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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年11月号

大阪・城東区地域自立支援協議会の防災の取り組み

八幡隆司

自立支援法にとらわれない取り組みを目指して

現在、障害者自立支援法の制定を受け、各地に地域自立支援協議会が設置されています。大阪市の場合、障害者、高齢者、児童などの福祉施策に市民の意見を反映するため、各区に地域支援調整チームがもともと設けられており、城東区では、その障害者支援専門部会(以下、専門部会とする)が元となり、地域自立支援協議会が発足しました。

城東区で障害者等の防災の取り組みが始まったのは2007年からで、国が大規模災害時における要援護者の避難支援ガイドラインを作成したことを受け、専門部会で取り組むことにしました。2007年度は、市内で安否確認などを行うために、要援護者支援名簿を作成している取り組みを見学に行ったり、障害者団体だけでなく、地域の防災リーダーや民生委員なども対象とした講演会を開催しました。

2008年度は、4月に城東区地域自立支援協議会が立ち上がり、相談部会、地域部会の2つの部会を基本とし、防災については地域部会が引き継ぐことにしました(現在、当事者部会準備会を設置し、障害当事者部会の設立を模索中)。

地域部会を自立支援協議会に立ち上げたのは、防災の取り組みだけでなく、もともと専門部会が地域との関わりを積極的に進めていこうと、年に一度、「ピアフェスタ」という区内の障害者団体が集まるイベントや障害者総合相談会を開催してきたことと、自立支援法によるサービス提供事業者だけでなく、幅広い団体がすでに定期的に集まって会議をしていたことがあり、自立支援法にとらわれない取り組みを地域で展開していきたいという狙いがあったからです。

地域との関わりを中心に

防災については、専門部会の取り組み以前に、区内の「のんきもの」という小規模障害者作業所が、周辺の自治会と一緒に避難訓練や消火器訓練などに取り組んでいました。

夜間に作業所の防犯ベルが誤作動で鳴り、近所で大騒ぎになりましたが、町内会の人が作業所の人に連絡をしてくれ、逆に何事もなくよかったと、温かい言葉をかけてくれたということもありました。今では防災活動に参加してくれた住民が、これをきっかけに印刷などの仕事を作業所に依頼に来られるようになったそうです。

そのようなこともあり、地域部会の2008年度の取り組みは、自治会と連携した防災活動を展開しようということになりました。2008年6月に、東中浜連合町会が主催する防災訓練に自立支援協議会が参加し、2009年2月には、自立支援協議会が主催する防災訓練に地元連合町会の人たちや中学生を招く取り組みを行いました。

2008年6月の取り組みでは、自治会の人たちに近隣作業所に安否確認に来てもらうと同時に、一緒に避難所まで行くことにしていましたが、大雨のためにグラウンドが使えなくなり、グラウンドで予定していたポンプ訓練などを中止にしようとしたのが、「防災訓練中止」の誤報となり、地域の人が作業所に来られないというハプニングが起こってしまいました。しかし、体育館を中心に施設点検などを行い、地域の人たちと一緒に半日を過ごすことができました。また、別の日に図上訓練も行いました。

2009年2月の取り組みでは、大規模災害が発生したときに、障害者が指定避難所で避難する場合を想定し、指定避難所となる学校施設の点検や、避難時にどうすればよいかということについて、地域の人たちと一緒にグループワーク形式で話し合いをしました。また中学生には、視覚障害者や車いす障害者の誘導、聴覚障害者とのコミュニケーションの取り方などの講習を受けてもらいました。

また防災だけでなく、相談業務についても地域の民生委員さんなどと連携した取り組みを進めることにしました。

城東区地域自立支援協議会 地域部会の取り組み

2008年1月 講演会
2008年4月 地域自立支援協議会発足
2008年6月 東中浜連合町会防災訓練
2008年11月 福祉避難所調査
2009年2月 成育小学校防災訓練
2009年9月 福祉避難所調査
2010年2月 区民ホール防災訓練

福祉避難所についての取り組み

2008年6月に「福祉避難所の設置・運営に関するガイドライン」が出されたことで、2008年度の後半には、福祉避難所についても取り組むことを決めました。

区内で福祉避難所として協力してくれそうな障害者・高齢者福祉施設に対して、福祉避難所の説明を行うとともに、福祉避難所になっていただけるかどうか、施設側の意向を聞くことにしました。区内11の高齢者・障害者施設において、自立支援協議会で聞き取り調査を行いました。災害時の協力については、ほとんどの施設で賛同の意向は得られましたが、福祉避難所となって災害時の要援護者を受け入れることについて、協力が可能と回答したのは1か所のみでした。受け入れ困難の理由としては、「施設の職員が被災していることを考えると、利用者への対応も困難となり、利用者以外の住民の対応は困難」「施設に空きスペースがない」などでした。

福祉避難所イメージ図
福祉避難所イメージ図拡大図・テキスト

福祉避難所の聞き取り調査が終わったころ、国の緊急雇用創出金による事業募集がありました。区の福祉担当者が「福祉避難所計画づくりの調査」を申請したところ大阪市が認められ、2009年度の自立支援協議会の事業として協力をすることを決めました。

調査そのものは、障害者雇用などの実務も発生するため、特定非営利活動法人ゆめ風基金が受託し、具体的な調査については、両者が共同して行う形をとりました。

事業の内容は、失業率増加に対する国の対策として、失業者への雇用創出を行うことを基本とし、福祉避難所計画策定に向けて、次のような課題が与えられました。

  1. 福祉避難所候補施設の調査
  2. 前記と並行して福祉事業所に対する啓発
  3. 障害当事者参加による避難所実地体験調査
  4. 要援護者避難所計画モデルの策定

実務的には、2009年9月から10月にかけて、福祉避難所候補施設の調査および福祉事業所に対する啓発を行いました。2010年1月には、要援護者防災に関する講演会、2010年2月には、障害当事者参加による避難所実地体験調査、をそれぞれ実施しました。

また、障害当事者および関係者から意見を聞くため、自立支援協議会では、2009年11月から12月にかけてアンケート調査を行いました。

今後はNPO法人化で取り組みを深める

アンケート調査に当たっては、自立支援協議会だけでなく職業安定所などを通じた人員募集も行うため、実際には、5割程度の人が自立支援協議会に関わる人となりました。

調査には、民生委員や老人憩いの家を管理する福祉推進員への聞き取りも含まれており、障害者と健常者がペアになって、小学校を単位として行われました。

調査にあたった障害者の人たちから「ふだん、歩きやすい道ばかり歩いていたけど、地域の中にこんなに歩きにくい道があるとは思わなかった」「民生委員さんなどとの聞き取りで、障害者のことは分からないと言われて、地域との関係づくりが大切だと感じた」という声が上がりました。障害者100人ほどのアンケート調査でも、「近所でよく挨拶をする人がいる」と回答した障害者は2割と少数で、障害者と地域の日常の関係が弱いことが両者に伝わった調査となりました。

避難所実地体験調査では、各指定避難所をバックアップするための体制づくりも含めて話し合うとともに拠点施設の設営訓練を行いました。

アンケート調査を終えた2011年度も自立支援協議会では、防災とともに相談業務も含めて地域のつながりをつくることをテーマにしています。

また、地域での独自の取り組みをさらに進めるため、現在、構成団体で新たなNPO法人の設立を準備しています。

(やはたたかし 城東区地域自立支援協議会地域部会)