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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

こう変わるべき障害者施策
コミュニケーションは権利

石野富志三郎
財団法人全日本ろうあ連盟理事長

全日本ろうあ連盟は、「いつでも、どこでも、必要なときに派遣できる手話通訳者」を求め、手話通訳制度確立を目指して運動を重ねてきました。

現在、わが国では手話奉仕員養成事業、手話通訳者養成事業、厚労大臣認定の手話通訳士試験、全国手話研修センターが実施する手話通訳者全国統一試験、コミュニケーション支援事業としての手話通訳設置事業、手話通訳者派遣事業等が実施されています。

自立支援法のグランドデザインが発表されてから、国とすべての自治体に対し、手話通訳派遣事業の利用者負担が導入されないように要望を続けてきました。私たちにとって手話通訳が保障されることは、健聴者と同じ条件に立つために必要なことであり、障害者権利条約において言語の定義の中に手話が明記されているように、手話の使用とアクセスの保障は、国の責務として利用者負担を無料にすることを主張しています。手話通訳派遣事業は、病気や事故等でいつ発生するか予測できない、また団体派遣が認められない等当事者のニーズに対応できないことから、個別給付事業にはなじまない、別系統にする必要がありました。コミュニケーション支援事業が地域生活支援事業に入れられたことで、すべての市町村での実施を求める運動とともに有料化を阻止する運動を、毎年続けていかねばならない状況になっています。

現在、手話通訳者派遣事業の有料化は一部の自治体に導入され、広域派遣・障害当事者団体からの依頼が認められない、手話通訳設置事業が広がらない、予算不足から派遣範囲、回数等に制限を設ける地域が多いなどの地域間格差が広がっています。

2010年度以降の当面の要望は、コミュニケーション支援事業の利用者負担の無料を法律に明記し、義務的経費とすること。聴障者団体の研修等や広域派遣、専門性の高いニーズへの対応のため都道府県コミュニケーション支援事業の実施を求めています。「障がい者総合福祉法」制定への政権与党の公約に対しては、コミュニケーション支援事業を抜本的に改革し、新たに「情報・コミュニケーション法(仮称)」の制定を提言したいと思います。そして、福祉分野だけでなくあらゆる分野で情報保障・コミュニケーション保障として手話通訳等の養成・資格認定、専門職としての設置、派遣の各事業を保障する法制度・事業体制の確立を今こそ目指し、国民的運動を始めたいと思います。

(いしのふじさぶろう)