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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年4月号

精神障害者自立生活アシスタントの取り組みから

安増栄恵

横浜市精神障害者自立生活アシスタント派遣事業の開始から2年余りが経過した。地域生活継続を支える当事業に携わる立場から、事業の概要・特徴と支援を通して思うことを伝えたい。

当事業は単身生活を送る(または始めようとする)人に対し訪問、同行などの支援を行う。24時間365日の支援体制を敷き「安心して自分らしい暮らしを送る」ことを目標としている。既存のサービスでは行き届かなかった、きめ細やかな地域生活支援である。

当事業は生活訓練施設または生活支援センターに委託されており、1人以上がアシスタント事業専従、2人目以降は兼任や非常勤となっている。利用者数は1事業所あたりおおむね25人とされている。当事業所における利用理由を大別してみると、「同居家族の高齢化、または退院やグループホーム退所による自立生活準備のため」「ライフイベント(転居、親の死亡など)のため」「社会との接点がない(いわゆるどこにもつながっていない)」などであった。

またこの事業には二つの特徴がある。一つ目は「マンツーマンのオーダーメード支援」である。施設のルールや利用時間といった支援者側の都合を優先させることなく、利用者のペースに合わせて個々のニーズに対応することができる。支援者側も、訪問専門のソーシャルワークは利用者主体の支援をしている実感を持ちやすい。良いことづくめであるが、「マンツーマンでオーダーメード」の使用法を誤ったり、過剰になると自立を妨げるという危険がある。そこで二つ目が「必要な時・必要な期間・必要な量・必要な種類の支援」である。たとえば「退院後の生活安定のサポート」の場合、アパート設定、住所変更、金銭管理、スーパーマーケットでの買い物の仕方など、支援の期間・頻度はどれくらいか、また場面によって見守りか、介入・助言か、精神的支援かなどの判断が求められる。

これらの判断を導き出すのは本人との言語的・非言語的対話であると強く感じる。併せて、その人を理解したいと思い続けること、その人の生活の流儀を知り、尊敬の念を持てることが支援の質を高めるのではないかと感じる。また訪問は究極のプライバシー空間に入ることでもあるが、当然ながら、生活は十人十色で多様な価値観がそこにはある。これまで多くの精神障害者は画一的な処遇を強いられたり、「枠にはまらない人」と言われ過ぎてきた。個々の価値観の尊重とその人らしい生活を考える場は生活空間にあることを、地域生活支援を通して実感する。

(あそさかえ (財)横浜市総合保健医療財団横浜市総合保健医療センター)