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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年7月号

被災状況・被災者支援
ゆめ風基金―これまでの災害支援を活かして

八幡隆司

阪神大震災の支援活動を活かして

ゆめ風基金は阪神・淡路大震災の時に、被災地の長期支援を主とした目的に設立されました。その時にあってはならないものの、もし今後同じような災害が起きた時には、全国から受けた支援をきちんとお返しすることも目的に入れていました。そんな中、私たちの想像とは裏腹に近年、自然災害が数々発生し、そして、今回のような阪神大震災を超える大きな災害が発生しました。

大震災直後より大阪のネットワーク、東京のネットワークなど阪神大震災でつながった仲間がより一層広がりを見せて、東北関東大震災救援本部がすぐに立ち上がりました。

そして、3月18日には福島の現地支援センター立ち上げを地元団体と行い、宮城では3月31日に、岩手では少し立ち遅れ、4月12日に現地支援センターを立ち上げました。

これまでの災害も、そして今回のような大規模な災害でさえも、避難所にはほとんど障害者がいません。体育館のような避難所には行けないと、自宅にとどまる障害者や親戚宅に身を寄せている障害者が非常に多いのです。さらに東北地方は仙台を除き、施設入所者が非常に多く、普段からヘルパー利用をしながらまちで暮らす障害者が少ないという特徴があります。

そのような中で、「いろんな人とつながりをつけて、しんどい思いをしている障害者を見つけ、個人レベルの支援に重点を置くこと」を方針としました。地域性の違いも支援における大きな要素ということで、地区カルテ、個人支援台帳を準備し、安否確認を進めつつ、物資やヘルパー派遣などの支援を続けてきました。

災害前の問題がより鮮明になる

障害者の場合、災害前に抱えていた問題が災害によってより鮮明になることが多いのです。ヘルパーを利用しないで頑張っていた障害者やその家族が、だれにも存在を知られないで倒れそうになっているのです。日中活動をしているところでも、小さな拠点ほど被害が大きく、つながりが弱いために支援を受けられていないことが多くありました。

過去の災害支援の経験から「大丈夫ですか?は、いけない」と感じていました。安否確認の時に「大丈夫ですか?」と聞いても、「命が大丈夫だった」ということで「大丈夫」と答えてしまう人がほとんどで、「困っていることがない」という意味ではないのです。実際に、障害をもつ子どもとお母さんが親戚の家に身を寄せたものの、その生活が長期になり、親戚からも辛い言葉を受けるようになってノイローゼになって入院した事例がありました。1か月もお風呂に入れていない人がいました。精神障害者でありながら、体育館での避難生活が続いている人がいました。

相手が困っているということを言いやすくすること、またその困っているに応えられるような支援をこちらがすぐに提供できるように、日中だけでなく、寝泊りもできるような「障害者の駆け込み寺」が必要だと思いました。

宮城では、拠点となっている仙台から離れた南の山元町や北の南三陸町、石巻市などは被害が大きく、素早い対応が難しいため、南は山元町に、北は登米市に新たな拠点を作りました。岩手でも拠点の盛岡より沿岸部に近い、遠野市に拠点を作りました。今後はこれらの拠点を基に、被害の大きかった地域へ重点を置いた支援を行う予定です。

今後の支援の方向

被災地の支援活動も6月に入って明らかに変化が起きています。3~4月の緊急な支援活動と違い、今は仮設住宅への入居に伴って、生活を豊かにするための物資や生活支援などに変わってきました。今後は阪神大震災の時の支援活動を参考に、震災後の2年を4期に分けて活動する方針です。

第1期は災害発生後から仮設住宅建設が始まるまでの、緊急な支援活動を行った時期。第2期は仮設住宅建設が始まり、ほとんどの人が入居を終えた時期。第3期は仮設住宅の入居が完了し、震災後1年目を迎えるまでの時期。第4期は震災後1年目を迎えてから2年目を迎えるまでの1年間で、復興住宅へ避難者が移るまでの時期です。

第1期の特徴は避難所に避難している障害者が少ない中で、在宅になっている人も含めて、障害者の安否確認をどのようにして行うか。また出会った障害者家庭に福祉機器、医療機器、生活物資などを届けるとともに、医療機関への送迎サービスや避難所などにヘルパー派遣などを行うもので、緊急支援が必要で、対応のスピードが優先された時期です。

第2期になると仮設住宅の申請手続きや仮設で必要なもの、またグループホームなどに閉じこもっていた人などから、買い物など外出サービスなどのニーズが出てきます。親戚の家に身を寄せていた人も仮設住宅に移ってくるので、この時に新たな障害者の方に出会うこともあります。

8~9月には第3期の活動に移行します。この段階では障害者世帯を探すような安否確認はせず、第1期、第2期で出てきたニーズに応えるとともに、県外のボランティア支援から県内のボランティアにバトンタッチしていくことになります。また、災害時の支援として何が足りなかったのかなどの検証を行い、1年のまとめをしていきます。またイベントをはじめいろいろなプログラムを企画し、さまざまな障害者の交流を深めていきます。

(やはたたかし NPO法人ゆめ風基金理事)