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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年4月号

主語をI(私)で語る退院支援…

関孝之

長野県は平成19年度から全県4エリア(北信、東信、中信、南信)に精神障害者退院支援コーディネーターを配置した。また、県立の知的障害者施設の地域移行を積極的に進めるのを機に、『相談・暮らしの場・日中活動の場』の3点セットを地域生活支援の具体的な施策にして打ち出した。特に県内10圏域に三障害統合の『障害者総合支援センター』を設置したことは、障害のある人の地域生活移行・地域生活支援の充実に大きな役割を果たしている。また、グループホームの数も飛躍的に伸びた。

私たちコーディネーターは、自分の居住する圏域の支援センターに机を置き、担当のエリア内の病院、福祉事業所、行政等を飛び回っている。コーディネーターに求められている使命は、以下の2つであると理解している。

1.退院可能な方のケアマネジメントの手法による個別な退院支援

2.それらの支援を通じて、ネットワークの構築や、自立支援協議会に参加しての資源開発(体制整備)

紙面の関係上1について触れたい。ケアマネジメントにおいて最も重要なのが、『本人の想い』をどうくみ取り、支援を組み立てていくか、であるはず。しかし、たとえばケア会議においては異種の立場の人たちがそれぞれに支援者目線、あるいは専門家目線で語るため、いつの間にか支援者による『決めつけ、思いこみ』が前面に出て、問題点の指摘、そして支援の押しつけになることが多々ある。またいつの間にか本人不在となっていたりもする。前述の弱点を踏まえ、最近『ストレングスモデル』とか、『パーソン・センタード』など、本人のストレングスに着目したケアマネジメントや、支援の考え方が提案されつつある。

私たちコーディネーターは駒澤大学の佐藤光生氏の提唱する『ミスポジションモデルによるケアマネジメント』の研修を丁寧に受けることができた。このモデルもまさに、ストレングスモデルであり、パーソン・センタードの考え方である。これらの横文字を日本語に言い換えてみると、要は『主語をI(私)で語るケアマネジメント(支援)』ということであると思っている。困難と思われる事例を主語を私にして書き替えてみると、違う風景が見え、何らかの支援の糸口が見えてくる。実は困難なのは支援者であり、ご本人は別な次元で困っていたり、不満であったり…。私たちはそこに寄り添うものだと思う。『主語は私…』

(せきたかゆき 長野県精神障害者退院支援コーディネーター)