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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年10月号

時代を読む24

テレビ放送による聴覚障害者への情報保障の歩み

ろう者は聞こえないという障害からテレビからの情報獲得が困難で、毎年開催の全国ろうあ者大会のスローガンには「手話に対する更なる理解を深め、情報・コミュニケーションの完全保障を求める」、「テレビ番組への手話と字幕の付与の拡充を図り、格差のない情報・文化の保障を求める」を掲げています。特に、ろう教育で長い間「手話禁止」とされたろう者は文字では情報を得られないのが現実です。

1974(昭和49)年1月、テレビで初めて手話通訳を挿入(於/静岡)。1977(昭和52)年4月、NHK「聴力障害者の時間」(現在/ろうを生きる難聴を生きる)放送開始。1990(平成2)年4月、NHK「みんなの手話」と「手話ニュース」放送開始。1995(平成7)年7月、参議院比例代表選挙に手話通訳挿入。当連盟、聴覚障害者団体が中核となり、民間企業の協力を得て1998(平成10)年にNPO法人CS障害者放送統一機構を立ち上げ、全番組に「手話と字幕」を付加した「目で聴くテレビ」の放送を開始。

2007(平成19)年の「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に字幕、解説放送の目標がありましたが、手話放送の目標が設定されませんでした。韓国、エジプト、シリアでもニュースには手話通訳が付いています。

今年8月5日に公布施行された、改正障害者基本法の「基本原則」には言語(手話を含む)等の意思疎通手段の選択の確保等を新たに掲げました。情報の利用におけるバリアフリー化等については第22条に明記されました。

同日、総務省が聴覚障害者を対象に「テレビの視聴状況等に関するアンケート(手話放送・緊急災害時の情報)」を行った結果が、2012年の見直しに反映されるのか。障害当事者であるろう者が審議会・委員会へ参画すべきだと求めているが、いまだ叶いません。

東日本大震災発生後の3月13日15時30分、首相官邸で行われた内閣官房長官の記者会見に手話通訳が付きました。画期的な事です。しかし、途中から位置が離れ、画面からは手話通訳が削除されてしまいました。

避難所生活、仮設住宅では重要な情報源となるテレビによる災害情報(災害時に被害を逃れたり、2次災害を避けたりするために役立つ情報)には手話、字幕が付いておらず、ろう者は情報を得ることができません。災害情報は時間経過とともに変化するので、被害状況の把握、被災者の情報ニーズ、安否情報、生活情報など、手話言語と音声言語を対等に格差のない情報を提供すべきです。

(浅利義弘 財団法人全日本ろうあ連盟文化部付理事)