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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年7月号

被災状況・被災者支援
「障害児、知的障害・発達障害者関係団体災害対策連絡協議会」による宮城県対策本部立ち上げの支援

田中正博

「被災地において、知的もしくは発達に障害のある方とそのご家族の皆さんが、避難所で過ごせず、自家用車や被災した家で過ごさざるを得ないなど、孤立した状況になっている」という情報が、3月下旬頃、さまざまな立場の方の耳に届くこととなった。これを受けて、3月末に、全日本手をつなぐ育成会(以下、育成会)と日本知的障害福祉協会(以下、知福協)の両団体が中心になり、賛同する全国組織の団体に声をかけ「障害児、知的障害・発達障害者関係団体災害対策連絡協議会」が発足した。現在、中心となった2団体に加えて、次の9団体が加盟している。

加盟団体:全国重症心身障害児(者)を守る会、全国肢体不自由児・者父母の会連合会、全国地域生活支援ネットワーク、日本発達障害ネットワーク(JDDネット)、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会、全国児童発達支援協議会、日本相談支援専門員協会、発達障害福祉連盟、全国社会福祉協議会。

具体的には、「知福協」の会議室で対策本部を定期的に開くこととし、被災被害が甚大だった東北3県の岩手、宮城、福島に置かれる現地対策本部への支援を行うこととなった。

支援体制立ち上げ当初の対応としては、物資支援を行う体制を整えた。加盟傘下の各位に物資支援の協力を仰ぎ、千葉県の施設に支援物資を一度集積し、各県の事情に応じた方法で現地に物資が届くような体制を整えた。

その後、対策本部が立ち上がらない宮城県に立ち上げを支援する担い手が必要だということになり、筆者が宮城県の現地支援対策本部の立ち上げの支援役を担うこととなった。4月7日より4月25日まで滞在し、現地支援対策本部となった仙台市の県立障害者福祉センターの図書室において活動を行った。当初は、週2回、現在は、週1回となった現地で行われている会議に、月に何度か参加し、宮城県本部の支援を行っている。

今回の対策本部の活動は、被災後1か月後を経ての活動であったため、命をつなぐ支援の時期から暮らしを立て直す支援へと切り替わる時期として活動を行った。暮らしに必要な支援を聞き取る「ニーズ発掘」、そして必要とされる支援を次の項目として見立てて、「人材派遣、生活支援、物資・金銭支援、施設運営支援」と班を組み、それぞれに責任者を置いて課題解決に向けて体制を整えた。

現地で最初に支援が機能したのは個人のつながりによる対応だった。筆者の知る限りでは、京都の事業所が、重心施設からのSOSに応えて、翌日の夕方にはガソリンを届けたという驚異的な支援があった。施設への人材派遣については、対策本部が起動する前から動きがあり、知福協と育成会傘下のそれぞれの事業所の支援が必要な状況を見い出して支援体制を整えた。対策本部が立ち上がった時点では、厚労省による職員派遣の枠組みを活用するための状況を把握した。現在も情報共有を図り、事情に応じた派遣調整を行っている。

「ニーズ発掘」においては、まずは携帯電話の番号を載せた対策本部のチラシを配布することで、受け皿を整え、来所や訪問にも対応することを想定した。本格的に動き始めたのは、対策本部が機能し始めた5月の連休以降で、沿岸部の被害の多い状況を把握しつつ、電話対応で確認が取れるところは連絡をし、被災が激しく通信手段が途切れたと予測される所は、直接出向いて状況確認をした。さらには現地対策本部で、宮城県庁をはじめとする関係機関との連絡を取りながら、図1に示すような関連機関との関係を結ぶ見通しを持ちながら、事態を把握する体制を整えた。

図1
図1拡大図・テキスト

なかでも一番効果があったのは、相談支援体制の活用である。日本相談支援専門員協会が中心になり、被災地で活動してきた相談員と各県から派遣された相談員でチームを作り支援体制を整えた。また、当事者団体である育成会は、市町村の会の活動を軸に被災見舞いという形式で被災各地のキーマンを訪ねて状況を把握した。父母の会、守る会も同様に会員の安否を確認し情報共有を図った。

児童に対しては、全国児童発達支援協議会はデイサービスの事情などを確認した。これは宮城だけの対応ではなく、岩手から宮城を経て福島までを把握する対応であった。JDDネットも同様の対応をし、自閉症協会などに声をかけ、保護者との懇談会を開き、現状の把握を行い、今後の対応の手がかりとした。

「障害児、知的障害・発達障害者関係団体災害対策連絡協議会」の対応は、迅速とは言えない立ち上がりだったが設置の意義はあったと思う。そして、図2に掲げた課題解決に向けて対応できた部分はあるものの、まだまだ課題は多い。今後に向けて息の長い支援が必要であると感じている。

図2
図2拡大図・テキスト

(たなかまさひろ 全国地域生活支援ネットワーク)