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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年5月号

ほんの森

リハビリテーション連携論
ユニバーサル社会実現への理論と実践

澤村誠志・奥野英子編著

評者 阿部順子

三輪書店
〒113―0003
文京区本郷6―17―9
定価 3,570円
(本体3,400円+税5%)
TEL 03―3816―7796
FAX 03―3816―7756

本書はリハビリテーション連携科学学会の10周年記念誌でもある。編著の奥野氏は当学会の立ち上げから今日まで、精力的にリハビリテーションにおける連携の実践と研究に尽力してきた。もうひとりの編者である澤村先生は、わが国における総合的かつ地域生活を支援するリハビリテーションの第一人者であることは紹介するまでもない。お二方の名前を拝見しただけで、本書が実践に基づく研究の集大成であることは想像に難くないだろう。

第1回の学会大会では、現場の実践を分析した発表に先生方が丁寧にコメントをしていて、これからリハビリテーションの連携を実践しながら科学としてまとめあげていく人材が輩出されるのだろうと感じたことを思い出す。とはいえ、私はいささか不真面目な学会員で、以降の学会大会には参加していないので、偉そうなことは言えないのだが。

本書を手にし、この10年間のリハビリテーション連携の成果をわくわくしながら読むことになった。とりわけ第2部第4章の「ライフサイクルに応じたリハビリテーション連携の実践」では、事例レベルのミクロな実践からシステムとして確立されたマクロの連携までさまざまなものが紹介されていて興味深い。また連携にはライフステージをつなぐ縦の連携と現在の生活を支えるネットワークとしての横の連携があり、双方が組み合わさって重層的な支援を構築できるのだということが明らかになる。

しかし、連携は相変わらず困難な課題である。就労支援における連携について書いている古川氏は、具体的な支援に双方が踏み込むことをしないのは「機関が求める(組織として都合のいい)支援モデル」であり、双方に支援の踏み込みを構築するのは「理想的だが、機関が嫌う支援モデル」だと述べている。機関や専門職の中にある壁を言いえて妙だと感心した。

医療現場では、同一機関内でのチーム医療(多職種連携)や同じ領域での病診連携など、成果が共有しやすい分野での連携はずいぶん進んできたと実感する。しかし、他機関や他領域との連携となると、一筋縄ではいかない。

いずれにしろ、自分の業務の範囲を半歩踏み出さないと連携は成立しない。そのような仕事の仕方を当たり前だとする専門家を育てることが、連携の次のテーマになるのではないかと思ったら、第7章に連携教育の取り組みが紹介されていた。今後が、楽しみである。

(あべじゅんこ 岐阜医療科学大学)