音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年7月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●寝るのが楽しみ―布団の重みを軽減、他●

提案者:金沢正裕 イラスト:はんだみちこ

金沢正裕(かなざわまさひろ)さん

ボクは小学生の時から足腰が弱く中学生の時に進行性筋萎縮症と診断された。20歳まで何とか歩いたものの以後車いす生活となり、はや50年近くになる。不自由なりにも希望を持って積極的に進めば長生きできそうドス。京都市在住。


寝るのが楽しみ―布団の重みを軽減

障害の重度化から布団が重くて寝苦しく、ヘルパーさんと知恵を出し合い、離被架(りひか)(患部に直接布団などがかからないようにする道具)を思い出した。しかし上下左右とも狭いので、5センチほどの補助足を6か所に付けて高く広くした。それによって隙間ができたので離被架の中では薄い毛布をかけ、冬は電気シーツを入れている。その後、腕力・握力の低下が進み、ラジカセのリモコンや電気シーツの強弱調整スイッチも棒が邪魔で届かなくなった。そこで利き腕の右側の真ん中の棒だけ外して手の出し入れを楽にした。ラジオのダイヤルや音量、またカセットテープ、CD、MDの選択もできるようになりありがたい。昼間や就寝前に好きな音楽や寄席番組、また日曜の朝の宗教番組や講演も録音しておけば一晩中でも楽しめる。特にMDはカセットテープと違い、裏返すこともなく次番組に飛ばすことも簡単で、しかも5時間も聴ける。寝るのが楽しみになった。


喉の渇きを防ぐ

筋ジスの難病も歳を取ると同時に内臓にも衰えが出てくる。自分で寝返りもできなくなって、深夜帯に寝返りヘルパーさんのお世話になるようになった。また生きがい、楽しみ、ストレス解消のために晩酌をするせいかいびきをかくようになり、SAS(睡眠時無呼吸症候群)に発展してCPAP(鼻から空気を送るマスク)を使用するようになった。

そのせいか、または電気シーツのせいか、眠っている途中で、口の中がすごく渇き、夜中に何度もお茶を飲むようになった。左向きに寝ている場合は利き腕の右手が使えるが、逆向きは寝返りヘルパーさんを待つしかない。しかし、2時間以上の我慢は辛い。

そこで、試行錯誤しながら福祉用具の茶入器からのビニールホースを長く伸ばし、30センチほどの細い棒の先にそのホースを貼り付けて、布団の中の手からその棒でホース先を口に入れてお茶を吸い込むことに成功した。ちょっとしたアイデアや工夫で喉を渇かすことがなくなった。


電動車いすのマイテーブル

ボクは2台の電動車いすを使い分けている。一つは座席が上下作動するので家庭用とし、足置き台を外して狭い部屋も小回りが利くようにした。もう一台は外出用で、8cmの段差上がりを付けている。そのため、電車や道路の段差も普通以上にクリアできている。

近くに地下鉄の駅が開通したこともあって、物好きにも60歳にして通信制の公立高校に挑戦した。試験はなく費用も安く、週に一度の夜間と月に一度の日曜登校だけで3年間で卒業できた。4年の定時制より楽だ。授業は、通常の机では電動車いすが入らないので別の机を用意してくれたが、備え付けのLL教室などはダメで、また体育の授業は見学なので授業風景をレポートにまとめなければならない。

そこで、業者に相談してテーブルを付けてもらった。市販のものとは違い簡素なものだが、取り外しができ、普段は左横に収納できる。また町の食堂やレストランでは、その都度ヘルパーさんに取り付けてもらい、テーブルの上で食べて重宝している。

筋ジスは日増しに腕力も弱り、病院で待つ時もこのテーブルがないと読書もメールもできなくなった。このテーブルのおかげで外出も楽しくなった。