音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年11月号

リレー推進会議レポート13

第34回と第35回の報告

新谷友良

はじめに

障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)は、第34回、35回の会議で総合福祉部会がまとめた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(以下、骨格提言)についての議論を行った。骨格提言は推進会議の了承を得て、9月26日、蓮舫内閣府特命大臣に手交された。本稿は第34回、第35回の推進会議の概要である。

第34回推進会議

8月8日、第34回推進会議が開催され、1.障害者基本法の改正、2.「障害者総合福祉法(仮称)骨格提言素案」、3.「障害者総合福祉法(仮称)骨格提言素案」合同作業チーム部分(医療・障害児・労働と雇用)についての報告と議論が行われた。

障害者基本法の改正案は7月29日可決成立し、8月5日公布、一部を除き同日に施行されたことが担当室より報告された。改正法に関連して、障害者政策委員会の設置時期についての質問があったが、これに対して担当室は「遅くとも年度末までに、早ければ年内には設置したい」と回答、内閣府より「地方自治体における準備状況を踏まえながら、適切な施行日を検討していきたい」と補足があった。また、「障害者政策委員会が設置されるまで、障害者基本計画についての検討をどこで行うのか?」という質問に対して、担当室は「障害者政策委員会の設置時期との関係で、どこで議論するのが適切か検討したい」と回答した。

総合福祉部会の骨格提言素案については、佐藤部会長、尾上副部会長が素案の概要を説明、今回の推進会議の意見は8月9日の部会議論に反映すると補足した。骨格提言案に対しては、「障害の定義」について議論があった。改正障害者基本法の定義と骨格提言の定義に相違がみられることから、現場での混乱を指摘する意見があり、また、障害者基本法と異なる定義を作る実益を問う意見も出た。

これに対して、部会長より支援の対象への視点の転換がポイント、障害者基本法の定義と異なった個別法の定義もあり得る、という趣旨の説明があった。その他、「選択と決定」、「相談支援」、「支援(サービス)体系」などの個別項目についても質疑応答があり、一部応能負担や予算措置に関する検討などの点について構成員より意見が出た。

合同作業チーム部分(医療・障害児・労働と雇用)については、それぞれの合同作業チームの座長より報告があった。医療については、権利主体は当事者、あらゆる場での医療支援の提供、地域医療の充実などの要点の報告があった。障害児については、早期支援、通所支援、相談支援などの要点説明に加え、施策の対象はすべての子ども、児童福祉法の対象から障害児を外せない、児童福祉法の中で障害児支援を考えていくとの説明があった。労働と雇用に関しては、労働政策と福祉政策の一体的展開、障害の有無による生活実態の調査の必要性、パイロット事業の実施などについて説明があり、障害者雇用促進法、障害者差別禁止法との関係についての質疑があった。

第35回推進会議

9月26日、第35回推進会議が開催され、8月30日にまとめられた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」について、確認のための質疑が行われた。骨格提言は、「はじめに」に続いて、1.障害者総合福祉法の骨格提言、2.障害者総合福祉法の制定と実施への道程、3.関連する他の法律や分野との関係の3部構成で、「おわりに」で締めくくられている。

骨格提言部分については、サービス利用計画、情報保障とコミュニケーション支援、障害の認定と手帳制度、最重度障害者への支援、利用者負担の問題などについて質問が出た。障害認定については医学的な診断よりも、障害に伴う生活上の支障、支援の必要性を重視して提言をまとめたが、手帳制度との関係については議論を深めていないとの説明があった。また、利用者負担については、障害があることを原因として必要とされる支援は「原則無償」とする考えが示された。

実施への道程部分については、「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者実態調査)」と5年に1度実施されている「身体障害児・者実態調査」との関係、データの継続性について質問が出たが、すでに実施準備が進んでいること、また、予算上の制約から身体障害児・者実態調査と「生活のしづらさ調査」とを合わせて実施することは困難との説明があった。財源問題に関しては、推進会議でも消費税をどのように福祉財源に回すか議論すべき、との意見が出た。

関連する他の分野との関係については、合同作業チームの座長代理より、前回会議での報告からの変更点の説明があり、「医療」については、保護者制度の部分に「人権擁護」の文言を入れた旨説明があった。また、「障害児」については幼児医療に限定されないとして、「思春期まで」の文言が追加された旨説明があった。

質疑の最後に、骨格提言全般や今後の議論の進め方について質問があり、総合福祉部会は骨格提言をまとめて終わりではなく、厚労省との話し合いの機会をどのように設けるか、積み残した課題を推進会議で議論するのか、別の場を設けるのか検討が必要、との担当室のコメントがあった。また、分かりやすい改正障害者基本法の作成、第4回締約国会議の報告なども併せて行われた。

次回、10月24日の第36回推進会議では、「障害者基本計画」の策定に向けた議論、震災・防災に関する議論などが予定されている。

(しんたにともよし (社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会常務理事)