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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

こう変わるべき障害者施策
共に生き、共に学び共に育つ社会の実現

副島宏克
社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会理事長

障害者福祉の最重要課題は、所得保障の確立である。障害者自立支援法の最大の欠陥は、所得保障を確立しないまま利用者負担を課したことにある。

一方、日本の社会保障は、社会保障国民会議でその方針が決められる。

平成21年度の社会保障は、平成20年11月4日の社会保障国民会議の最終報告でその方針が決められた。ところが、その中には障害者福祉は入っていない。報告書には「社会保障制度を将来にわたって持続可能なものとし、同時に必要な機能の強化を実現していくために、今回のシミュレーションの対象でない障害者福祉等を含め、あるべき給付・サービスの姿勢を示し、それを実現していくための改革の全体像を明らかにしながら、必要な財源を確保していくための改革に真剣に取り組むべき時期が到来している……」とある。

これまでは、障害者は社会構成員の中に入っていなかったことではないか。これは大きな問題であり、早急に対策を講じる必要がある。

また、障害にはさまざまな障害があり、特に知的障害の実態はなかなか理解されにくい。知的障害者が自立生活をするのに多くの困難を伴う理由は、幼い時からさまざまな経験をする機会を与えられず、他者との当たり前な関係を育めずにきたために、本来、人間として大切な「生きる力」を身に付けることができなかったからである。さらには、自己選択・自己決定の場面で支援者等が支援者等の考えで代弁してしまったことにある。故に、知的障害者が地域で生きて行く上で大切なことは、他者との関係の中で生きる力を付け、生活の幅を広げる力を持つことである。これは、健常者が幼い頃からごく当たり前に身に付けていくように、障害のある人も地域の中で日々を過ごすことで身に付くことである。

すなわち、「共に生き、共に学び共に育つ」社会をつくることが大切である。

今後の障害者施策については、「障がい者制度改革推進本部」を中心に本格的な検討が重ねられるものと思われるが、多くの課題が山積みしており、同本部の設置を急ぐ必要がある。同本部の設置に伴う委員会等には障害者団体を積極的に参画させ、同時に、政府与党内にも広く情報交換やさまざまな課題について議論ができる場を設ける必要がある。

(そえじまひろかつ)