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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年4月号

1000字提言

「社会的雇用(保護雇用)」の法制度化へ向けて、箕面市とともに動き出しました

栗原久

障害者事業団は、実に欲張りな組織で、前回書かせてもらったように、作業所の販路拡大のサポートもしている一方で、就労移行支援事業や就業・生活支援センターも運営し一般就労支援も行っている。

しかし、もともとはというと、一般企業での雇用が困難な障害者の働く場づくりが原点だった。

平成2年(1990年)に事業団が誕生するまでには、5年の歳月がかかったが、そこで議論されたことは「ベストは一般就労だけど、重度障害者にはハードルが高すぎるから、まずは自分たちで働く場を創り出そう」ということだった。

「一般就労か福祉的就労かの二者択一からの脱却」が、事業団創立以来のポリシーであり、両者の谷間から生まれたこの形態を、欧州の保護雇用になぞらえて社会的雇用と呼んでいる。

事業団では現在20人の障害者を職員として雇用し、公園花壇管理やリサイクルセンターでのカン・ビン選別、喫茶店などに従事してもらっている。

また、箕面市にはほかに、豊能障害者労働センター、パンハウス、つながり工房ふるる、ぐりーん&ぐりーんという4か所の社会的雇用の場があり、65人の障害者が働いている。

これら社会的雇用の場では、自ら収益を上げるべく事業展開をしているが、それだけでは障害者への最低賃金保障はできず、箕面市が事業団を通じて賃金補填を含めた公的補助を行っている。「欧州の保護雇用になぞらえて」と書いたのは、まさにこの賃金補填の部分が、共通するからだ。

しかし、日本では、障害者自立支援法でもそれ以前の旧法でも、公的補助は障害者の手に直接乗ることには使えない。そこを箕面市単独で頑張ってきたわけだが、今回、国において「障がい者制度改革推進会議」が開催されることになったのを機に、この社会的雇用を国の制度にしていただきたいと箕面市と一緒に動きを始めた。

また、箕面市は、同様の制度を持っている滋賀県とも連携を進めつつある。なお、社会的雇用の場は、単に重度障害者を雇用するだけでなく、障害者に合った職種・作業種を開拓し、一般企業における「(障害者権利条約の)合理的配慮」のモデルを作り出す役割も担えると考える。

自分が事業団に入った20年前は、今回のような動きは夢にも想像できなかったが、地道な実践をベースに、より広範な皆さんに理解をいただけるよう、説得力ある理論化を試みていきたい。

詳細は箕面市役所のホームページの「報道資料(平成22年3月4日)」や、倉田哲郎市長のブログ「35歳の日誌(同1月25日)」をご参照いただきたい。

(くりはらひさし (財)箕面市障害者事業団常務理事兼事務局長)