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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年7月号

北海道障害者条例成立に関する取り組み

我妻武

はじめに

本年3月27日22時58分、北海道支庁再編問題で紛糾する第1回定例道議会本会議において、全会一致により「北海道障がい者及び障がい児の権利擁護並びに障がい者及び障がい児が暮らしやすい地域づくりの推進に関する条例」(条例第50号・平成21年3月31日。以下、北海道障害者条例)が可決、成立した。

当日はDPI北海道ブロック会議でも議会傍聴を検討したが、議会は支庁再編問題で紛糾しており、可決成立がいつになるか分からないとのことであきらめ、成立については、条例づくりに関わった議員からのお知らせで知った。

07年権利法制確立に関するセミナーをきっかけに

この北海道障害者条例が作られるきっかけになったのは、2007年11月23日にDPI北海道ブロック会議が開催した「障害者権利法制の確立に関するセミナー」であった。

このセミナーは、国連で障害者の権利条約についてのさまざまな議論がなされている中で、先行した取り組みをしている韓国DPI事務所長、ソウルDPI会長の魏文淑(うい・むんすく)さんをお招きし、07年に成立したばかりの「韓国障害者差別禁止法と私たち(韓国DPI)の取り組み」と題しての講演と、わが国では初めて条例を作った千葉県の横山・障害者計画推進室長に、千葉県における条例制定に向けた経過と条例の概要をご報告いただいた。

さらに、地元からはDPI世界会議札幌大会の組織委員会役員をお務めいただいた北海道議会議員各会派(1会派は欠席)、北海道の担当課長にもパネリストとして出席していただいた。

このセミナーの議論の中で、韓国と千葉県の取り組みについて、参加者の多くが感銘と共感を覚えた。さらに、それぞれの議員から北海道でも条例を作る必要性と、DPIを含め、それぞれが必要な行動をとることが確認され、セミナーの終了時には、客席からの期待を込めた拍手で終了した。

その時の様子は、DPI北海道ブロック会議のHP(http://www.dpi-japan.org/hokkaido/)でご覧いただけます。

動きは早かった

その後、北海道議会自民党では会派内に研究会を設置し、条例案を示すとともに、道内主要都市での意見交換会などを行い、さらに、ホームページでパブリックコメントなど広く意見を求めた。道議会民主党も内部にプロジェクトチームを発足させ、外部作業チームには労働組合関係者や福祉関係者を入れて、北海道障害者条例についての議論が始まった。この外部作業チームには、DPIや障害者地域活動支援事業所運営者らも参画した。

さらに、08年6月28日にDPI北海道ブロック会議が行った「障害児・者が暮らしやすい北海道づくりを進めるために」と題したシンポジウムには、前年ご出席いただいた道議会議員に、今回は会派代表として出席していただき、それぞれの会派の取り組みや盛り込みたい内容などが議論された。そこでは、より具体的なこととして、超党派での協議と年度内成立を目指すことが確認された。

その後、民主党が行った差別の実態を調査したアンケートには、道内から1500件近くの意見が寄せられたが、いまだに多くの偏見に基づく差別が実態としてあることに議員も驚き、この北海道障害者条例制定の必要性を強く感じたと聞いている。

議会関連での大きな動きは前記のとおりであるが、当然ながら、DPIとしてもさまざまな場面でコメントを出し、またロビー活動も行ったが、それぞれの会派案に一定程度の反映がなされている。

最後に

最後に、幸か不幸か、北海道障害者条例の策定は、千葉県のような県民主導のボトムアップ方式ではない。障害者団体と議会の共同作業として成立できたが、千葉県のような広く、時間をかけての丁寧な議論が行えなかった。そのためにいまだに条例が成立したこともご存じない方がいるし、この条例が現実に何の役に立つのかもご存知ない方もいる。

しかし、条例という形はできたので、これから魂を込めることが重要となってくるだろう。そのためには行政とも協力しながら、まず北海道障害者条例の周知を道民に対して行うことと、さらには議会などとも協力しながら、条例の中身を継続して吟味することが重要になってくると思われる。当然、ここにも障害当事者の参画は欠かすことはできない。

北海道議会民主党が行ったアンケートでは、差別を感じないとする人もいる一方、かなりの方が生活するうえでの差別や偏見を感じ、生活がしにくいことを訴えていた。

そうした人たちにとって、この北海道障害者条例が一筋の光明となり、やがて大きな光となって照らすようにしなければいけないと、一道民として考えている。

(わがつまたけし DPI北海道ブロック会議事務局長)

北海道障害者条例は次のHPからご覧ください。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/shf/jyoureitop.htm