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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年8月号

インタビュー ロンドンパラリンピック・注目の選手、競技サポーター

女子車椅子バスケットボール
添田智恵(そえだともえ)選手

1975年1月生まれ。バスケ歴は15年目。ウイング所属。持ち点3.5。シドニー、アテネ、北京パラリンピックに出場。シドニーでは銅メダル獲得。今年の国際親善大阪大会では、ベスト5に選ばれる。バスケ優先のため、勤務先のIBMでは契約社員だが、理解ある会社で応援をはじめ、練習しやすい体制を考えてくれる。攻撃的プレーが持ち味。

1.車椅子バスケットボールをはじめたきっかけは?

神奈川リハに入院しているときに誘われました。でも、正直、練習をみてもかっこ悪いというか、バランス崩して倒れたり、良い印象がなかったんです。ずっと断り続けていたんですが、あまりにしつこく言うので1回やってみてから断ろうと思ったんです。そしたら生来の負けず嫌いの性格がでてきてしまって…ここまで続いてきました。

2.現在は仕事をしながら選手として活躍していますが、普段の練習は、どのように行っていますか。

平日2~3日は仕事の後2時間、男子チーム(千葉ホークス、国内2位)で、土曜は自身の所属男子チーム(森本文化風呂商会、神奈川県)で3時間、日曜は自身の所属女子チーム(ウイング、神奈川県)で3時間の練習をしています。

3.男子チームに、ですか?

はい、自分の意志で参加しています。男子のレベルは高いんですよ、やはり、うまくなりたいの一心で頼んで参加させてもらっています。もちろん、女子だからという甘やかしはないです。非常に練習は厳しい!

4.車椅子バスケの魅力は?

まず、バスケの前に車椅子の操作ができないとだめなんです、自在に操るというか車椅子操作のテクニックが必要です。そしてバスケット、ボールの操作。車いすの操作とボールの操作、この二つがうまくいかないとダメなスポーツなので、これが難しいんですが、ここが魅力ですし、見所です。出来なかったことが出来たとき、克服出来たときはもううれしくて…。

5.車椅子バスケはチームスポーツなので、チームワークも重要ですね。添田選手が心がけていることはどんなことですか。

シドニーではスターティングメンバーでフル出場してメダル(銅)も取りました。でも、その後8年間はベンチ入りが長くてなかなか使ってもらえませんでした。腐っちゃいけないし、コートでは結果を出さないといけないし、葛藤の中でベンチでの声かけの大切さを経験しました。でも、このベンチ経験が今の私を強くしてくれたんだと思います。世代交代も進んでいますが、コートに立つ、出してもらう責任というか、それを意識していいプレーを追求できるコミュニケーションが出来ればいいですね。

6.国内の大会や世界選手権なども多くありますが、やはりパラリンピックは、「特別」ですか?

どの大会でもベストを尽くすことに変わりはありませんが、パラリンピックは4年に一度という意味で「特別」な存在ではあります。

7.北京パラリンピックでは4位でしたね。北京での課題はどんな点でしたか。また、収穫はありましたか。

北京パラリンピックに向けて今までの女子バスケを断ち切り、新体制で臨んだのですが、それでも追いつけない程、世界はさらに成長していました。そのギャップをいかにして埋めていくか、それが課題です。

個人的には、少ない時間でパフォーマンスを出せたので、4年間葛藤した成果として受け止めています。

8.北京パラリンピックから、チームはどのように成長してきましたか。

北京と比べて半分くらいメンバーの入れ替わりがあり、高校生や大学生といった若い選手もいます。また、北京で活躍した選手、シドニーで一緒にメダルを獲った先輩もいたりと、世代も幅広く、考えもさまざまですが、それらが化学反応を起こして爆発と安定をバランスよくできるチームに仕上がればいいと思います。まだまだこれからです。

9.添田さん自身は、どんなところに力を入れて練習をしていますか。

私自身の中では、ディフェンスの大切さを重要視していますが、コーチからは高いオフェンス力もリクエストされています。今は、特に得点力を上げる、連戦でも走り負けない力を養うこと、に重点をおいて練習に取り組んでいます。

10.ロンドンパラリンピックでの目標は?また、どんなプレーをしたいですか。

もちろん優勝です。コーチの理想とする攻撃的なプレーでチームを引っ張っていきたいです。

11.8月号の特集テーマは、「スポーツを楽しもう」ですが、これに関して添田さんが読者に伝えたいことは?

私はけがをするまで夢中になったものがなかったんです。何か一生懸命やれるものがほしかった。それが車椅子バスケと出会って一生懸命になれるものがみつかった。うまくなることで自分の成長もみられる。自慢できるものができて少し親孝行もできたし。

スポーツは何でもそうかもしれないですが、できなかったことを克服できる(た)喜び、勇気、希望があります。そして、チームスポーツは一人では成し遂げられない達成感もあり、人として成長できる素晴らしいものだと思っています。そういうものを皆さんにもぜひ経験してほしいと思います。

(取材:7月2日多摩障害者スポーツセンター 文責・編集部)