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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年11月号

障害者総合福祉法がめざすべき6つのポイント
1.障害者総合福祉法の骨格提言

以下の本文は、平成23(2011)年8月30日に障がい者制度改革推進会議総合福祉部会より出された「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言―新法の制定を目指して―」から「はじめに」の「障害者総合福祉法がめざすべき6つのポイント」と「1.障害者総合福祉法の骨格提言」の各項目(1~10項目)における「表題」と「結論」を抽出して編集部がまとめたものです。

なお、全文は厚労省障がい者制度改革推進会議HPからご覧になれます(PDF・ルビ付PDF・テキスト版あり)。

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/

障害者総合福祉法がめざすべき6つのポイント

【1】障害のない市民との平等と公平

障害者と障害のない人の生活水準や暮らしぶりを比べるとき、そこには大きな隔たりがあります。障害は誰にでも起こりうるという前提に立ち、障害があっても市民として尊重され、誇りを持って社会に参加するためには、平等性と公平性の確保が何よりの条件となります。障害者総合福祉法がこれを裏打ちし、障害者にとって、そして障害のない市民にとっても新たな社会の到来を実感できるものとします。

【2】谷間や空白の解消

障害の種類によっては、障害者福祉施策を受けられない人がたくさんいます。いわゆる制度の谷間に置かれている人たちです。また制度間の空白は、学齢期での学校生活と放課後、卒業後と就労、退院後と地域での生活、働く場と住まい、家庭での子育てや親の介助、消費生活など、いろいろな場面で発生しています。障害の種別間の谷間や制度間の空白の解消を図っていきます。

【3】格差の是正

障害者のための住まいや働く場、人による支えなどの環境は、地方自治体の財政事情などによって、質量ともに大きく異なっています。また、障害種別間の制度水準についても大きな隔たりがあります。どこに暮らしを築いても一定の水準の支援を受けられるよう、地方自治体間の限度を超え合理性を欠くような格差についての是正をめざします。

【4】放置できない社会問題の解決

世界でノーマライゼーションが進むなか、わが国では依然として多くの精神障害者が「社会的入院」を続け、知的や重複の障害者等が地域での支援不足による長期施設入所を余儀なくされています。また、公的サービスの一定の広がりにもかかわらず障害者への介助の大部分を家族に依存している状況が続いています。これらを解決するために地域での支援体制を確立するとともに、効果的な地域移行プログラムを実施します。

【5】本人のニーズにあった支援サービス

障害の種類や程度、年齢、性別等によって、個々のニーズや支援の水準は一様ではありません。個々の障害とニーズが尊重されるような新たな支援サービスの決定システムを開発していきます。また、支援サービスを決定するときに、本人の希望や意思が表明でき、それが尊重される仕組みにします。

【6】安定した予算の確保

制度を実質化させていくためには財政面の裏打ちが絶対的な条件となります。現在の国・地方の財政状況はきわめて深刻であるため、障害者福祉予算を確保するためには、給付・負担の透明性、納得性、優先順位を明らかにしながら、財源確保について広く国民からの共感を得ることは不可欠です。

障害者福祉予算の水準を考えていくうえでの重要な指標となるのが、国際的な比較です。この際に、経済協力開発機構(OECD)各国の社会保障給付体系のなかにおける障害者福祉の位置づけの相違を丁寧に検証し、また高齢化などの要因を考慮した上での国民負担率など、財政状況の比較も行わなければなりません。当面の課題としては、OECD加盟国における平均並みを確保することです。これによって、現状よりはるかに安定した財政基盤を図ることができます。

1.障害者総合福祉法の骨格提言

1―1 法の理念・目的・範囲

【表題】前文

【結論】

○ 障害者総合福祉法には、下記の通り、本法制定の経緯、この法に求められる精神等を内容とする前文を設けるべきである。

【表題】法の名称

【結論】

○ この法律は『障害者総合福祉法』と称する。

【表題】法の目的

【結論】

○ この法律の目的として、以下の内容を盛り込むべきである。

・ この法律が、憲法第13条、第14条、第22条、第25条等の基本的人権や改正された障害者基本法等に基づき、全ての障害者が、等しく基本的人権を享有する個人として尊重され、他の者との平等が保障されるものであるとの理念に立脚するものであること。

・ この法律が、障害者の基本的人権の行使やその自立及び社会参加の支援のための施策に関し、どこで誰と生活するかについての選択の機会が保障され、あらゆる分野の活動に参加する機会が保障されるために必要な支援を受けることを障害者の基本的権利として、障害の種類、軽重、年齢等に関わりなく保障するものであること。

・ 国及び地方公共団体が、障害に基づく社会的不利益を解消すべき責務を負うことを明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加に必要な支援のための施策を定め、その施策を総合的かつ計画的に実施すべき義務を負っていること。

