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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

こう変わるべき障害者施策
障害者権利条約を鏡とした政策の見直しを

三澤了
DPI日本会議議長

「変えたいけれどいつまでも変わらない」「根本的に変えることは難しいかもしれない」と半ばあきらめをもって受け止められていた、障害者を取り巻く状況が今大きく変わりそうな、いや変えることができそうな時代にきている。昨夏の総選挙の結果、秋に新しい政権が生まれ、障害者に関する法律、制度、システムの総合的な見直しが行われようとしている。それも障害当事者が主体となって。

21世紀に入って、世界中の障害者にとってもっとも特筆すべき事柄は、言うまでもなく、障害者権利条約の策定であり、その推進・普及である。今後、障害者の権利の確立ならびに自立と社会参加のための重要な規範であり、指針となるものであると考える。

この権利条約の批准に関して、新しい政権の中核を占める民主党は、「わが国の障害者施策を総合的かつ集中的に改革し、「国連障害者権利条約」の批准に必要な国内法の整備を行うため、内閣に「障がい者制度改革推進本部」を設置する」と述べている。この方針に基づき、さる12月8日に推進本部立ち上げを閣議決定し、いよいよ具体的な歩みを踏み出そうとしている。実質的には、推進本部の下に設けられる障がい者制度改革推進会議において、整備すべき課題の整理と、その基本的な方向性を定める作業が精力的に行われるのであろうが、いずれにしてもその道しるべとなるものは障害者権利条約であり、そこに貫かれている障害をもたない者との平等を基礎とした、インクルーシブな社会構築の理念であろう。

こうした理念の下に、モニタリングの仕組みの構築や障害者差別禁止法、障がい者総合福祉法の制定といった17項目が上げられている。これらの新法制定や法制度の見直しは重要であり、できるだけ早急に具体的な検討が開始される必要がある。

それと同時に、まずは障害とは何か、障害をどう位置づけるかという、障害の概念を改めて障害者権利条約に沿ったものに捉え直す作業が必要である。今こそ、従来から言われ続けてきた医療モデルによる障害概念を、根本的に社会モデルによるものに変えていかなければならない。福祉サービスや所得保障等の支援を、必要とする人が、ニーズに応じてきちんと受けることができるようにするために。

(みさわりょう)