活発になることを期待しております。

ありがとうございます。私は非常に活動的なAPDFにしたいと思っています。そのためにもすべての方のご支援をお願いいたします。