・ これらにより、この法律が、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するものであること。

【表題】法の理念

【結論】

○ 以下の基本的視点を理念規定に盛り込むべきである。

・ 保護の対象から権利の主体への転換を確認する旨の規定

・ 医学モデルから社会モデルへの障害概念の転換を確認する旨の規定

【表題】地域で自立した生活を営む基本的権利

【結論】

○ 地域で自立した生活を営む権利として、以下の諸権利を障害者総合福祉法において確認すべきである。

1.障害ゆえに命の危険にさらされない権利を有し、そのための支援を受ける権利が保障される旨の規定。

2.障害者は、必要とする支援を受けながら、意思(自己)決定を行う権利が保障される旨の規定。

3.障害者は、自らの意思に基づきどこで誰と住むかを決める権利、どのように暮らしていくかを決める権利、特定の様式での生活を強制されない権利を有し、そのための支援を受ける権利が保障される旨の規定。

4.障害者は、自ら選択する言語(手話等の非音声言語を含む)及び自ら選択するコミュニケーション手段を使用して、市民として平等に生活を営む権利を有し、そのための情報・コミュニケーション支援を受ける権利が保障される旨の規定。

5.障害者は、自らの意思で移動する権利を有し、そのための外出介助、ガイドヘルパー等の支援を受ける権利が保障される旨の規定。

6.以上の支援を受ける権利は、障害者の個別の事情に最も相応しい内容でなければならない旨の規定。

7.国及び地方公共団体は、これらの施策実施の義務を負う旨の規定。

【表題】国の義務

【結論】

○ 国の義務として、以下の規定を設けるべきである。

1.国は、障害の有無、種別、軽重等に関わらず障害者がどの地域に居住しても等しく安心して生活することができる権利を保障する義務を有すること。

2.国は、障害種別や程度による制度の谷間や空白及び制度上の格差が生じないように制度設計を行う責務を有すること。

3.国は、地域間に支援の格差が発生することを防止し、又は発生した格差を解消することができる制度設計を行う責務を有するとともに、市町村への支援施策に関し必要な財政上の措置を行うこと。

4.国は、都道府県と共に、市町村が実施する支援施策の実態を把握し、障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、それが実施されるように、広くその実施状況を国民に明らかにし、同法の実施を監視し、推し進める責務を有すること。

【表題】都道府県の義務

【結論】

○ 都道府県の義務として、以下の規定を設けるべきである。

1.市町村の行う支援施策の実態を把握すると共に、障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、それが実施されるように、広くその実施状況を都道府県民に明らかにし、同法の実施を推し進めること。

2.市町村の支援施策に対して、必要な財政的補助を行うこと。その際、特定の市町村に集中する実態等があればそのことを勘案すること。

3.市町村の支給決定に対してなされる不服申し立てを受理し、障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて審査する等、必要な措置を講じること。

4.市町村と連携を図りつつ、相談支援体制の整備及び広域でなければ実施が困難な支援を行うこと。

【表題】市町村の義務

【結論】

○ 市町村の義務として、以下の規定を設けるべきである。

1.障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、当該市町村の区域における障害者の生活の現状及び障害者がどこで誰と生活し、どのような分野で社会参加を希望・選択するかなどを把握した上で、関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な支援施策を総合的かつ計画的に実施すること。

2.障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、障害者の支援施策の提供に関し、必要な情報の提供及び適切な説明を尽くし、並びに相談に応じ、必要な調査及び指導を行うと共に、そのサービス利用計画等を勘案して必要な支援施策を提供すること。

【表題】基盤整備義務

【結論】

○ 国及び地方公共団体は、支援を実施する事業者が地域に偏在しないよう事業者への財政援助、育成を含めた基盤整備義務を有する。

【表題】国民の責務

【結論】

○ すべての国民は、その障害の有無にかかわらず、相互にその人格と個性を尊重しあいながら共生することのできる社会の実現に協力するものとする。

【表題】介護保険との関係

【結論】

○ 障害者総合福祉法は、障害者が等しく基本的人権を享有する個人として、障害の種別と程度に関わりなく日常生活及び社会生活において障害者のニーズに基づく必要な支援を保障するものであり、介護保険法とはおのずと法の目的や性格を異にするものである。この違いを踏まえ、それぞれが別個の法体系として制度設計されるべきである。

○ 介護保険対象年齢になった後でも、従来から受けていた支援を原則として継続して受けることができるものとする。

1―2 障害(者)の範囲

【表題】法の対象規定

【結論】

○ 障害者総合福祉法が対象とする障害者(障害児を含む)は、障害者基本法第2条第1項に規定する障害者をいう。

障害者基本法(平成23年8月5日公布)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

二 社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

○ 上記の定義における心身の機能の障害には、慢性疾患に伴う機能障害を含むものとする。

1―3 選択と決定(支給決定)

