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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年1月号

釧路市における当事者参加型の障がい福祉施策の推進について

古川幸男

釧路市は、北海道東部に位置する人口約18万3千人の水産業、パルプ、石炭をはじめ、阿寒国立公園と釧路湿原国立公園を有する自然豊かな産業観光都市です。

また、釧路港が国際バルク戦略港湾(トウモロコシを中心とした穀物バルク港として)の指定を受けたまさに道東地区の拠点都市です。

釧路市の障がいがある方の現状ですが、障害者手帳の所有者は、身体が13,100人、療育が1,800人、精神が1,100人の合計約16,000人で、手帳を所有しないで、自立支援医療などを受けている方を含めると、おおむね19,000人の方が何らかの形で障害福祉サービスを利用していて、これは釧路市民の10人に1人ということになります。

さて、平成18年度の障害者自立支援法の施行後、必要なサービスを安定的に利用でき、自立支援の観点から障がいのある方の地域生活と就労促進が明確化される中で、ますます、障がいのある方の権利意識も高まり、総合福祉法制定に向けたさまざまな議論においても、障がいがある当事者が加わり、生の声が意見として反映されることは大変喜ばしいことです。

本稿では、釧路市の当事者参加型の取り組みについてご紹介します。

釧路市障害者施策推進協議会

まず、「釧路市障害者施策推進協議会」ですが、障害者基本法に基づき、昭和48年度から組織され、障害者全般に係る福祉向上に関する基本的な事項の調査および研究を目的として実施しています。

委員構成は24人のうち、学識経験者、行政機関、福祉団体職員が18人、障がいのある当事者が、内部障がい、肢体障がい、聴覚障がい、視覚障がい、知的障がい、精神障がい各々一人の計6人で、当事者が占める構成割合は25%となっています。

これは、協議会開設当初から、行政に現場(当事者)の率直な意見を反映させたい。一方的な要望、陳情ではなく、真摯な意見交換の場としてこの協議会を活用するというすべての委員が共通認識に立てた結果であり、今後ともこの環境を維持していきたいと考えているところです。

前回の協議会においても、北海道障害者条例の施行に伴い、北海道と市町村の既存の事業における役割分担を明確に行う必要があるとの貴重な意見が当事者委員から出されたところです。

釧路市障害者自立支援協議会

次に「釧路市障害者自立支援協議会」への移行に向けた「権利擁護準備部会」において、その中心的な役割を担っている役員にも障がいがある当事者の方がおられます。その活躍の場は協議会での役割にとどまることなく、釧路市が地域生活支援センターと共同で企画した「権利擁護セミナー2011」の開催にあたり、講師派遣をDPI(障害者インターナショナル)北海道ブロック会議理事花田貴博(ハナダタカヒロ)氏に要請を図ったり、パネルディスカッションやグループ討議などセミナーの企画立案にも参画して、まさに行政、関係団体と障がいがある当事者が一体となったセミナーを開催することができ、参加者の心のケアや地域づくり、街づくりにも大いに貢献したところです。

障がい者権利擁護セミナー

それから、「障害者虐待防止法」の制定に基づき開催した「障がい者の権利擁護について~誰もが安心して暮らせるまちづくり~」においては、内閣府障がい者制度改革推進会議総合福祉部会構成員でもある、毎日新聞論説委員の野沢和弘(ノザワカズヒロ)氏から、過去の取材を通じて見てきた知的障がい者が巻き込まれた悲惨な虐待事件の報告がなされました。判断能力・意志表示能力にハンディのある人の「自己決定権」「自己選択権」という権利をいかにして護っていくかという問題提起がなされました。講演の後段には、このことを受けて障がいのある当事者たちを交えたワークショップを実施し、報告を基に問題点の整理、解決への方策について再度、野沢氏からお話をいただくことができました。

野沢氏からは、釧路市の障がい者福祉施策に対する姿勢は、当事者も含めた官民協働のスタンスであり、期待が持てるとの講評を得たところです。

以上、釧路市の現状について、ご紹介させていただきましたが、改めて申すまでもなく、障がい者福祉施策の推進においては、行政と関係団体が密接に連携を図ることはもとより、障がいがある当事者の方々とのコミュニケーションが必要不可欠であると認識しています。

平成25年度に改定を予定している、釧路市の障害者施策の基本方針である「釧路市障がい者福祉計画~はーとふるプラン」の内容、骨子等においても障がいのある当事者の皆さんからも広くご意見を集約するなど、今後とも、より充実した計画となるよう努めていきたいと考えております。

最後になりますが、釧路市の事業を一つPRさせていただきます。

平成24年2月4日(土)、5日(日)に開催される釧路市最大の冬のイベントである「第48回くしろ氷まつり」に併せて、「釧路市障がい者芸術作品展示会」を開催します。

平成24年1月から放映されていますNHK大河ドラマ「平清盛」の題字を担当するなど、ダウン症の天才書道家として大きな注目を集めている金澤翔子(カナザワショウコ)さんの作品とともに、釧路地域の障がいのある方々による書道など芸術性の高い作品を展示することとしています。

ぜひ、皆さん釧路へお越しください。

(ふるかわゆきお 北海道釧路市福祉部障がい福祉課課長)