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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年2月号

1000字提言

ワークスユニオンの日中(就労)支援

南石勲

私たちワークスユニオンは、企業就労を目指して「就労自立訓練」を長年受けてきたが、夢叶わず企業就労を断念した人や、幾度も企業就労に失敗し、心に深いダメージを受けてしまった壮年期の知的な障がいをもつ人を想定した支援を行っている。

彼らは、自分なりに頑張り続け、背伸びをし続け、少し疲れてしまった人たち。

私たちはそれでも、「企業就労」のみを「是」として、彼らにこれからも生涯「頑張り続ける」ことを求めるべきなのだろうか?

私たちは、彼ら一人ひとりの「できること、できないことも含めてのありのままの現状」を受け入れ、「今まで無理をし過ぎた人たちに、少し気楽に働き、自分の人生を精一杯楽しもうよ!」と言ってあげたい。

私たちの作業現場の一つに、小さな企業の中で3人の利用者が支援者1名と働いている場所がある。

そこには、遅刻の常習犯のT君、四六時中声を発し続けているK君、7社もの企業で離職を繰り返したSさんが、工場の一角で穏やかに働き、月額6万円程度を稼いでいる。

作業面で判断すると、能力は高く一般就労も可能なのだが、どうしても毎日遅刻を繰り返してしまうT君や、周りの人との人間関係がうまくとれず、支援者が側にいないと仕事に行けなくなってしまうSさんの現実がある。

この人たちの一般就労には、「障がい」に起因する本人にはどうしても超えられない壁があり、この壁を乗り越えることを求めることは、私には酷としか考えられない。

この人たちの現状は、一般就労に比べると、半分程度の収入しか保証できていないが、本人たちの苦手な部分を受け入れた上で、「施設ではなく企業の中で働きたい」との願いは叶えられていると考える。

「障害者自立支援法」は、「就労支援」と「一般就労」を強く謳っているが、企業就労は、障害をもつ人のだれしもができるものではないし、企業就労から来るストレスに打ち勝てず、心の状態が不安定になってしまう人も多い。

私たちワークスユニオンは、一般就労は難しい、でも施設ではなく企業の中で働きたいとの願いを持つ人に、「企業内授産」「施設外支援」「グループ就労」などの支援者付きの企業内での活動現場を提供することにより、彼らの自己実現を図っていきたい。

(なんせきいさお ワークスユニオン所長)