【表題】支給決定の在り方

【結論】

○ 新たな支給決定にあたっての基本的な在り方は、以下のとおりとする。

1.支援を必要とする障害者本人(及び家族)の意向やその人が望む暮らし方を最大限尊重することを基本とすること。

2.他の者との平等を基礎として、当該個人の個別事情に即した必要十分な支給量が保障されること。

3.支援ガイドラインは一定程度の標準化が図られ、透明性があること。

4.申請から決定まで分かりやすく、スムーズなものであること。

【表題】支給決定のしくみ

【結論】

○ 支給決定のプロセスは、原則として、以下のとおりとする。

1.障害者総合福祉法上の支援を求める者(法定代理人も含む)は、本人が求める支援に関するサービス利用計画を策定し、市町村に申請を行う。

2.市町村は、支援を求める者に「障害」があることを確認する。

3.市町村は、本人が策定したサービス利用計画について、市町村の支援ガイドラインに基づき、ニーズアセスメントを行う。

4.本人又は市町村により、申請の内容が支援ガイドラインの水準に適合しないと判断した場合には、市町村が本人(支援者を含む)と協議調整を行い、その内容にしたがって、支給決定をする。

5.4の協議調整が整わない場合、市町村(または圏域)に設置された第三者機関としての合議機関において検討し、市町村は、その結果を受けて支給決定を行う。

6.市町村の支給決定に不服がある場合、申請をした者は都道府県等に不服申立てができるものとする。

○ 支給決定について試行事業を実施し、その検証結果を踏まえ、導入をはかるものとする。

【表題】サービス利用計画

【結論】

○ サービス利用計画とは、障害者総合福祉法上の支援を希望する者が、その求める支援の内容と量の計画を作成し、市町村に提出されるものをいう。なお、そのサービス利用計画の作成にあたり、障害者が希望する場合には、相談支援専門員等の支援を受けることができる。

【表題】「障害」の確認

【結論】

○ 市町村は、「心身の機能の障害」があることを示す証明書によって法律の対象となる障害者であるか否かの確認を行う。証明書は、障害者手帳、医師の診断書、もしくは意見書、その他、障害特性に関して専門的な知識を有する専門職の意見書を含むものとする。

【表題】支援ガイドライン

【結論】

○ 国及び市町村は、障害者の地域生活の権利の実現をはかるため、以下の基本的視点に基づいて、支援ガイドラインを策定するものとする。

1.国は、障害者等の参画の下に「地域で暮らす他の者との平等を基礎として生活することを可能とする支援の水準」を支給決定のガイドラインのモデルとして策定すること。

2.国及び市町村のガイドラインは、障害の種類や程度に偏ることなく、本人の意思や社会参加する上での困難等がもれなく考慮されること。

3.市町村は、国が示すガイドラインのモデルを最低ラインとして、策定すること。

4.市町村のガイドラインは、障害者等が参画して策定するものとし、公開とすること。また、適切な時期で見直すものとすること。

【表題】協議調整

【結論】

○ 障害者又は市町村において、サービス利用計画がガイドラインに示された水準やサービス内容に適合しないと判断した場合、市町村は、障害者(及び支援者)と協議調整を行い、これに基づいて支給決定する。

【表題】合議機関の設置と機能

【結論】

○ 市町村は、前記の協議が整わない場合に備え、第三者機関として、当事者相談員、相談支援専門員、地域の社会資源や障害者の状況をよく知る者等を構成員とする合議機関を設置する。

○ 合議機関は、本人のサービス利用計画に基づき、その支援の必要性を検討するとともに、支援の内容、支給量等について判断するものとする。

○ 障害者が希望する場合には、合議機関で意見陳述の機会が設けられる。

○ 市町村は、合議機関での判断を尊重しなければならない。

【表題】不服申立

【結論】

○ 市町村は支給決定に関する異議申立の仕組みを整備するとともに、都道府県は、市町村の支給決定に関して、実効性のある不服審査が行えるようにする。

○ 不服申立は、手続き及び内容判断の是非について審議されるものとし、本人の出席、意見陳述及び反論の機会が与えられるものとする。

1―4 支援(サービス)体系

【表題】支援体系

【結論】

○ 障害者の支援体系は以下の通りとする。

A.全国共通の仕組みで提供される支援

  1. 就労支援
  2. 日中活動等支援
  3. 居住支援
  4. 施設入所支援
  5. 個別生活支援
  6. コミュニケーション支援及び通訳・介助支援
  7. 補装具・日常生活用具
  8. 相談支援
  9. 権利擁護

B.地域の実情に応じて提供される支援

市町村独自支援

  • 福祉ホーム
  • 居住サポート
  • その他(支給決定プロセスを経ずに柔軟に利用できる支援等)

C.支援体系を機能させるために必要な事項

  1. 医療的ケアの拡充
  2. 日中活動の場等における定員の緩和等
  3. 日中活動の場への通所保障
  4. グループホームでの生活を支える仕組み
  5. グループホーム等、暮らしの場の設置促進
  6. 一般住宅やグループホームへの家賃補助
  7. 他分野との役割分担・財源調整

A.全国共通の仕組みで提供される支援

1.就労支援

【表題】就労支援の仕組みの障害者総合福祉法における位置づけ

【結論】

○ 障害のある人への就労支援の仕組みとして、「障害者就労センター」と「デイアクティビティセンター(仮称、以下同様)」(作業活動支援部門)を創設する。

○ 社会的雇用等多様な働き方についての試行事業(パイロット・スタディ)を実施し、障害者総合福祉法施行後3年をめどにこれを検証する。その結果を踏まえ障害者の就労支援の仕組みについて、関係者と十分に協議しつつ所管部局のあり方も含め検討する。

