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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年8月号

1000字提言

コロンビア人のまっすぐな優しさ

高橋競

コロンビアの人は、感情表現がとっても豊かです。うれしいときは飛び上がって喜び、怒っているときは火のように怒り、悲しいときはわんわん泣き、楽しいときはみんなで盛り上がります。その分かりやすい感情表現は、時には諍(いさか)いの原因になります。しかし、落ち込んでいるときや弱っているときには、彼らのまっすぐな感情表現が大きな支えになることもあります。

東日本大震災のニュースは、地球の裏側にあるコロンビアでも、繰り返し大きく報道されました。断片的で偏った情報に不安を募らせ、ひどく落ち込んでいた私や同僚を支えてくれたのは、周りにいたコロンビア人の友人たちでした。普段から仲の良い人、いつもは意地悪な人、日本に行ったことがある人、日本と中国の区別もつかない人、お互いよく知らない人。彼らすべてが日本の出来事に心を痛め、私たち日本人のことを気遣い、正直で飾らない、まっすぐな優しさを届けてくれたのです。

「まず、あなた方は決して一人ではないことを知っていただきたいと思います。そして、コロンビアの問題を良くしようと頑張ってくださっているあなた方の国の現状を知り、どれだけ私が心を痛めているかを。私の心の底から、日本のみなさんすべてがご無事で、本当にご無事でありますよう祈っています。神様のご加護がありますように。精一杯の抱擁を送ります」

震災後、地雷被災者のアドリアーナさんからいただいたメッセージです。アドリアーナさんは数年前、友人が踏んでしまった地雷の爆発に巻き込まれてしまった若い女性です。その友人は亡くなり、自分も大きな火傷と心の傷を負ってしまったそうです。現在、シングルマザーとして娘さんを育てながら、地雷被災者のコロンビア国内ネットワークを広げようと頑張っています。

思いがけずたくさんの人の優しさに触れ、人と人との付き合いには、コロンビア人であるとか日本人であるとか、支援をする側とか受ける側とか、障害があるとかないとか、全く関係ないことを改めて実感しました。まっすぐな優しさは、言葉や文化を超えます。そして心にちゃんと届きます。

コロンビアで受け取ったまっすぐな優しさをしっかり日本に伝えていくこと―大きな宿題をもらいました。

(たかはしきょう JICA専門家)