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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年8月号

インタビュー ロンドンパラリンピック・注目の選手、競技サポーター

自転車競技
藤田征樹(ふじたまさき)選手

1985年生まれ。大学生の時、事故で両足膝下切断。2007年から本格的に自転車競技をはじめ、2008年の北京パラリンピックに出場し、銀2、銅1のメダルを獲得。日立建機株式会社勤務。

1.自転車競技をはじめたきっかけは?

大学生の時にトライアスロンを始めました。それが自転車に乗るきっかけです。その後に事故に遭い、足を切断後もトライアスロンをやっていました。障害者の自転車レースがあると知り、力試しに参加したら、そこで声をかけていただいて、本格的に始めることになりました。それが北京の1年前、2007年でした。始めた時はぜんぜん北京を意識していませんでしたね。

2.北京を意識し出したのはいつからですか?

自転車競技は順位によって選手にポイントが付きます。そのポイントを集めて国のランキングが決まり、その順位によって出場の枠数が決まるんです。僕は2007年の8月から国際大会に出場したのですが、ポイントを取ることを目的として大会に参加していました。そういった中で北京を意識する気持ちが出てきたのかなと思います。

3.北京では最初の種目で銀メダルを取りましたね。

最初の種目が1000メートルのタイムトライアルでした。初めてのパラリンピックで初のメダル、日本選手団の中で初めてのメダルでしたが、僕としてはめちゃくちゃ悔しかったですね。

自転車を始めて1年ちょっとでしたが、それまで周りの方にもサポートしてもらい、自分なりに必死でやってきました。チームとしても北京の空に日の丸を掲げるために苦しいトレーニングを重ねてきました。しかし、経験の浅さや未熟さが出て、ベストなレースができなかった。結果的に銀は取れましたが、内容は良くありませんでした。1位の選手にまったく歯が立たなかったわけですし…。後になってメダルを取れてよかったと思ったのですが、その時のレースは今でも反省点として印象に残っています。

4.ロンドンを目指して、今は、どんなことに力を入れていますか。

メンタル面やフィジカルな部分、自転車に乗る技術も大事です。そして僕の場合、クラス分けの変更によって階級が一つ上がり、より厳しいクラスで戦うことになりました。新しいクラスで対等に戦っていける力をつけるために、総合的にレベルを上げていかなくてはならないので全部です(笑)。それから外国勢に比べるとパワーが劣る面があるので、特にスピードやパワーを中心にトレーニングをしていきたいと思っています。

5.普段の練習はどのようにしていますか?

僕はフルタイムで働いています。平日は家に帰ってから練習することが多いですね。ホームトレーナー、エアロバイクのようなものを使ったり、ウエイトトレーニングをやったりしています。後は、ロード練習も行います。土日は外で練習することが多いです。茨城に住んでいるので、競輪の茨城支部の方にもご理解をいただいて取手の競輪場で練習をしたり、この辺りの平坦な場所や山を使って練習をしています。

6.自転車競技の魅力は何ですか?また、見どころはどこですか?

やはり、普段人が歩いたり走ったりするスピードより速く動ける、スピード感と風を切るところです。ロードは坂道があるので、下りは80から90キロくらい出る時もあります。

自転車はスピードが出ると風がものすごく負荷になるんです。追い風はいいけど向かい風は辛いです。自転車競技はだれかの後ろについて走るシーンをよく見ると思うのですが、あれは風の抵抗を受けないように走っているんです。先頭の人が風を受けて、後ろの人は風の抵抗を少なくして走る。それを交替しながら走る。そうやって風の負担を分担しながら走るんです。もちろん前に出ないといけないですし、他の選手がどう走るのか周りも見て、風の使い方や位置取りなど、それが作戦になります。これが他のスポーツにはない自転車競技のおもしろさだと思います。

7.得意な種目は何ですか?今後、力を入れていきたい種目は?

僕はトラックの方が得意ですね。1000メートルのタイムトライアルは、1000メートルを1人ずつ走ってだれが一番早く走れるかを争うものです。3000メートルの個人追い抜きは、ホームストレートとバックストレート側から同時にスタートするものです。半周差を詰めて追い抜けば勝ちです。追い抜かなくても3000メートルを先に走りきった方が勝ちです。

今は出場する枠のポイントを取るために全種目で頑張っています。でも、ロンドンでメダルを取るためには種目を絞っていくことが大事だと思います。北京では3つメダルを取れましたが、ロンドンではそうはいかないだろうと思っています。今は選手としての実力を上げていく時期なので、トータルにトレーニングをしているところですが、来年からは、どれか本命の種目に特化させていかなければならないと思っています。

8.ロンドンパラリンピックでは、どんな走りをしたいですか?

北京では気持ちの弱さが出てベストの走りができませんでした。ロンドンでは、日の丸を掲げるために自分のベストの走りができるようにすることが目標です。

9.8月号の特集は「スポーツを楽しもう」です。読者の方に伝えたいことは?

「義足でも自転車に乗れますか」という質問を受けますが、普段の義足でも自転車に乗れます。膝上と膝下の義足では条件が違うので、一概には言えないのですが、ただ、ぜひやってみてほしいと思っています。最初は転んだりすると思いますが、自転車ってそういうところがありますから…。どうしてもダメな部分は、病院のリハビリの先生とか、自転車のお店で相談してみるといいと思います。自転車を工夫することもできるし、体の使い方で工夫できる部分もあります。自転車に限らず、興味のあることには自分からチャレンジしていってほしいと思います。

(取材:6月25日(株)HiBike(つくば市) 文責・編集部)