2.日中活動等支援

【表題】1.デイアクティビティセンター

【結論】

○ デイアクティビティセンターを創設する。

○ デイアクティビティセンターでは、作業活動支援、文化・創作活動支援、自立支援(生活訓練・機能訓練)、社会参加支援、居場所機能等の多様な社会参加活動を展開する。

○ 医療的ケアを必要とする人等が利用できるような濃厚な支援体制を整備するなど、利用者との信頼関係に基づく支援の質を確保するための必要な措置を講じる。

【表題】2.日中一時支援、ショートステイ

【結論】

○ 日中一時支援は、全国どこでも使えるようにするため、個別給付にする。

○ ショートステイは、医療的ケアを必要とする人も安心して利用できるよう条件整備をする。

3.居住支援

【表題】グループホーム・ケアホームの制度

【結論】

○ グループホームとケアホームをグループホームに一本化する。グループホームの定員規模は家庭的な環境として4~5人を上限規模とすることを原則とし、提供する支援は、住まいと基本的な日常生活上の支援とする。

4.施設入所支援

【表題】施設入所支援

【結論】

○ 施設入所支援については、短期入所、レスパイトを含むセーフティネットとしての機能の明確化を図るとともに、利用者の生活の質を確保するものとする。

○ 国は、地域移行の促進を図りつつ、施設における支援にかかる給付を行うものとする。

○ 国及び地方公共団体は、施設入所者の地域生活への移行を可能にするための地域資源整備の計画を策定し、地域生活のための社会資源の拡充を推進する。

○ 施設は入所者に対して、地域移行を目標とする個別支援計画を策定することを基本とし、並行して入所者の生活環境の質的向上を進めつつ、意向に沿った支援を行う。また、相談支援機関と連携し、利用者の意向把握と自己決定(支援付き自己決定も含む)が尊重されるようにする。

○ 施設入所支援については、施設入所に至るプロセスの検証を行いつつ、地域基盤整備10カ年戦略終了時に、その位置づけなどについて検証するものとする。

5.個別生活支援

【表題】1.重度訪問介護の発展的継承によるパーソナルアシスタンス制度の創設

【結論】

○ パーソナルアシスタンスとは、
  1. 利用者の主導(支援を受けての主導を含む)による
  2. 個別の関係性の下での
  3. 包括性と継続性

を備えた生活支援である。

○ パーソナルアシスタンス制度の創設に向けて、現行の重度訪問介護を充実発展させる。

○ 対象者は重度の肢体不自由者に限定せず、障害種別を問わず日常生活全般に常時の支援を要する障害者が利用できるようにする。また、障害児が必要に応じてパーソナルアシスタンス制度を使えるようにする。

○ 重度訪問介護の利用に関して一律にその利用範囲を制限する仕組みをなくす。また、決定された支給量の範囲内であれば、通勤、通学、入院、1日の範囲を越える外出、運転介助にも利用できるようにする。また、制度利用等の支援、見守りも含めた利用者の精神的安定のための配慮等もパーソナルアシスタンスによる支援に加える。

○ パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、仕事をしながら教育を受ける職場内訓練(OJT)を基本にした研修プログラムとし、実際に障害者の介助に入った実経験時間等を評価するものとする。

【表題】2.居宅介護(身体介護・家事援助)の改善

【結論】

○ 現行の居宅介護を改善した上で、個別生活支援に位置付ける。

【表題】3.移動介護(移動支援、行動援護、同行援護)の個別給付化

【結論】

○ 障害種別を問わず、すべての障害児者の移動介護を個別給付にする。

○ 障害児の通学や通園のために移動介護を利用できるようにする。

6.コミュニケーション支援及び通訳・介助支援

【表題】コミュニケーション支援及び通訳・介助支援

【結論】

○ コミュニケーション支援は、支援を必要とする障害者に対し、社会生活の中で行政や事業者が対応すべき必要な基準を設け、その費用は求めない。

○ 通訳・介助支援に関しては、盲ろう者の支援ニーズの特殊性・多様性、さらにその存在の希少性等の事情から都道府県での実施とし、個別のニーズに応じたコミュニケーションと情報入手に関わる支援及び移動に関わる支援等を一体的に利用できるようにする。

7.補装具・日常生活用具

【表題】補装具・日常生活用具

【結論】

○ 日常生活用具は補装具と同様に個別給付とする。

8.相談支援「相談支援」の項参照

9.権利擁護「権利擁護」の項参照

B.地域の実情に応じて提供される支援

市町村独自支援

【表題】市町村独自支援

【結論】

○ 現在、地域生活支援事業の下で実施されているものは、できるだけ「全国共通の仕組みで提供される支援」とし、柔軟な形の障害者の社会参加を進めるものなど自治体の裁量として残す方がよいものは、市町村独自支援として事業を残す。

