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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年2月号

列島縦断ネットワーキング【北海道】

むくどりホーム・ふれあいの会の取り組み
―障害のある人もない人も、赤ちゃんからお年寄りまで、だれでも立ち寄れる友達づくりの家を目指して―

柴川明子

はじめに

私は若い頃から、「障害児が地域で近所の子どもたちと遊ぶチャンスも場もない!」という障害児の親の声を、たくさん聞いてきました。そこで、みんなが一緒に遊べる場をつくりたいと、長い間ずっと願い続けてきたところ、奇しくも14年半前にほんの小さな活動として、その夢が実現しました。

当会発足の経緯

(1)K君親子の嘆き

K君の障害を医師から知らされて落胆したご両親は、盲学校へも通いやすく、近所の子どもたちともたくさん遊べるようにと、児童公園前の家を購入してそこに引越してきました。胸を膨らませて公園へ遊びに行ったところが、そこに遊びに来ていた子どもたちに、「この子の目、変だ!」「滑り台に登るのが遅い!」と言われ、つばを吐きかけられました。そしてとうとうK君親子は、自分の家の目の前の公園に、風が強くてほかの子どもたちが遊びに来ていない日を選んで遊びに行くようになったのです。K君親子にとっても、近所の子どもたちにとっても大変悲しい残念なことでした。

(2)バリアフリー公園の造成計画

ところで1995年に、札幌市は南区藤野の、わが家の向かいの土地(テニスコート2面分の面積)にバリアフリー公園を造成することを決め、設計計画のための相談会が地域住民や障害児親子も参加して行われました。

公園は人と人とがふれあう、とても素晴らしい場所です。そして、そのふれあいの継続のためにも、また造成されようとしているこのバリアフリー公園が有効に用いられるためにも、ふれあいの拠点がどうしても必要であると痛感しました。

(3)ふれあいの会の発足

そこで、それより数年前から活動してきた“ひかり女性学級(「視覚障害児・者への理解と支援」をテーマにした学習とボランティア活動の会)”の中の6人が発起人となり、むくどりホーム・ふれあいの会を立ち上げました。最も立地条件のよいわが家を自宅開放することが、最も手っ取り早い方法でした。

こうして当会は、藤野むくどり公園の設計図が出来上がった翌月に発足しました。公園開園までの1年間は、「公園の完成を待ちましょう」という会を月1回行い、障害児・者との交流会のほかに、公園造成に関する種々の課題も検討し合いました。

公園内の施設としては、シートベルト付きのいす型ブランコ、車いすでも使えるテーブル式砂場、弾力性のあるゴムチップの園路、点字案内板、介助者と乗れる幅広ブランコ、介助者と乗れるローラー滑り台、大型マット、水遊びできる噴水などが設置されました。

1998年に藤野むくどり公園が開園した後は、週2回(2008年4月からは週3回)10時から16時まで開催しています(なお、活動開始の2年半後には、我々家族が近くに引越し、公園前の家は丸ごと活動に用いるようになりました)。

むくどりホーム内の遊具は、ボールプール(直径2.7m、1万個のボール入り)、トランポリン、ままごとコーナー、ヤマハミュージックテーブル、ピアノ、トーンチャイムその他の楽器、布の絵本、輪投げ、指人形等々です。

むくどりホーム・ふれあいの会の活動

(1)会の目指していること

むくどりホーム・ふれあいの会は、障害理解、障害児・者との交流、知らない人とも友達になる、違いを認め合って尊敬し合う、だれもがごく当たり前に堂々と居られる場であることを目指して活動しています。

(2)活動の広がり

公園内では、公園の管理、鯉のぼり会、公園開園記念会、クリスマス会、雪遊び会、スノーキャンドルの会等が続けられています。

その他、ボランティアによる教室が毎月開かれ、また、“私の出番”という名称で、参加者が自分の特技を生かした活動を、自主的に随時行っています。

また、札幌市の出前講座の活用や、障害児の親が中心となって立ち上げた「私の子どもはチャレンジド」の会では、障害について多くの人が考え合っています。

このような活動のほかに、小学生の総合学習、養護学校生と小学生の交流会、中学生の子育て体験交流会、高校生のボランティア活動、大学生の実習体験や研修、さらにはむくどりホーム・ふれあいの会をテーマにした卒業論文や修士論文を書く大学生もいます。

(3)現在取り組んでいる事柄

前記の活動も続けつつ、障害児・者との交流のエピソードをまとめること、また、今までの活動を検証する作業も行っています。

課題

個人住宅を使用している私的なボランティア活動ですので、施設面での限界があります。しかし、個人住宅使用の家庭的な雰囲気の中で精一杯工夫しながら、やれることを実践しています。

当会は、発足当初から登録制でもなく、会員制でもなく、参加費無料の自由参加です。その日の参加者がその日のスタッフになり、一足先に来た人は次に来る人を出迎える、などを心掛けながらも、多くの方々がボランティアとして関わってくださっています。

しかし、次につなげて継続するためには、緩やかな組織作りの必要に迫られてくることと思います。参加者一人ひとりが最も居心地のよい位置づけで、この場での自己実現をしていってほしいと願いつつ、その方法を模索しています。

今後の展開

活動を続けている中で、参加者から多くのうれしい意見を聞いています。「他の公園には、怖くて行けなかったけれど、むくどり公園やむくどりホームに来たら、とても楽しく遊ぶことができた。知らない人とも話をすることができた」「障害のある子もない子も、共に遊べるみんなの公園ということなので、その意味ある言葉に、おおらかな気持ちで安心して行くことができます」「大きくなって結婚して子どもが生まれたら、ここに連れて来るから、ずっと続けていてね」「むくどり公園やむくどりホームのような所をたくさん作ってほしい。近い所にあったらいいな」等々、むくどりホームの存続と、新たに他地域につくられることが望まれています。

このような要望を実現させることは、容易なことではありませんが、当会では、ニュースレター、記念誌、ガイドブック、ビデオ、むくどりホームの小さなあしあと等の発行を通して、市民や行政の方々にも私たちなりの発信を続けています。

いつか、何かが動き出す時が来るかもしれないと期待しつつ、「冬でも遊べるバリアフリー公園と、その横のふれあいの拠点では、赤ちゃんからお年寄りまで、障害のある人もない人も共に交流し、よりよい人間関係を築く活動を展開することができ、虐待や育児放棄の予防になる可能性がある」と確信します。

おわりに

今も尚、目的達成には程遠く、失敗だらけですが、活動日に出会う人と人とのつながりがどんなに素晴らしく、楽しいものであるかを、毎回体験しています。お互いに尊敬し合うことの小さな積み重ねが、よりよいノーマライゼーション社会を築くための“ひとしずく”となることを期待しています。

(しばかわあきこ むくどりホーム・ふれあいの会代表)