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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●緊急時、携帯メールでコミュニケーション、他●

提案者:種池麻祐子 イラスト:はんだみちこ

種池麻祐子(たねいけまゆこ)さん

自立生活センターリングリングのスタッフ。また、2児の母でもあり、耳が聞こえない親の子育てグループの活動もしている。趣味は、料理するコトとサスペンス小説やエッセーを読むコト。


緊急時、携帯メールでコミュニケーション

私は、電車を利用して、20数年になります。耳が聞こえないことで不便に思ったことはたくさんありました。でも、最近は、携帯ネットで交通情報が見られる等、以前よりは便利になったように思います。

たとえば、電車が突然止まった時。車内放送が流れても私には当然届かず、何があったのか、どこに移動すればいいのか分からなくて戸惑ったことがよくありました。でも、最近は、携帯電話の普及や聞こえない人への対応の認知が広まっていることもあってか、周辺にいるメールを打つのが慣れていそうな人、書いてくれそうな人を探して(それで人を見抜く力が身に付くようになる!?)、「何かあったのですか?耳が聞こえないので教えてください」と打った携帯メールを見せて、教えてもらったりします。本来なら、車内放送は声と同時に文字も流す電光掲示板があればいいのですが、こういう方法も人とのふれあいを感じられ、悪くないと思います。


見て分かる工夫1─病院の待合室で

聴覚障害者の中には、病院が嫌いな人が多いと聞きます。理由はいくつか考えられますが、その中の一つに、受付で名前を呼ばれても気付かず後回しにされたとか、事務員の口元をじっと見るのが疲れるからと言います。今は、「合図くん」(振動呼出器)という便利な機器がありますが、多くの医療施設ではまだ知られていません。

私も、以前はどんなに体がしんどくても病院へ行くのがおっくうで、家庭常備薬で済ませるほうでした。でも、さすがに家庭常備薬だけでは限界の時もあるので、病院へ行く時は目立つ色、または特徴のある服を着るようにしています。そうすると、たいていは、カルテに「聴覚障害者(黄色い服)」と書かれた付箋が貼ってあり、他の事務員が見ても分かるので、すぐ呼びに来てくれたりします。

最近は、手話ができる・筆談に慣れている事務員が増えているので、待合室で気兼ねなく本が読めるというのがうれしいですね。


見て分かる工夫2─災害が起こった時

障害者や高齢者は、災害弱者でもあると言われていますが、聴覚障害者の場合は、危険を知らせる情報を受け取ることができません。

私は、神戸市で一人暮らしをしていた時、阪神大震災を経験していますが、食糧や水の配給を知らせる放送や口頭連絡が伝わらなかった聴覚障害者は多くいたと聞いています。ただ、私の場合は、近所の方(初対面なのに)が避難所まで案内してくれたり何かあると教えてくれたので、運が良かったのかもしれません。

その時に、工夫したことが一つありました。私は恐怖と寒さで体が震えていたのですが、寒さのためなのか余震のせいなのか区別がつかない時もありました。そこで、余震が来たことが分かるように、水を入れたコップを平らなところに置いて時々見たりしていました。また、非常持出品には、障害者手帳のコピー・携帯ホワイトボード・紙・ペンはもちろん、放送や口頭連絡による情報を、筆談などで教えてもらうようにお願いするメモも入れておくといいでしょう。