○ 現行の福祉ホームと居住サポート事業は市町村独自支援として継続し、前者はグループホームへの移行を可能にする。

C.支援体系を機能させるために必要な事項

1.医療的ケアの拡充

【表題】医療的ケアの拡充

【結論】

○ 日中活動支援の一つであるデイアクティビティセンターにおいて看護師を複数配置するなど、濃厚な医療的ケアが必要な人でも希望すれば同センターを利用できるような支援体制を確保する。併せて重症心身障害者については、児童期から成人期にわたり、医療を含む支援体制が継続的に一貫して提供される仕組みを創設する。

○ 地域生活に必要な医療的ケア(吸引等の他に、カニューレ交換・導尿・摘便・呼吸器操作等を含む)が、本人や家族が行うのと同等の生活支援行為として、学校、移動中など、地域生活のあらゆる場面で確保される。

○ 入院中においても、従来より継続的に介助し信頼関係を有する介助者(ヘルパー等)によるサポートを確保し、地域生活の継続を可能とする。

2.日中活動等支援における定員の緩和など

【表題】日中活動等支援の定員の緩和など

【結論】

○ 過疎地等の事業所が利用者5名でも事業を展開できるようにする。

3.日中活動等支援への通所保障

【表題】日中活動等支援への通所保障

【結論】

○ 国は日中活動等支援への送迎を支援内容の一環に位置付け、これに係る費用は報酬上で評価する仕組みとする。

○ 報酬の算定にあたって声かけなどの送迎中の支援を踏まえることや、公共交通機関等による通所者の扱いを併せて検討する。

4.グループホームでの生活を支える仕組み

【表題】グループホームでの生活を支える仕組み

【結論】

○ グループホームで居宅介護等の個別生活支援を利用できるようにする。

○ 高齢化等により日中活動にかかる支援を利用することが困難であるか、又はそれを必要としない人が日中をグループホームで過ごすことができるように、支援体制の確保等、必要な措置を講じる。

5.グループホーム等、暮らしの場の設置促進

【表題】グループホーム等、暮らしの場の設置促進

【結論】

○ 国庫補助によるグループホームの整備費を積極的に確保する。また、重度の障害や様々なニーズのある人への支援も想定し、安定的運営を可能とする報酬額が必要である。一方、グループホームを建設する際の地域住民への理解促進について、事業者にのみに委ねる仕組みを見直し、行政と事業者が連携・協力する仕組みとすることが必要である。

※ 公営住宅や民間賃貸住宅の活用については3を参照のこと。

6.一般住宅やグループホームへの家賃補助

【表題】グループホーム利用者への家賃補助等

【結論】

○ グループホーム利用者への家賃補助、住宅手当等による経済的支援策が重要である。

※ 一般住宅に住む障害者への家賃補助、住宅手当等については3を参照のこと。

7.他分野との役割分担・財源調整

【表題】シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整

【結論】

○ 障害がいかに重度であっても、地域の中で他の者と平等に学び、働き、生活し、余暇を過ごすことができるような制度とする。

1―5 地域移行

【表題】「地域移行」の法定化

【結論】

○ 「地域移行」とは、住まいを施設や病院から、単に元の家庭に戻すことではなく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現することを意味する。

○ すべての障害者は、地域で暮らす権利を有し、障害の程度や状況、支援の量等に関わらず、地域移行の対象となる。

○ 国が、社会的入院、社会的入所を早急に解消するために「地域移行」を促進することを法に明記する。

○ 国は、重点的な予算配分措置を伴った政策として、地域移行プログラムと地域定着支援を法定施策として策定し、実施する。

【表題】地域移行プログラムと地域定着支援

【結論】

○ 地域移行プログラムと地域定着支援は、実際に地域生活を始められるように、一人ひとりの状況に合わせて策定される。地域移行プログラムでは、入院・入所者に選択肢が用意され、本人の希望と納得のもとで施設や病院からの外出、地域生活を楽しむ体験、居住体験等のプログラムも提供される。また、地域定着支援では、地域生活に必要な支援、その他福祉制度に関する手続等の支援や必要とする社会資源に結び付けるなどの環境調整も行うものとする。

○ 地域移行プログラムと地域定着支援の事業は、国の事業として行う。施設及び病院は、これらの事業を受けるよう積極的に努めなければならない。施設及び病院がこれらの事業を行う場合には、地域の相談支援事業者、権利擁護事業者等の地域移行支援者と連携するための体制を整備しなければならない。

○ ピアサポーター(地域移行の支援をする障害当事者)等は、入院・入所者の意思や希望を聴きとりつつ、支援するノウハウを活かし、重要な人的資源として中心的な役割を担う。特に長期入所者や入院者に対する支援は、不安軽減と意欲回復のために、本人に寄り添った支援が必要である。

○ 入所施設・病院の職員がそれぞれの専門性をより高め、地域生活支援の専門職としての役割を果たすため、国は移行支援プログラムを用意し、これらの職員の利用に供しなければならない。

