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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年8月号

1000字提言

「社会」がアタマにつく言葉の違い、ちょっと整理してみました。

栗原久

社会的雇用、社会的事業所、社会支援雇用、社会的企業、この4つの違い分かりますか? 実は、これらの言葉、国の障がい者制度改革推進会議等で最近、頻繁に登場するのですが、意味が異なります。そこで、この場を借りて、少し整理してみました。

一般就労と福祉的就労の谷間から生まれた「社会的雇用」

本誌4月号でも紹介したのが、この社会的雇用。箕面市では昭和61年から、自治体版保護雇用として制度化しています。公的な補助金を障害者の賃金補てんに充当できるのが、就労継続支援A型・B型との大きな違いです。現在、箕面市では、4か所の社会的雇用の事業所で67人の障害者が働いています。

二つの意味を持つ「社会的事業所」

箕面市と似た制度に滋賀県の社会的事業所制度があり、やはり一般企業での就職が困難とされる障害者が働いています。一方、同じ社会的事業所という呼称を使っていますが、共同連さんが提唱されるものは、もっと幅広い人を対象にしています。障害者だけでなく、ホームレスや引きこもりの若者、シングルマザーなど社会的に排除されている人たちも含め、協働労働という競争的でない働き方をめざそうというものです。賃金補てんよりも、仕事の受注に力点が置かれていると理解しています。

福祉的就労のあり方を問い直す「社会支援雇用」

こちらは、セルプ協さんやきょうされんさんが、主張されています。障がい者制度改革推進会議から推進本部に提出された第一次意見には「福祉的就労への労働法規の適用の在り方」について、平成23年内に政府として答えを出すことが明記されています。社会支援雇用も、工賃が著しく低い福祉的就労への労働法規の適用や賃金補てんをベースに考え方が整理されています。

さらに幅広い概念の「社会的企業」

一方、社会的企業は、一般にビジネス的手法を用いて社会問題を解決する企業と理解されていますが、それだけではなく、社会的な排除をなくすため、さまざまな人を包摂した働き方を実践しているものもあります。イタリアの社会的協同組合B型はその典型例で、随意契約や総合評価制度などでたくさんの仕事を請け負っています。

さて、それぞれの違い、分かりましたでしょうか?私たちとしては、一般企業でも福祉的就労でもない新たな第3の道を制度化していくために、福祉的就労のあり方をとらえ直し、日本でも賃金補てんを含むシステムを整備していくことが必要と考えています。そのために、幅広く他の自治体や障害者団体の皆さんと連携・協力をしていきたいと願っています。

(くりはらひさし (財)箕面市障害者事業団常務理事兼事務局長)