音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年1月号

リレー推進会議レポート8

第22回と第23回の報告

中西由起子

はじめに

第21回、22回は、第18回から始まった障害者基本法の改正が事務局からの「条文イメージ素案」という形でさらに深められていった。特に第22回では基本法の総則と推進体制を、第23回では各則部分の特に国際協力、選挙、公共施設のバリアフリー化を取り扱った。

第22回(10月27日)の議論

総則の(1)目的、(2)定義、(3)基本的概念、(4)差別の禁止、(5)国民の理解、(6)国際的協調、(7)国及び地方公共団体の責務、(8)国民の責務、(9)障害者週間、(10)施策の基本方針、(11)障害者基本計画等、(12)その他(地域モニタリング機関等)に関する構成員からの意見がでたのち、議論に移った。

特に、障害の定義に関しては活発な議論が行われた。ICF(国際生活機能分類)の機能障害、活動障害、参加障害という表現を使うのか、疾患は含まれるのか、包括的定義とするのか等の意見が出た。既存の法律、差別禁止法も勘案しながらさらに議論を深めることとなる。その他、総則に、合理的配慮の定義、基本理念としての地域で生活する権利、障害のある女性や子どもに関する条項の挿入等の意見があった。

障害者施策の推進体制として、内閣府に置かれることになる障害者政策委員会についても議論がなされた。中央障害者施策推進協議会に代わる委員会であり、協議会と同様に調査・審議、総理大臣などへの勧告を行うほか、資料の提出要求の権限も併せ持ち、施策の実施状況の監視(モニタリング)も行う、30人の委員から成る組織である。調査を行う際には、直接事例収集をするのではなく、行政機関などからの報告に基づくものとなる。委員として自治体の代表者の参加や、障害当事者を過半数にすべきとの意見もあった。

同様に、監視機能を併せ持つ地方障害者政策委員会は都道府県に設置され、市町村においては置くことができるとされた。地方障害者政策委員会に関しては、地域主権の考え方との整合性が論じられた一方、市町村においても設置を義務付け、もっと強い権限をもつ組織を求める意見もあった。

議論の最後は、障害者基本法の各則として取り上げるべき分野に関してであった。今までに、ユニバーサルデザイン、介助、就労、医療または健康、リハビリテーションとハビリテーション、障害の原因となる疾病の予防、教育、障害児支援、虐待防止、住宅確保・建物・交通のバリアフリー、情報とコミュニケーション、文化とスポーツ、政治参加、司法手続、所得保障、国際協力の17の分野が取り上げられた。委員からは、家庭生活、災害時対策、障害のある女性、福祉機器などを加えるべきとの意見が出た。さらに、差別禁止部会の発足と総合福祉部会、障害表記作業チームの途中経過に関する報告があった。差別禁止部会は、弁護士等を含む15人の委員と2人のオブザーバー、3人の専門協力委員から成り、15人のうち、7人は当事者と関係者が占める。教育など委員が専門としない分野に関してはヒアリングを重ね、差別を明確化していくことになる。

第23回(11月1日)の議論

障害者基本法改正の各則部分のうち、国際協力の規定ぶりイメージから議論は始まった。従来の「条文イメージ」は政府部内の調整を得たものではないので誤解を招かないために、「規定ぶりイメージ」という表現に代わっている。

国際協力が項目として設けられたことは歓迎されながらも、その名称として、男女共同参画社会基本法に摸して「国際的協調」が使われていることに反対意見が集中した。相互協力が強調され、国際協力の意味が表現されていないこと、外国政府、国際機関だけではなく障害当事者団体などのNGOとの連携、日本に暮らす外国人へのサービスへの影響、情報のみでなく人的交流の重要性が指摘された。

続く選挙等の項目は、公職選挙法とも絡む難しい課題とされた。投票に限定せず、被選挙権等を含めた政治参加の権利とする、成年後見との関係による被選挙権のはく奪の問題を解決すべきなどの意見が出された。

公共的施設のバリアフリー化に関しては、地方でのバリアフリー化の必要性も強調された。移動の権利の明確化、合理的配慮やユニバーサルデザインの挿入に関し議論された。

次に、就労、医療、障害児の3つの合同作業チームから進捗報告があった。雇用の場での現状の改善ならびに権利性の保障の観点から、福祉的就労、賃金補填(てん)、生活介護など就労合同作業チームは多くの議題を抱え、短時間での作業は非常に厳しいとのことであった。

医療合同作業チームは10月~12月に、特に精神医療を中心に検討する前期グループと、1月~3月に地域生活を支える医療全般にわたり検討する後期グループの2つに分かれる。前者は、社会的入院や保護者制度の解消、精神科病院への入院や施設への入所での適正手続きなどを論じる。

障害児支援合同作業チームは、一人の子どもとして尊重されるために保障するべき内容、最善の利益を判断するにあたって考慮すべき項目、意見表明権行使を支援するのに必要な事項、障害のある児童および家族に対し提供する包括的な情報やサービスおよび支援の内容を考えていきたいとしていた。

最後に、差別禁止部会の開催要綱の承認があり、「わかりやすい第一次意見書」作成の進捗報告があった。

終わりに

第22回では、短時間ながら岡崎担当大臣や末松副大臣の出席もあった。構成員たちが自分たちのニーズを直接語るのに、耳を傾けてもらうことは重要であるので、ぜひとも今後も折に触れて出席してほしい。

(なかにしゆきこ アジア・ディスアビリティ・インスティテート)