※ 地域移行を促進するための住宅確保の施策については3を参照のこと。

1―6 地域生活の資源整備

【表題】「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)策定の法定化

【結論】

○ 国は、障害者総合福祉法において、障害者が地域生活を営む上で必要な社会資源を計画的に整備するため本法が実施される時点を起点として、前半期計画と後半期計画からなる「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)を策定するものとする。

策定に当たっては、とくに下記の点に留意することが必要である。

・ 長期に入院・入所している障害者の地域移行のための地域における住まいの確保、日中活動、支援サービスの提供等の社会資源整備は、緊急かつ重点的に行われなければならないこと。

・ 重度の障害者が地域で生活するための長時間介助を提供する社会資源を都市部のみならず農村部においても重点的に整備し、事業者が存在しないためにサービスが受けられないといった状況をなくすべきであること。

・ 地域生活を支えるショートステイ・レスパイト支援、医療的ケアを提供できる事業所や人材が不足している現状を改めること。

○ 都道府県及び市町村は、国の定める「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)に基づき、障害福祉計画等において、地域生活資源を整備する数値目標を設定するものとする。

○ 数値目標の設定は、入院者・入所者・グループホーム入居者等の実態調査に基づかなければならない。この調査においては入院・入所の理由や退院・退所を阻害する要因、施設に求められる機能について、障害者への聴き取りを行わなければならない。

※ 地域移行を促進するための住宅確保の施策については3を参照のこと。

【表題】障害福祉計画

【結論】

○ 障害者総合福祉法の支援資源を総合的・計画的に整備するため、市町村は市町村障害福祉計画を、都道府県は都道府県障害福祉計画を策定し、国はその基本方針及びそのための整備計画を示す。

○ 国が定める障害福祉計画のための第1期の整備計画は「地域基盤整備10ヵ年戦略」の前半期の整備計画をもって充てる。

○ 障害福祉計画は、その策定過程と評価・見直し過程で、障害者、障害者の家族、事業者、その他の市民が参加する「地域生活支援協議会」の十分な関与を確保する。とくに知的障害・精神障害やこれまで制度の谷間におかれてきた障害者・難病等の当事者の参加が求められる。

○ 基本方針および障害福祉計画の策定・評価は、客観的な調査データを踏まえて行う。とりわけ地域社会での日常生活や社会参加の実態を障害のない市民のそれとの比較したデータを重視する。

○ 障害福祉計画は1期5年とする。

○ 国、都道府県、市町村は障害福祉計画の実施に必要な予算措置を講じる。

【表題】地域生活支援協議会

【結論】

○ 地域における既存の社会資源を有機的に連携させ、地域全体にかかる課題を検討して地域社会の支援体制をより充実させる仕組みとして、市町村(ないし圏域)および都道府県単位で、障害者及びその関係者の参画を前提とした地域生活支援協議会を法定機関として設置する。

○ 地域生活支援協議会は、その地域における障害者施策の現状と課題を検討し、改善方策や必要な施策を講じるための具体的な協議を行うほか、市町村又は都道府県における障害者に関する福祉計画策定に意見を述べるものとする。

○ とくに、都道府県単位の地域生活支援協議会は、上記のほか、広域的・専門的な情報提供と助言や市町村障害者福祉計画策定の支援機能を果たすものとする。

○ 地域生活支援協議会は、ライフステージにわたる途切れない支援体制が整備されるよう、地域における様々な社会資源と連携するものとする。

1―7 利用者負担

【表題】利用者負担

【結論】

○ 他の者との平等の観点から、食材費や光熱水費等の誰もが支払う費用は負担をすべきであるが、障害に伴う必要な支援は、原則無償とすべきである。

ただし、高額な収入のある者には、収入に応じた負担を求める。その際、認定する収入は、成人の場合は障害者本人の収入、未成年の障害者の場合は世帯主の収入とする。

また、高額な収入のある者の利用者負担については、介護保険の利用を含む必要なサービスの利用者負担を合算し、現行の負担水準を上回らないものとすることが必要である。

○ 上記の障害に伴う必要な支援とは、主に以下の6つの分野に整理することができる。

1.相談や制度利用のための支援

2.コミュニケーションのための支援

3.日常生活を送るための支援や補装具の支給

4.社会生活・活動を送るための支援(アクセス・移動支援を含む)

5.就労支援

6.医療・リハビリテーションの支援

なお、6の医療については、障害者のすべての医療費を全額公費負担にというものではなく、障害に伴う医療費の自己負担を公費負担にすることについて述べたものである。

1―8 相談支援

本項は、相談支援の体制をどのように考えるかに当たって、障害者と普段に関わりあう人間関係や地域の中での支え合いの重要性や日頃接する支援者による相談の重要性を指摘する意見、さらには、相談体制の過度な整備に対する危惧の念を示す意見等も踏まえ、全くこれまでなかったものを新たに作り出すというよりも、多くは現状として存在する相談事業の課題を整理したうえで、より機能的に、より本人を中心に相談事業が運用されるよう、基本理念を確認したうえで、その在り方を提言したものである。

