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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年1月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

もうやめようよ! 障害者自立支援法10・31全国大フォーラム
6500人がNO!をアピール

薗部英夫

「ピンチを大きなチャンスにしていこうではありませんか」の呼びかけのもと、日比谷野外音楽堂には全国各地から6500人が結集。会場から見上げる厚労省のビルに向けて、一斉にレッドカードの「NO!自立支援法」が掲げられました。

「1か月6万6千円の障害者年金しか収入がない。やっていけない」「グループホームは本当に厳しい状況になっている。地域生活支援センターも、生活困難に対する相談件数がものすごく増加した。報酬単価が低すぎる。正規職員からパート職員へと切り替えなければ運営が続けられない」「もっと実態を、生活を知ってほしい。利用料の軽減など小手先の手段だけでは困る」「国に対して怒りを覚える」。会場で聞いた参加者の声です。

障害者自立支援法成立から3年。自立支援法反対の運動は全国各地に広がり、未曾有のものとなりました。そうしたなか、本格実施からわずか数か月で、政府は「特別対策」(07年度)、「緊急措置」(08年度)を次々と実施せざるを得ず、この法制度の欠陥を露呈しています。

根本矛盾は「応益」負担の導入です。障害があることによる必要な支援サービスを「自己責任」の「私益」とし、1割の定率負担を強いる制度は、世界のどの国を見ても存在しません。障害の重い人ほど負担が大きくなります。

さらに移動支援やコミュニケーション支援事業等の地域間格差は大きく、長時間の介護サービスを困難にしている国庫負担金の仕組み、危機的な人材不足をもたらしている報酬単価・体系、ニーズに基づく支援を難しくしている介護保険になぞらえた障害程度区分に基づく支給決定システム、さらには一向に進まない「施設・病院からの地域移行」などなど問題点は際限なく、「法の下の平等」を定めた憲法第14条にも違反したものです。

今回の、10・31全国大フォーラムは、自立支援法の根本的出直し、障害者権利条約による国内法是正をアピールし、今度こそ、「私たち抜きに私たちのことを決めないでほしい」と強く訴えたものです。

フォーラムは、石野富志三郎全日本ろうあ連盟副理事長の「主催者あいさつ」に続き、自民、公明、民主、共産、社民、国民新党、新党日本の全政党からあいさつがありました。全国大行動の三澤了議長の「経過報告」を受け、北海道、愛知、熊本から、無年金、ヘルパー不足、精神障害、障害児、コミュニケーション支援、知的障害、脳外傷、通所・生活施設、自立支援法訴訟などの各分野から、当事者が次々と訴えました。

コーディネーター役の藤井克徳日本障害者協議会常務理事は、「役人は数字をつくる。役人はうそをつく。役人は消えていく」と自立支援法を作る過程で大変な数字の改ざん、ごまかしがあったこと、自立支援法を作ったときの役人は今はだれもいないことを強調。「働きに行くのにどうして利用料が取られるか」「精神障害者が地域で生きていくには医療が絶対必要。なのに薬は1割負担になった。何とかしてほしい。絶対負けないぞ」などの発言のたびに、会場全体が共感と連帯の拍手であふれていました。

「財源がなくて苦しいから我慢をと政府はいいます。でも、この国の障害者への分配はまともなものですか? OECD30か国のうち、下から3番目です。納得できない。障害者を閉め出す社会は弱くてもろい社会です。これを切り返していくために、自立支援法をやめさせましょう!」と実態報告は、まとめられていました。

その後、アピール採択、行動提起などを受け、勝又和夫日本障害者協議会代表が「閉会あいさつ」を行い、国会と銀座・東京駅方面にデモ行進が行われました。各地でも10・31に向けてさまざまな取り組みがもたれました。

応益負担の撤廃を求め、全国8地裁に29人が一斉提訴

「私たちは、この自立支援法の根幹の応益負担をどうしても許せません。日本国憲法、障害者権利条約に反するこの法律を司法の場に訴えます」と、この日全国で一斉提訴がありました。「私が原告になったのは、障害者はこのままでは生きていけないから」と記者会見で原告が次々と訴えました。

神戸地裁では、重度の知的障害のある吉本春菜さんのお母さんが訴えました。「生きたいと思うことが、人より“ぜいたく”な希望なんでしょうか」

この障害者自立支援法訴訟の勝利をめざそうと、80人を超える弁護団、日本障害者協議会、DPI日本会議などの障害者団体、個人によって「障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会」が10月27日に発足し、広島、滋賀などで次々と地方組織がつくられています。第二次一斉提訴は、新しい年度が始まる4月1日に実施することを決定しています。詳しくは、勝利をめざす会のホームページをご覧ください。

●私たちは障害者自立支援法訴訟のご支援とご参加を心からよびかけます

内橋克人(経済評論家)、大谷藤郎(国立ハンセン病資料館名誉館長)、落合恵子(作家)、勝又和夫(日本障害者協議会代表)、香山リカ(精神科医)、金子勝(慶應義塾大学教授)、堤未果(ジャーナリスト)、仲村優一(日本社会事業大学名誉教授)、樋口恵子(評論家)、三澤了(DPI日本会議議長)

障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会(新宿区戸山1―22―1 日本障害者協議会気付 TEL 03―5287―2346)
http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/suit/

●各地の取り組み

○9・23熊本 障害者自立支援法の抜本的見直しを求める集会(150人)

○9・26滋賀 やめてください応益負担!、なくさないで福祉医療9・26県民集会(600人)

○9・28京都 障害者自立支援法に異議あり!「応益負担」をなくせ!街頭演説会&パレード(350人)

○10・3愛知 障害者自立支援法は福祉現場に何をもたらしたのかシンポ(450人)

○10・23兵庫 それでもおかしい!障害者自立支援法 ストップ・ザ応益負担08兵庫集会(800人)

○10・26神奈川 これからの障害者と患者の福祉・医療を考えるみんなのフォーラム

○10・30福岡 出直そう!障害者自立支援法・いのちと暮らしを守る福岡県民集会(400人)

○10・30鹿児島 もうやめようよ! 障害者自立支援法10・30鹿児島フォーラム

(そのべひでお 日本障害者協議会情報通信委員長)