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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年7月号

スポーツを通じた障害者支援の取り組み

近藤奈美

クリック募金による社会貢献

ジャパンエナジー(現・JX日鉱日石エネルギー株式会社)を知らなくても、JOMOの障害者スポーツ応援クリック募金はご存知という方は多いのではないだろうか。

クリック募金とは、インターネット時代に新しく登場した企業の社会貢献の仕組みである。当社は、この仕組みを利用して、2004年から障害者スポーツ支援を行っており、現在は、「スペシャルオリンピックス日本クリック募金」を実施している。寄付金は、今年11月に開催されるスペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・大阪の運営費と、来年7月に開かれる『スペシャルオリンピックス夏季世界大会・アテネ』に参加する日本代表アスリートの派遣費用などに活用される。

クリック募金を含めた社会貢献による障害者支援の取り組みについては、後で詳しく述べることとし、事業面での取り組みを二つ紹介する。企業として当たり前のことではあるが、本業での障害者への支援は、とても大切なことと考えており、あえて書かせていただいた。

当社の社会貢献事業

当社では、2009年3月末現在、障害をもつ社員が33人(雇用率1.91%)働いている。製油所での交替勤務や危険物である石油製品を取り扱う職場が多く、難しい面もあるが、今後も、障害をもつ社員にとって働きやすい職場環境づくりに取り組み、障害をもつ方々を積極的に採用することにより、さらなる雇用率の向上に努めていきたいと考えている。

また、当社では、お客様に期待以上のサービスやおもてなしを提供するために、お客様の目線に立った「気づき」を大切にしている。障害のある方の不自由さを本当の意味で理解することはできないかもしれないが、分かろうとする(「気づく」)ことが必要だと考えている。

サービスステーションを運営している特約店とともに、障害をもつ運転者や同乗者にも安心してご利用いただけるよう、ユニバーサルデザインを取り入れた店づくりに取り組んでいる。

たとえば、入口の段差にスロープを付け、ドアを自動または引き戸に変える。トイレを広く洋式にする、手すりを付けるなど、車いすの方でもご利用いただきやすいトイレのあるサービスステーションは、全国に約50店舗ある。

価格表示看板には、バリアフリーカラーである黄色の発光ダイオードを採用している。

このほか、当社のCSRの取り組みを紹介する報告書「CSRレポート2009」も、配色やグラフの描き方などで色弱の方にも配慮して制作している。

一人ひとりがそれぞれの立場でできることを考え、実行することが、大きな力につながる。こうした考えのもと、当社では、社員や一般の方が参加できる社会貢献プログラムで障害者支援を行っている。

盲導犬育成支援として、各地の事業所で募金を行っており、2003年からは、社員や家族が参加して育成施設の清掃やイベントの手伝いなども行っている。

日本車椅子バスケットボール連盟が主催する国内大会に協賛するとともに、社員有志が大会運営にボランティアとして毎年参加している。

障害者スポーツ団体を支援

冒頭で触れたクリック募金は、ホームページ上のボタンをクリックしていただくと、その件数に応じて、当社が障害者スポーツ団体に寄付金を届けるという仕組みである。

障害者スポーツの団体は、世界大会に選手を派遣する資金を得ることができる。クリックする方は、お金をかけずに、障害者スポーツを応援できる。当社にとっては、社会貢献活動に取り組んでいることをたくさんの方に知っていただくことができる。まさに、「いいこと」づくしの仕組みといえる。

なお、クリック募金を運営している株式会社ディ・エフ・エフでは、6月現在で12社が、環境・福祉・国際協力など、さまざまな団体を支援している。その中で、障害者スポーツの支援をしているのは、当社だけである。

当社がこの取り組みを始めたのは、2004年。4年に一度のスポーツの祭典、アテネでオリンピックが開催された年である。当社の女子バスケットボールチームからも日本代表に8人が選ばれ、社内も盛り上がっていた。同じアテネで開催される障害者スポーツの世界大会(パラリンピック)に出場する日本代表選手を支援するために、サービスステーションに募金箱を置けないかと、ある団体から問い合わせを受けたことがきっかけである。

同じように日本を代表しているにもかかわらず、健常者と障害者とでは、国の支援の規模が全く違うとのこと。外国選手と伍して戦うためにも海外遠征に出たいが、そのためには、伴走者や車いすの搬送にも費用がかかるそうである。そういった費用は、選手の自己負担となることが多く、なかには経済的な理由で断念せざるを得ないケースもあるという。

そこで、市民から寄付を募って応援したいということだった。世界で活躍する障害者スポーツの選手たちがこのような課題を抱えていることは、当時も今も、あまり知られていない。金銭的な支援だけでなく、そういった現状を広く知ってもらうためにも、当社として何か協力できないか。検討した結果、募金箱の設置は運営上難しいが、クリック募金で支援できることになった。

クリック募金は、単に寄付をするだけでなく、多くの方に活動の必要性を理解し、応援していただくために、効果的な仕組みだといえる。

毎日平均1万数千件のクリック数

2004年からこれまでに一度でもクリックしたことのある方は、155万人に上る。一人一日1クリックという制限はあるが、平均して毎日1万数千件のクリックをしていただいている。当社だけでも、2004年からの累計で、2,800万クリックを超える。1クリックを1円として、当社が皆さんの代わりにスポーツ団体に寄付をしている。

ちなみに、ディ・エフ・エフが運営するクリック募金全体の累計では、2億7千万クリック以上というから、小さな積み上げが力になることが分かる。

個人の特定はできないが、同じ方が月に何回クリックしたかが把握できる仕組みになっている。データを見ると、ほぼ毎日欠かさずクリックしてくれる方が、3,000人近くいることが分かる。こうした積み重ねが、寄付を受ける団体や選手たちにも目に見える形で行えるのがクリック募金の特長である。選手や関係者の方たちからも、「多くの方から応援していただき、とても励まされる」との言葉をいただいている。

クリック募金者の声

クリックしている方たちも、アンケートや掲示板に声を寄せてくださっているので、いくつかご紹介したい。

小学生の女の子からは、お小遣いが少ない自分たちでも、毎日協力できることがうれしい。教室の後ろの黒板に案内を貼り出して友達にも協力を呼びかけたというメッセージをもらった。病気で長く入院している方は、自分でもだれかの役に立つことができてうれしいと書いてくださった。

お子さんがスペシャルオリンピックスのアスリートという方は、インターネットを立ち上げると一番に表示される画面に設定し、毎日欠かさずクリックしてくださっているそうである。

今年の3月に、バンクーバーで日本選手の皆さんが見せてくれた活躍ぶりは、日本中に元気を与えてくれた。また11月に大阪で開催されるスペシャルオリンピックスのナショナルゲームでは、アスリートたちがたくさんの笑顔をプレゼントしてくれると思う。

当社は、クリック募金の活動を通じて、これからも選手たちにエールを送り続けたいと考えている。

(こんどうなみ ジャパンエナジー株式会社(現・JX日鉱日石エネルギー株式会社)CSR推進部)