【表題】相談支援

【結論】

○ 相談支援の対象は、障害者総合福祉法に定める障害者、同法の支援の可能性がある者及びその家族等とする。

○ 相談支援は、福祉制度を利用する際の相談のみでなく、障害、疾病等の理由があって生活のしづらさ、困難を抱えている人びとに、福祉・医療サービス利用の如何にかかわらず幅広く対応するものとする。 

また、障害者本人の抱える問題全体に対応する包括的支援の継続的なコーディネートを行う。

さらに、障害者のニーズを明確にするとともに、その個別ニーズを満たすために、地域でのあらたな支援体制を築くための地域への働きかけも同時に行うものとする。

【表題】相談支援機関の設置と果たすべき機能

【結論】

○ 人口規模による一定の圏域ごとに、地域相談支援センター、総合相談支援センターの配置を基本とし、エンパワメント支援事業を含む複合的な相談支援体制を整備する。

○ 身近な地域での障害種別や課題別、年齢別によらないワンストップの相談支援体制の整備充実、一定の地域における総合的な相談支援体制の拡充を行い、さらに広域の障害特性に応じた専門相談支援や他領域の相談支援(総称して以下、特定専門相談センター)との連携やサポート体制の整備を行う。

○ 身近な地域での障害者本人(その家族を含む)のエンパワメントを目的とするピアサポートや家族自身による相談支援を充実する(エンパワメント支援事業)。

○ 地域相談支援センター、総合相談支援センター(以下「相談支援事業所」と総称する)は、障害者本人等の側に立って支援することから、給付の決定を行う市町村行政やサービス提供を行う事業所からの独立性が担保される必要がある。

【表題】本人(及び家族)をエンパワメントするシステム

【結論】

○ 国は、障害者本人によるピアサポート体制をエンパワメント事業として整備する。身近な地域(市町村、広域圏、人口5万人から30万人)に最低1か所以上の割合で地域におけるエンパワメント支援を行える体制の整備を行うものとする。

○ エンパワメント支援事業の目的は、障害者たちのグループ活動、交流の場の提供、障害者本人による自立生活プログラム(ILP)、自立生活体験室、ピアカウンセリング等を提供することで、地域の障害者のエンパワメントを促進することである。

○ エンパワメント支援事業の実施主体は、障害者本人やその家族が過半数を占める協議体によって運営される団体とする。

○ エンパワメント支援事業は、地域相談支援センターに併設することができる。

○ 障害者本人(及び家族)をエンパワメントするシステムの整備については、当事者リーダーや、真に障害者をエンパワメントできる当事者組織の養成を図りつつ、段階的に実施する。

【表題】相談支援専門員の理念と役割

【結論】

○ 相談支援専門員(仮称)に関する理念と役割を示すことが重要である。

○ 相談支援専門員の基本理念は、すべての人間の尊厳を認め、いかなる状況においても自己決定を尊重し、当事者(障害者本人及び家族)との信頼関係を築き、人権と社会正義を実践の根底に置くことである。

○ 上記の理念に基づき相談支援専門員は、本人の意向やニーズを聴き取り、必要に応じて本人中心支援計画およびサービス利用計画の策定にかかる支援を行う。具体的には、本人のニーズを満たすために制度に基づく支援に結びつけるだけでなく、制度に基づかない支援を含む福祉に限らない教育、医療、労働、経済保障、住宅制度等々あらゆる資源の動員を図る努力をする。

また、資源の不足などについて、その解決に向けて活動することも重要である。

【表題】相談支援専門員の研修

【結論】

○ 国は研修要綱を定め、都道府県において研修の企画から実施までの実務を担う者に対する指導者研修を行う。

○ 都道府県が実施する研修には基礎研修、フォローアップ研修、専門研修、更新研修、その他がある。都道府県はその地域生活支援協議会に人材育成の部会を設け、上記国の行う指導者研修の修了者とともに都道府県が行うべき研修を企画し実施するものとする。研修運営等について委託することもできる。

○ 研修の実施にあたっては、障害者が研修企画や講師となって研修を提供する側になること、または研修を受ける側にもなるなど、研修への当事者の参画を支援することが重要である。

1―9 権利擁護

【表題】サービスの希望者及び利用者の権利擁護制度

【結論】

○ 障害者総合福祉法における権利擁護とは、サービスを希望し、または利用する障害者のそれぞれの生活領域(居宅、グループホーム、入所施設等における生活、日中活動や就労の場等)や場面(精神科病院からの退院促進を含む地域移行)において、本人が孤立してかかえる苦情や差別的な取扱い、虐待その他の人権侵害から、障害者総合福祉法の目的と理念にかかげる権利を擁護し、侵害された権利の救済を図ることによって、本人がエンパワメントしていく過程をいう。

○ 上記の権利擁護は、サービスを希望する、または利用する障害者の申請から相談支援、支給決定、サービス利用、不服申立のすべてにわたるプロセスに対応する。

○ 国は、上記の障害者総合福祉法における権利擁護を実現するための体制整備を行うとともに、差別的取り扱いや虐待等の関係する法制度との柔軟で効果的な連携協力を図るものとする。

