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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年7月号

被災状況・被災者支援
三陸海岸沿岸市町村の被害と支援活動

久保田博

未曾有の東北地方太平洋沖地震から3か月が過ぎたのに被災地の復旧は遅々として進まず、街の中にはガレキが放置され、ライフラインの整備も不十分である。仮設住宅は交通機関の不便な山間部や道路未整備の地区などに建てられ、障害者には新たな支援の創造が求められている。

3月11日(金)午後2時46分の大地震と想像を超えた大津波により、景勝地、三陸海岸の沿岸市町村の観光地や街並みは見るも無残な状況に一変した。

このたびの大地震では、被害が広範囲で沿岸市町村のすべてが被災地となったことや、複数の行政機関が津波被害により機能が一時マヒし、ライフラインが甚大な被害を受けたこと。そして、空前絶後の大津波により、多くの方々が大事な家族、家屋、仕事等を丸ごと失い、地域コミュニティーが崩壊するなど、その被害の酷(むご)さに今も先が見えない不安に駆られている。

岩手県では、県内人口の0.58%、7,800人前後が死亡、行方不明と公表され、特に大槌町は、町内人口の11.15%、マスコミでよく取り上げられる陸前高田市は9.48%が死亡、行方不明となっている。それに加え、被災市町村の平地部がほとんど津波の被害を受けたことで、早急にやらねばならない生活再建や産業復興に関し大きな足枷(あしかせ)となり、私たちに重く圧し掛かっている。

障害施設関係では、死亡、行方不明としてカウントされている人的被害は、施設利用の障害者18人、職員8人の計26人となっている。この数字には、在宅障害者で福祉サービスを利用されていない障害者の安否の確認が難しくカウントされていない。また、建物被害は、4月7日の最大余震の被害を含めると65施設(棟)との報告があり、ケアホーム、グループホームも含め15施設(棟)が全壊。半壊、一部損傷では50施設(棟)が被害を受けている。

震災直後には、大津波により利用者や職員が避難のための移動中に浚(さら)われたり、施設全体が津波で流失し施設丸ごと避難所生活を強いられたり、また、施設周辺が地割れを起こし運営が危ぶまれるところなど、語りつくせぬほどの多くの悲惨な被災報告が挙げられている。

特に、山田町の知的障害者支援施設で定員50人のはまなす学園では、津波のため施設は全壊し、被災直後から避難所「県立陸中海岸青少年の家」に避難し、一般の方々と共に厳しい避難生活を送っていた現実があった。

関係者によると、大震災直後は入浴の時間帯であり、職員の指示で一部の利用者は裸のままで車に乗り込み裏山の高台に急ぎ、九死に一生を得たとのことで、津波が来るのを目の当たりにして恐怖を感じたという。この施設は、海岸線近くにあり、地震があった時点で職員の適格な判断により高台に避難したため、全員無事であったが、少しでも躊躇すれば津波にひとのみされていたことが想像できる。

また、陸前高田市では、建築業者からの引き渡しを4日後に控えた新築のグループホームが、建物の基礎部分のみ残して津波で流失してしまった事例。支援のマッチングでは、車いす利用の脊髄損傷者に対し、避難所として割り当てられたのがエレベーターのない市営住宅の2階であったり、暖をとるために廃材を切るチェーンソーがほしいなど、嘘のような本当の話が多く挙げられている。

私が支援活動にあたって感じたことは、津波の脅威、怖さである。人の命、築いてきた財産や仕事のすべてを奪い去ったことである。

私が参加する団体では、震災直後から週2回、救援物資を運びながら、状況把握、ニーズ把握に努め、被災施設や在宅障害者に対し、今、必要としている物資の提供や職員派遣等の支援を行っている。

特に本県の取り組みとして特筆すべきは、障害者等の17団体の情報交換会の場として、週2回プラットホーム会議を開催し、団体の枠を超えて支援を行い、支援の重複を防ぎ、それぞれの支援活動の不足分を補完する役割を担っていることである。

この震災では、「障害者の個人情報の取り扱い」「障害者施設に対する被災直後の物資供給の課題」「障害者の新たな生活拠点をどこに置くか」「障害者の所得補償、失業対策」等の課題が表面化しており、今後の検討課題である。

被災地は、今でも生臭い異臭が漂い、強い風の日にはゴミや埃が舞っている。また、ハエや蚊の大量発生や生活物資の不足が課題となっている。このような状況から被災施設への支援は継続的に、そして長期化が必須である。

被災前の状態に復興再建するには道のりは険しいが「まけるもんか岩手」を合言葉に、関係者のみんなで支え合い、復旧、復興に努めていきたいと考えている。

(くぼたひろし 東日本大震災岩手県社協障がい協・知福協合同支援プロジェクト代表)