音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

こう変わるべき障害者施策
新政権の誕生とこれからの障害者福祉

笹川吉彦
社会福祉法人日本盲人会連合会長

2009年8月30日の総選挙で、長年にわたって続いていた保守政権に代わり、民主党を中心とする鳩山政権が誕生した。私たち障害者に最も関係の深い厚生労働大臣には、年金問題で辣腕をふるい、新政権誕生の立役者でもあった長妻昭氏が就任した。長妻大臣は就任早々「障害者自立支援法は廃止する」と明言した。

障害者施策は措置制度から支援費制度に代わり、サービスは障害当事者の選択契約の下に実施されるようになったが、わずか2年で行き詰まり急きょ自立支援法の制定という事態を招いたが、同法成立には十分な検討が行われなかったことから、全国の障害者に混乱と不安の日々を招く結果となり、一部では裁判沙汰まで生ずる結果となった。

長妻大臣の「廃止」発言は、全国の障害者に大きな希望を抱かせる結果となったが…。新政権誕生から早3か月半、障がい者総合福祉法(仮称)と障がい者制度改革推進法(仮称)制定の方向は示されたものの、具体策については明確でなく、新たな不安の声が頻繁に聞かれるようになった。新法制定には少なくとも1、2年を要すると思われるが、その間はどうなるのか、廃止する以上はそれに代わるべきものがすぐにでも出てこなければおかしい、などがそれである。そうした中、2010年度予算に対し、費用負担を応益負担から応能負担に変更し、生活保護者に加え市区町村民税非課税者を無料にするための要求が出された。極めて厳しい財政難の下、要求が認められるか否か、大いに注目されるところである。

一方、制度改革推進本部が設置されるが、いつから機能しはじめるのか、「障害当事者の生の声を政策に取り入れて行く」というが、どのような形で取り入れられていくのか、さらには障がい者総合福祉法制定の手順はどうするのかなど不明な点が多く、一日も早く明快な説明が得たいものである。新政権である以上、これまでの施策を上回るだけの方策は確立され、実行されるべきだと思う。今一番気掛かりなのは、財政難を理由に障害者関連予算が削減されることである。ただでさえ先進国に比べ低い水準にあるわが国の障害者福祉を後退させるようなことがあったとしたら、新政権誕生の意義は全く失われてしまうことになる。

また障害者権利条約の批准や障害者差別禁止法の制定など、全国の障害者はその実現を一日千秋の思いで待っており、新政権の積極的な取り組みを大いに期待したい。

(ささがわよしひこ)