【表題】第三者の訪問による権利擁護(オンブズパーソン)制度

【結論】

○ 国は、都道府県ないし政令指定都市単位で、障害者のそれぞれの生活領域(居宅グループホーム、入所施設等における生活、日中活動や就労の場等)や場面(精神科病院からの退院促進を含む地域移行)において、障害者の求めに応じ、障害者本人を含む権利擁護サポーター等の第三者が訪問面会を行う権利擁護のための体制整備を行うものとする。

※ 入院中の精神障害者の権利擁護、障害児の権利擁護については3を参照のこと。

【表題】権利擁護と虐待防止

【結論】

○ 障害者総合福祉法においては、サービスを提供する事業者の責務として、虐待や人権侵害をしてはならないことを明記するとともに、事業者が虐待の発生を未然に防止し、発生した虐待を早期に発見し、侵害された権利を回復するための体制を整備する責務を明記すべきである。

○ 虐待が発生した場合には、サービスを提供する事業者やその関係者等は早期の発見と通報を行い、都道府県の権利擁護センターや市町村の虐待防止センター等と連携協力しなければならない。

○ 都道府県及び市町村は、事業者による虐待防止体制の構築に関して、職員研修、情報の提供、財政等の支援を行うものとする。

※ 第三者の訪問による権利擁護と虐待防止法については3を参照のこと。

【表題】サービスに関する苦情解決のためのサポート

【結論】

○ 障害者総合福祉法で提供されるサービスに関して苦情を解決するためには、1.寄り添い型の相談支援、2.サポート機関、の二つが必要である。

○ 寄り添い型の相談支援とは、苦情という形で問題化する以前の段階での相談であり、障害者本人とその関係者からの話を丁寧に聞きとる事前相談を基本とする支援をいう。相談支援機関には、とくに本人の意向に沿った支援をする役割が求められる。

○ サポート機関とは、本人がサービスに対する苦情をかかえた場合、本人の側に立って、権利擁護の観点から苦情解決に向けて対応するサポート機関(相談機関も含む)であり、これを設置することが必要である。

※ 苦情解決機関(社会福祉法)については3を参照のこと。

【表題】モニタリング機関

※ モニタリング機関については3を参照のこと。

【表題】権利擁護と差別禁止

※ 権利擁護と差別禁止については3を参照のこと。

1―10 報酬と人材確保

【表題】報酬と人材確保の基本理念

【結論】

○ 障害者の地域で自立した生活を営む基本的権利を保障するために必要なサービスを確保するため、適正な事業の報酬と必要な人材を確保すべきである。

【表題】報酬における基本的方針と水準

【結論】

○ 報酬における基本的方針は、以下のとおりである。

・ 支援の質の低下、現場を委縮させない報酬施策を実施する。

・ わかりやすい報酬制度にする。

・ 利用者に不利益をもたらさない。

○ 報酬における水準は、採算線(レベル)を利用率80%程度で設定し、安定的な障害サービスを提供するために、事業者が安定して事業経営し、従事者が安心して業務に専念出来る事業の報酬水準とする。

○ なお、常勤換算方式を廃止する。

【表題】報酬の支払い方式

【結論】

○ 報酬の支払い方式に関して、施設系支援にかかる場合と在宅系支援にかかる場合に大別する。

○ 施設系支援にかかる報酬については、「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に大別する。前者を原則日払いとし、後者を原則月払いとする。

○ 在宅系支援にかかる報酬については、時間割り報酬とする。

○ すべての報酬体系において基本報酬だけで安定経営ができる報酬体系とする。

【表題】人材確保施策における基本的視点

【結論】

○ 人材確保こそが障害者地域生活実現の鍵である。

○ 障害福祉に対する公的責任を障害者本人やその家族に転嫁してはならない。

○ 支援者の確保は、地域における雇用創出である。

○ 重層的な人的支援のネットワーク化を重視し、人材を循環させる。

【表題】福祉従事者の賃金における基本的方針と水準

【結論】

○ 障害者の安定した地域生活を支える人材を確保し、また、その人材が誇りと展望をもって支援を継続できるようにするため、少なくとも年齢別賃金センサスに示された全国平均賃金以下にならないよう事業者が適切な水準の賃金を支払うこととする。

○ そのためには、事業者が受け取る報酬の積算に当たっては、少なくとも上記水準の賃金以下とならないような事業報酬体系を法的に構築すべきである。

【表題】人材養成

【結論】

○ 人材の養成においては、現場体験を重視した研修システムが必要である。支援を提供するうえで必要となる「資格」は支援の質の最低基準の保障と支援者の社会的評価、モチベーション維持等のためのものであると位置づけるものとする。

○ 相談支援や権利擁護に必要な障害者の人材確保として、国はピアカウンセラーの養成を積極的に支援するものとする。

○ 国及び都道府県は、制度運営主体である市町村の人材養成を支援するものとする。