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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年1月号

障害者政策委員会に期待すること

障害者政策委員会に期待すること

長位鈴子

障害者基本法の改正では、第2次意見書で示された「中央障害者施策推進協議会及び障がい者制度改革推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成し、障害当事者が過半数を占める新たな審議会組織を内閣府に置くこと。」とした通りにはならなかったが、障害者政策委員会に大いに期待している一人である。

我々障害当事者がこれまで日常的に感じてきたことは、障害者福祉制度が変わるたびに、福祉行政担当者が変わるたびに、これまで何とか生きている障害者が「今年はどうなるのだろう」という不安だ。そして、施設や病院に社会的長期入所・入院させられてきた障害者や現社会の福祉政策、医療福祉のあり方に対しいろいろな疑問がつのることである。

私が思うに1950年代から1980年代は医療モデルで障害者を機能訓練づけにしてきた時代ではないだろうか。毎日のようにリハビリづけの障害当事者は自分に自信を失い、人として半端者扱いされてきたことを思い出してしまう。また、地域社会で生活をしたいという希望はあっても自分から言いだせずに施設入所している仲間がたくさんいることも知っている。

これまで私が関わってきた事例から、これまでの中央障害者施策推進協議会に対する反省と今後の障害者政策委員会に対する大きな期待を少しお伝えできたらと思う。

一つめは、幼少期の差別は学校問題である。市町村教育委員会の就学前診断で判断され、本人が普通校へと希望しても特別支援学校へと決められるように思える。

数年前に、ある少年の両親が私たちのセンターに駆け込んできた。教育委員会から特別支援学校に入学するように押し切られそうだから一緒に教員委員会との話し合いに参加してほしいということだった。話し合いは「これが本当に教育者の言葉だろうか」と疑うほど傷つき、両親の心情を汲み取りフォローするだけが精一杯の私だった。何度も話し合いを重ね、小学校入学式の数日前に普通学級が決定した。学校は障害がある子どもたちの人生を左右するところなのに、なぜ教育委員会の力が大きくなるのだろうか。

二つめは、十数年前のことであるが、特別支援学校高等部卒業後、入所施設から退所したいと本人からの相談を受けた。施設訪問を繰り返しながら自立生活プログラムを行っていた。しかし、親の希望は自分たちの安心のためにそのまま施設入所を続けることのようだった。施設職員も親の意向を尊重していて、私たちの面会を規制するかのように、なかなか本人に会えない状態が続いた。問題はそれだけではなかった。障害基礎年金が入る日に親が面会にやって来て年金を親が持っていってしまうことだ。自分の年金を本人が使えるように、またそれを守る支援がないことで施設側も対応できないのが大きな問題だ。

三つめは、精神障害者や重度の知的障害者の多くが長期の社会的入院をさせられていることだ。措置制度以前は、各地域に精神障害者を隔離するために閉じ込める小屋があった。家族や近隣の迷惑行為を絶つための措置だったが、時代とともにそれが人権侵害だということで精神科病院に多くの精神障害者が入院させられている。

確かに急性期には入院が必要な時期もあると思うが、病状が安定してきたら地域生活ができるように、地域社会のあり方や医療従事者の意識やプロセスを変えていかなければならないのではないかと感じている。

これまで長期間にわたり医療モデルが当たり前で、特別支援学校がベストであるかのように思わされてきた時代に生きてきた我々にとって、医療現場、教育者、福祉ソーシャルワーカー等の意識改革は特に必要ではないだろうか。

四つめは、沖縄県は離島県であるため、重度障害者は本島の特別支援学校を卒業するとそのまま本島の療護施設に入所する人たちが多くいる。この状況では家族との縁が薄くなってしまって、親や兄弟姉妹の冠婚葬祭、兄弟の家族の状況さえ知らない人たちもいる。

また、離島の障害者福祉政策の地域差が大きいことだ。これは国庫補助金配分の違いで出てきているように感じる。この国庫補助金配分は個人の責任ではないはずである。

以上のような事例から、私が障害者の現状を知れば知るほど、障害者でも人として平等の権利があることを求め、個々の人生設計ができるサポートを地域でつくっていく必要を感じている。

障害者政策委員会は、障害当事者が自己主張ができるようなエンパワメントができる委員会であってほしいと思っている。障害当事者が過半数の意見があれば、人権意識や地域モデル・社会モデルが定着していくのではないかと期待する。

最後に、障害者政策委員会が中央主体だけの情報ではなく、地方の障害者の現状も知り、それを政策に反映していける体制を強く望む。まだ多くの障害者が社会的入所・入院をしている現状から、地域移行を進めていくことだ。また、生まれた時から医療的ケアが必要な障害児の親が安心して子育てができ、権利として教育環境が整えられる政策が急務であると考える。

(ながいれいこ 全国自立生活センター協議会代表、NPO法人沖縄県自立生活センターイルカ代表)